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255回目 人の多い冒険者ギルド

 運河の街『アマノフナバシ』に来ている俺とバルタは、この街を流れている大きな運河に架かる跳ね橋、『キョウヤ橋』を渡り、街の北東部にあるカフェで軽食を取りつつマッタリしていた。


 何でこんな時間を潰すような真似をしているのかと言えば理由はひとつ。跳ね橋が上がる瞬間を見る為だ。


 この跳ね橋は一日に五回程開くらしく、大きな帆船などは跳ね橋が上がっている時にしか通れないので、今のように跳ね橋が上がる時間が近づくと、橋を隔てた運河の両側に通行待ちの大型帆船が集まって来るので、結構見応えがある。


 そして橋の両側から鐘の音が鳴り響き、橋を渡っていた人々が足早に橋を渡りきると、ついに、跳ね橋が上がり始めた。



「「おおーーーーっ!!」」



 俺の歓声が、周囲の人々のそれとシンクロする。金属の軋む音を響かせながら、支柱に繋がれた鎖に引っ張られてゆっくりと上がっていく跳ね橋は圧巻だ。


 跳ね橋が上がりきると、跳ね橋の操作盤の側にいる人が船に向かって旗で合図を送り、船からも旗を使った返信が上がると、船は順序よく進んでいく。


 そして船がすれ違っていき最後の船が通り過ぎると、再び橋の両側から鐘の音が響き、今度はゆっくりと橋が下りていった。



「おおーー。凄いな跳ね橋。いや、跳ね橋ってのがあるのは知っていたし、テレビでも見た事はあるんだけど実際に見るのは初めてだったんだよな」


「そうだったんですかい。案外、コッチで珍しい物ってのは旦那のいた世界でも珍しいのかも知れやせんね」



 確かにバルタの言う通りかも知れないな。まあ、俺の経験が足りないだけかもだけど。


 跳ね橋を堪能した俺達は、その後は当初の予定通り冒険者ギルドへと向かった。


 この街の冒険者ギルドは中々に盛況だ。とにかく冒険者が多い。


 それもその筈で、この街の冒険者ギルドには、各国から商人と共にその護衛として多くの冒険者がやって来るのだ。


 彼らは自国の商人を護衛してこの街に来ている訳だが、基本的には復路の護衛も請け負っている。なので商人がこの街で商売を終えるまでは待ちの時間になるのだが、その待ち時間は数日に及ぶ。


 ならば、せっかくだから軽い依頼をこなして小遣い稼ぎをしようかと、ギルドに集まっているのだ。



「この街の周辺には採取が主になるダンジョンがありやしてね、大体の冒険者はそこで小遣いを稼ぐんでさぁ。もうちょい金がほしいヤツは河に住むモンスター狩りでやすね。この上流に生息する、デカイ牛型のモンスターがターゲットでやすね」


「へぇ。俺ならのんびり過ごしたいけどな」


「金があるなら誰だってそうでしょうぜ。でも運河の護衛依頼は、そう実入りのいい仕事でもねぇですからね。この街で楽しむ為にも、金がいるんでさぁ」


「…………そりゃそうだ」



 人が多い冒険者ギルドだけあって、受付の窓口も他の冒険者ギルドに比べて多い。俺達はその中で最も並びの人数が少ない列に並び、自分達の番を待った。


 バルタから説明があった通り、ここに並ぶ冒険者の目当ては、素材採取系のダンジョンか牛型モンスターの討伐依頼らしく、列はサクサクと消化されていった。


 ちなみに、この採取系ダンジョンに『郷愁の禍津像』が無いのはすでに確認してある。


 …………実は、ダンジョンには無いがこの街には二つ反応があったりする。


 この街は商人が集まっているから、その内の誰かが持っているのだろうが、流石に盗み出す訳にもいかないし、そもそも誰が持っているのか解らないから、交渉も出来ない。『郷愁の禍津像』を見つけるにあたって障害になるのは、やはりこういう売られた禍津像だな。


 せめて誰が持っているのか突き止めたいが、そういう依頼を出すのは止めておいた方がいいと、バルタに止められた。


 彼らは商人だ。それに自分の知らない価値があって、探している人間がいると分かれば簡単には手放さなくなる。この街で商売に勤しんでいる間は、特にそうだろう。…………取り敢えず今は、『禍津像探知機』を細かくチェックするに留める事にした。気は焦るけどな。



「『アマノフナバシ』の冒険者ギルドにようこそ。どの様な…………って! バルタさんじゃないですか。カラーズカ侯爵様から何かありましたか? あいにくギルドマスターは来客中なのですが…………」



 受付に座る若い男の職員は、バルタと顔見知りらしい。まあ、バルタはカラーズカ侯爵に仕えていた訳だから、当然と言えばそうなのだが。



「いやぁ、あっしはもうカラーズカ侯爵の所は離れたんで、今日は例のダンジョンの手続きに来たんでさぁ」


「例の…………。そうですか、バルタさんがあのダンジョンに挑むのは久し振りになりますね。そちらの方は、同行者の方ですか?」


「いやまぁ、あっしもクランってヤツに入りやしてね。こちらはそのクランのリーダーでさぁ」


「あ、どうも。クラン『G・マイスター』のリーダーをやっていますガモン=センバです」


「クラン!? 『影纏い』のバルタさんがクランに入ったんですか!?」



 受付の青年は驚きのあまり立ち上がり、大きな声を上げた。


 その大きな声により、当然ながら周囲からは注目される。周囲の冒険者から集まるその目と、同僚から向けられた冷ややかな目に晒されて、受付の青年は咳払いをし、ばつが悪そうに座り直した。



「…………申し訳ありません。取り乱しました」


「いや、別にいいですぜ。それよりも手続きを頼みまさぁ」



 その後、ギルドでの手続きはアッサリと終わり、『邪眼族の螺旋迷宮』に関する注意を少しだけ受けて、俺達は冒険者ギルドを後にした。

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モチベーションが上がれば、続ける力になります! よろしくお願いします。

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