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271回目 ハイブリッド

 キャッキャッウフフしているヴァティーとアルジャーノンの甘々空間に入れない俺とバルタは、テーブルに積んだ漫画を読みながら海苔のついた煎餅をかじり、緑茶で流し込んでいた。


 漫画も煎餅とお茶に合う、ハードボイルドなヤツを選んだ。今日のお供は、後ろに立つと撃ち殺される系スナイパーのやつです。



「殺し屋の話ってのはアレでやすけど、この技術と精神性は見習うべき所もありやすね」


「ストイックな男だからな。性欲は強いけど」


「これ、武器ですよね? ふーん、『ライフル』ですか。興味深いですね」



 バルタと同じ漫画の別の巻を読みながら煎餅をかじっていると、いつの間にかアルジャーノンも混じっていた。アルジャーノンの手にあるのも、俺達が読んでいるのと同じ漫画である。



「いつの間に…………。アルジャーノン、女神様を放っといていいのか?」


「ええ。あの状態から動かなくなっちゃいまして」



 アルジャーノンの言葉にヴァティーの方を見ると、ヴァティーはテレビの正面に陣取って映画を見ていた。数日前にバルタ達が盛り上がっていた、隕石が落ちてくる系のパニック映画である。よく見つけたな。


 どうやらヴァティーはあの映画を、眷属である蛇の眼を通して見ていたらしく、ずっとちゃんと見たいと思っていたようだ。


 なるほど、あれじゃ映画が終わるまでは動かないな。それでアルジャーノンはこっちに来たのか。



「それよりこの武器ですよ、この『ライフル』ってガモンくんのガチャから出て来るんですか?」


「ああ、まぁ。それは総じて『銃』って武器なんだよ。確かに強いし、ガチャからも出てはいるんだけどな…………」



 実際、銃の類いはかなりレアだが出てはいる。☆3『リボルバー』や☆3『猟銃』、☆4『マシンガン』に☆4『スナイパーライフル』まで出てはいるのだ。


 もちろん俺も撃った事はあるし、アレス達やアルグレゴ小隊の面々にも試して貰った。その結果、使いづらいと言う認識で一致してしまったのだ。


 これには俺もビックリはしたが、同時に自分でもそう思っていたので、納得もしている。護身用に携帯するには良いのだが、モンスターとの戦闘には使えない。それが『銃』なのだ。



「へぇ。この漫画を読むと、凄く有用そうなのに意外!」


「ソイツは達人だからな。実際に使ってみると、まず鎧が邪魔になるし、簡単に当たらない。接近戦に向かないし、何より弾丸がガチャからしか出ないってのが、ものすごいネックになってるんだよな」


「『銃の弾丸』なんて、売ってないでやすからね。全部をガチャの弾丸シリーズで賄うとなると、金が掛かり過ぎやすぜ。ガチャの場合、欲しい物が一発で出る事もないでやすしね」


「銃をちゃんと扱うなら訓練が欠かせないけど、弓矢と違って練習用の弾とか無いからな。ガチャの銃だと、魔力の弾を飛ばすみたいなヤツも無いんだよ、今の所だけど」



 モンスター相手に試し撃ちもしてみたが、銃は本当に難しい。弓矢ならほぼ相手に刺さるが、銃弾は貫通する事も多い。


 例えば属性弾を使うと、敵に当たって止まった瞬間に属性魔法が発動するのだが、弓矢なら刺さるから問題ないけど、銃弾は貫通して壁に当たって発動する、とか意味の無い事になるのだ。


 ゆえに属性弾を使うならショットガンが一番良かったのだが、ショットガンはリロードの手間が多いのが難点だ。装填できる弾数が、俺の使ったショットガンだと二発までだったからな。



「最悪だったのはダンジョンで使ってみた時だと聞いてる。アルグレゴ小隊が試してくれたんだけど、跳弾で危うく死人が出る所だったそうだ」


「ダンジョンだと音も問題でやすね。あんなデカイ音を響かせたら、モンスターが集まって来やすぜ」



 強いはずなのに使ってみたら問題だらけ、それが銃だ。正直、銃を属性弾で使うなら、属性を持った剣を使う方がコスパも良いしデメリットが少ない。銃と魔法の相性の悪さも目立つからな。



「まあ、この漫画の主人公みたいな達人が使えば違うんだろうけどな。そうなるには死ぬほど練習しないといけない。弾丸シリーズの消費量を考えるとキツイよな。銃だけに使う物じゃないし」


「ふーーん。ねぇ、その弾丸って今あります? 銃に使うやつ。それと、それを使う銃も」


「ん? ああ、あるぞ」



 アルジャーノンに言われて、俺はスキル倉庫から銃の弾丸にした☆3『氷属性の弾丸』と、それを撃つ為に使った『リボルバー』を取り出してテーブルに置いた。


 アルジャーノンは『氷属性の弾丸』の箱の中から、先端が氷の様になっている銃弾を一発取り出して眺め、その次に銃を弄り始めた。



「『解析』。…………なるほど。爆発によって生じる圧力で弾を飛ばす仕組みなんですね。…………けっこう単純だな。これなら…………」



 銃弾を眺めて何やら呟いたアルジャーノンは、『インフィニティ・ルーム』を開いて色々な薬品や道具を取り出すと工作を始め、あっという間に『銃弾のような物』を作りあげた。



「…………材料は違うけど、仕組みとしては問題ないはず。ちょっと試し撃ちしますね!」


「お、おう」



 トテトテとテーブルから離れた所に丸太を置き、戻って来たアルジャーノンがリボルバーに自作の弾を込める。


 そして丸太に向けて撃たれた銃弾は、…………丸太の横を素通りして向こうの壁に当たった。いや外すのかよ。



「あ、あはは…………。ま、まあ当たりはしませんでしたけど、使えそうですね」


「お、おう」



 …………マジかコイツ。さすがはエルフとドワーフのハイブリッドだな。見ただけで銃弾を再現しやがったぞ。しかも別の素材で。


 丸太に当てられなかったのが恥ずかしかったのか、頭をかきながら照れるアルジャーノンに、俺とバルタは頬を引きつらせて戦慄していた。

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