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266回目 邪眼族の女神

 邪眼族の騎士『大蛇八首』の筆頭であるケトに案内されて、俺達は自然溢れる田舎の道を歩いていた。


 綺麗な紅葉をみせる紅葉と銀杏が並ぶ並木道を進みながら、ケトから『この銀杏の木から取れる『ギンナン』は旨いぞ。ワシはただ炒った物が好きだな』と説明され。


 頭を垂れる黄金の稲穂を前にすれば、『ここで取れる米は旨いぞ。元は酒の為に育て始めたのだが、普通に食っても旨い。先程のギンナンを混ぜたギンナン御飯も良いが、山では栗が取れるからな。栗御飯が最もオススメだ』と説明を受けた。


 そして畑までくれば、『育てている大豆から味噌や醤油も作っておってな。この茄子やキュウリなどを味噌漬けにした物も御飯に合う。麦も育てているので麦茶もあるから、味噌漬けと麦茶で作る茶漬けは何杯でも食べられるな』との説明を…………って、全部食い物の話じゃねーか! まぁ旨そうだけども!!



「…………おいバルタ、大丈夫か?」


「ええ、大丈夫ですぜ。いつも通りでさぁ…………」



 そう言いながらも、バルタの目は何かを探すように動いていた。…………最下層に着いてから、バルタはずっとこの調子だ。常にソワソワしている。


 まぁそりゃそうだ。長年の悲願を叶える時が、もうすぐそこまで来ているのだから。バルタもこの場所の景色を見ているし、美しい景色だと口では言っているが、本心からそう言ってるかは疑問だ。たぶん、後で思い出したりは出来ない程に、表面しか見てないだろう。



『さあ着いたぞ。我が主はこの中でお待ちだ。失礼のないようにな』


「あ、ああ。…………バルタ、いきなり襲い掛かったりするなよ?」


「…………しやせんぜ」



 そう言うわりに、バルタの眼は座っているのだが、ここはバルタの理性を信じよう。この形で招かれたんだ、今更ダンジョンのボス戦も無いだろう。


 藁葺き屋根の平屋の引き戸をケトが開け、中に入る。


 するとそこには、外見とは全く別の、洋風の屋敷の光景が広がっていた。外見と中身のギャップで頭がおかしくなりそうだ。


 見た目的に完全に平屋だったのに、中には階段とかあるし、そもそも吹き抜けでそれより上の階があるのも見えるし、なにコレ? 違うにも程があるだろ!



「何で中はこんなん何だよ!? 外と全然違うじゃん!?」


『我が主は、外の景色はあれが良いが、暮らすとなるとこちらの方が暮らしやすいと言ってな。こうなった』


「いやまぁ、そりゃそうかも知れんけど!」



 と、俺がケトに食らいついていると、一人の邪眼族がこちらに歩いて来た。執事服を着た邪眼族で、その蛇頭には、真っ白な眉と長い顎髭がついていた。


 その執事服の邪眼族は、俺達の前に来ると恭しく頭を下げた。



『ようこそ『影纏い』バルタ様と『勇者』ガモン様。我らが主『ヴァティー』様が奥でお待ちしております。私について来てください』


『うむ。ガモン、バルタ。ワシの役目はここまでだ。あとはこの者に案内して貰うがよい』



 てな訳で、俺達の案内役が邪眼族の執事に変わった。そして屋敷の中をしばらく歩き、俺達はついに、この最難関ダンジョン『邪眼族の螺旋迷宮』のダンジョン・マスターである『女神ヴァティー』と対面した。


 そう、女神だ。あの邪眼族達が持っていたレリーフメダルの女神は実在しており、しかもその女神と実際に対面する事になったのだ。



『よく来たな人間よ。さぁ、もっと近くまで来るが良い』


「「……………………!!」」



 圧倒された。


 女神『ヴァティー』は、レリーフメダルに彫られた姿とは違い、大きさこそ人間のものではないが、その姿は人間の女性のものだった。


 頭は蛇ではなく、胸も女性らしく膨らんでいる。ただその下半身だけは、レリーフメダルの通りに蛇のものであるようだ。


 白くて長い髪をなびかせ、その姿は美しい。だが圧倒されたのは、その美しさではない。理由は、女神が放つ圧倒的な存在感だ。


 その女神の存在感は、今までに会って来た何者よりも圧倒的であり、しかもそれは抑えに抑えて、それでもなお漏れ出ているものに過ぎないと解る。


 戦ったら絶対に勝てない。これは確信だ。たぶん、あの女神に斬り掛かった瞬間に俺という存在ごと消滅する。それ程に次元が違うのが解る。『神』という存在は、触れてはならぬ者ではなくて、触れる事など出来ぬ者なのだと、その存在感が示していた。



『どうした、取って食いやせぬぞ。もっと近くに来い。妾は、この通り動けぬでな』



 女神は部屋の奥に作られた祭壇に座っており、その下半身には豪奢な布が掛けられていたのだが、その布を女神自らが取った。



「…………!?」



 それがどういう事なのかは解らないが、女神の蛇のものである下半身は、その中程から、人間で例えるならば、膝から下が紫色の石の物に変わっていた。



『解ったであろう? 妾は動けぬのだ。さぁ、もっと近くまで来るが良い』



 動けない女神にそう促されて、俺達はゆっくりと、邪眼族の女神『ヴァティー』の元へと近づいていった。

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