257回目 『邪眼族の螺旋迷宮』
最難関ダンジョン『邪眼族の螺旋迷宮』。バルタが攻略を人生の悲願としているダンジョンであり、バルタか望む『全ての呪いを解呪する秘宝』があるとされるダンジョンだ。
ここに入る為の準備はすでに万端だ。装備も整えたし、パーティーも組んでスキルも割り振った。
ただ、パーティーを組む際に何か変わるかも知れないと、『クラン』の方の機能を使ってのパーティー編成にしたら、☆4『隠れ蓑コテージ』と言うアイテムが手に入った。
☆4『隠れ蓑コテージ』
・自然の中に隠れて発見され難いコテージ。二階建てで生活に必要な物は大体そろっている。
・地面の状態が悪くても設置できるが、自然影響は受けるため、火山や沈む沼地に設置するのはオススメしない。
うん。テントよりは遥かに使いやすそうだ。これが何かと言うと、『ストーリークエスト』のクリア報酬である。
マヌケな話なのだが、色々積み重なり過ぎて、俺はクリア出来るストーリークエストを一つ、クリアし損ねていた。
クリア出来てなかったのは『クランメンバーのパーティーを三つ作る』と言うクエストで、クラン作成の機能から、バルタをリーダーとしてパーティーを作ったら、アレスパーティー・ザッパパーティー・バルタパーティーの三つでクリア扱いになったのだ。
…………やろうと思えばすぐにクリア出来る『ストーリークエスト』を逃していたとかマヌケ過ぎる。
そして、それが終わって新たに出て来たストーリークエストが『『フレンドクエスト』をひとつクリアする』だったので、タイムリーと言えばタイムリーだった。
ちなみにそのクリア報酬は☆4『絆の証』というアイテムのようだ。…………どんなアイテムなのかは
まぁとにかく、今はダンジョン優先だ。ちょっと出鼻をくじかれた感はあるが、気を取り直していこう。
「いいですかい、旦那。ここから先は迂闊に声を出しちゃいけやせんぜ。話すのは『邪眼族』を無力化してからですぜ?」
「解ってる。どうしてもって時は『フレンド・チャット』を使うよ」
「まあ、それじゃ遅い事もあるんで、簡単なハンドサインは決めときましょうかね。基本はあっしが出しますんで、見逃さねぇようにお願いしますぜ」
「了解」
俺とバルタは、簡単なハンドサインを決めて、ダンジョンへと潜る事にした。当然、先頭はバルタだ。
「…………!?」
ダンジョンに一歩足を踏み入れた瞬間、俺の全身はゾワッとした悪寒に襲われた。何と言うか、何か得体の知れない物に丸呑みにされたような、そんな嫌な気配だった。
◇バルタ
《ゾワッと来やしたか?》
バルタが俺の方を見てニヤリと笑いながら、フレンド・チャットを送って来た。
◇ガモン
《ああ、来た。なんだ今の?》
◇バルタ
《ここに来ると必ずなる、悪寒のような物でさぁ。ここが呪いに特化した洞窟だってのが、関係してるんじゃねぇかと思っていやす。まぁ、体が嫌がってんでしょうかね》
…………つまり、あまりに強い呪いの気配に、体が拒否反応を示したって事か? そんなの人が入っていい場所じゃないだろ。まぁ、行くんだけどさ。
中に入ると、そこは見た目より更に不気味だった。ダンジョン内はどこから光が来ているのかは分からないが、ボンヤリと明るく。地面は多少ゴツゴツしているが滑らかな石床で、同じ様に石で出来ている壁にはピンポン球サイズの穴が無数に空いていた。
この穴から『邪鼠』とか言うのが無数に出て来るのかと思うと嫌すぎる。しかも何か、壁も床も若干濡れてるよね?
それに、なんだか生暖かい風が定期的に吹いているし、前情報からそうだったけど、俺の中でこのダンジョンに対する嫌悪感がスゴい。バルタのフレンドクエストでなければ来てなかったかも知れない。
「…………!」
俺がそんな事を考えながら歩いていると、バルタが左手を上げた。止まれの合図だ。
バルタはゆっくりと歩いて、曲がり角の手前で俺を呼んだ。
バルタの様子に、俺も息を潜めながらバルタの所まで歩き、慎重に曲がり角の先を覗いた。
『…………シュルルルル』
「…………(おぉぅ)」
曲がり角から覗いた先に、初めて見る生き物が立っていた。
体躯は人の様だが、その全身は鱗に覆われてヌルッと光っており、簡素な鎧を着て槍を持っているその姿は、まるで近衛兵のようだった。
頭に兜は無い。だからこそ、その頭がヘビ頭である事は疑いようもない。
全身を覆う鱗は紫色。眼は縦長で金色。シュルシュルと音を鳴らし、長い舌がチロチロと外に出る様は正しくヘビだ。あれが邪眼族か。
◇ガモン
《これ、気づかれたりしないのか?》
◇バルタ
《この距離なら大丈夫でさぁ。まあ、見てて下せぇ》
俺のチャットにそう返して、バルタは『スリングショット』を構えた。間違っても殺す訳にはいかないので、使うのは『衝撃の弾丸(+2)』だ。
そして、曲がり角の向こうにいる邪眼族が向こうを向いた瞬間、バルタのスリングショットから打ち出された弾は正確に邪眼族の後頭部に当たり、邪眼族はまるで糸が切れた操り人形の様に、膝から地面に崩れ落ちた。
バルタの正確な一撃は、邪眼族の意識をしっかりと刈り取ったようだ。
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