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276回目 教えて女神様

「取り敢えず、色々疑問はあるんですが、いくつか聞いてもいいですか?」


『もちろん良いぞ。お主とはこれからも仲良くやっていきたいからの、遠慮する事はない。あの映画を見ただけで、興味のあるものが山と出て来たわ。例えばホレ、アイスクリームとかのぅ』



 そう言いながらチラチラとこっちを見てくるヴァティーに、俺は業務用サイズのアイスを出して渡してやった。



「…………どうぞ」


『ウム! 何でも聞くがよい!!』



 途端に上機嫌になりアイスにスプーンを突き立てるヴァティー。この女神様、かなりチョロイ気がする。


 まあ、疑問はいっぱいあるんだけど、次元がどうとか、方舟の原理がこうとか聞いても理解できる気がしないので、その辺は放置だ。どうしても必要になったら、ドゥルクにでも聞いといて貰おう。



「じゃあまずは…………。方舟には、そもそもどれだけの動物が乗り込んでいたのかを教えて貰えますか? 今の所だと、分かる範囲で六十三体の魔王が封印されている事になってますけど?」


『八百種じゃな』


「多いわ!! 八百!? 八百体も魔王がいるの!?」



 いや嘘だろ!? 聞いていた十倍以上じゃねぇか!? その『郷愁の禍津像』を全部探せってのか!?



『まあ落ち着くがよい。八百と言っても、その内の五百種少々はこの世界に馴染んでおる。既に世界との融合に成功した者もおるでな、魔王となったのは三百までいかぬわ』


「それでも多いが…………。世界との融合ってのは何です?」


『言葉通りよの。既にこの世界の生物の一部と認められた者達の事じゃよ。そう言う者達はすでに方舟からも離れておるので、魔王化の心配もない。問題があるとすれば、妾と同じように魔王化に抗っておる者共よな。そういった者は当然封印もされとらんから、どう動くか解らんぞ?』



 …………そうか。ヴァティーのように、神獣として自我を保ちつつ、魔王化に抗っているのもいるのか。なら、数は更に減るな? …………フゥー、ビックリさせやがって。


 ヴァティーは、そいつらがどう動くか解らないと言うが、現時点で自我を保ってくれているなら、そこまで心配は要らないと思う。


 ちなみにそいつらは、元・神様とかではなく普通に動物なので、ヴァティーのように意思の疎通は出来ないようだ。だが、念のためにも、なんとか居場所くらいは把握しておきたい所だな。



「その、『魔王化に抗う神獣』の居場所って分かりますか?」


『さすがに無理よな。おそらくは皆、ダンジョンに籠っておるであろうしの。表には出て来ぬであろう。そもそも、妾もここに引き籠もっておるしな。わかる訳あるまい?』



 うん、まあそりゃそうだ。しかしそうなると、やはり今の所は放っておくしかないか。よし、次だ次。



「魔王となった神獣が、元に戻る事はありますか?」


『…………ない。肉体が『郷愁の禍津像』となり、精神が解離した時点で、方舟から注がれる膨大なエネルギーを浴びて精神が変質してしまっておるからな。でなければ、自分の肉体が精神を拒んで負け、『眷族化』などする訳がない。魔王となった時点で、そやつは死んだのと変わらぬであろうな…………』



 そう語るヴァティーは、苦し気に自らの本体の足先を見た。蛇の下半身の先は、すでに『郷愁の禍津像』になりかけている。ヴァティーの心には、その変質に対する恐怖があるに違いない。



「そうだ。その『本体の眷族化』ですけど、『郷愁の禍津像』は眷族化すると一度消えて、別の場所に再構築されるらしいんですよ。それって何故なのか解りますか?」


『そりゃ方舟の機能である『復活』であろうな。『眷族化』の時点で本体の『核』は形を失うが、方舟がそれを察知して再生機能が発動するのだろう。ただし、方舟にはその本体となる『郷愁の禍津像』を呼び寄せる機能が既に無く、再生された本体はダンジョンに引っ張られるのであろう』


「…………よく解りませんね。なんでダンジョンに?」


「僕もまだ解明できてませんけど、方舟が地上のダンジョンを中継地点として利用している節があるんですよね。『郷愁の禍津像』が最初に方舟からダンジョンに引っ張られていますからね。そこで方舟はダンジョンとの何らかの繋がりを持ったのでは、と予測しています」



 …………あ、これあまり考えない方がいいやつだ。アルジャーノンですらまだ解ってない事を、俺が理解できる筈もない。そういう物だ、程度に思っておこう。



「…………えっと、小難しい話は置いといて。俺のやる事は変わらないかな? 『郷愁の禍津像』を破壊すれば魔王を倒せる、ってのは間違いないですもんね。禍津像を全部破壊すれば解決。で、あってますよね?」



 世界を救う為には、魔王を一掃する事。そこに変わりは無い。…………筈だったんだけどな。


 なにやらヴァティーとアルジャーノンの様子がおかしい。眉根を寄せて、少し険しい顔になったのだ。



『…………その事だがの。眷族を通して、お主にした質問を今一度聞くぞ? お主に、この世界を救う気はあるかの? 例えそれが、どれほど困難な道でも』



 …………まさか、またその質問が来るとは思ってなかったので身構えたが、やはりどう考えても俺の答えは変わらない。その質問を聞いて、仲間達の顔が次々に頭に浮かんだのだから、俺の中の答えは決まりきっている。



「ある! 俺が生き残るためにも、仲間達のためにも、俺は自分のできる事はやるつもりだ!」


『…………ならば話してやろう。この、『すでに詰んでいる』世界の現状を』



 ……………………『すでに詰んでいる』ってのは、言い過ぎだよな?

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