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254回目 跳ね橋のある運河の街

ここ数日で、多くの誤字報告を頂きました。本当にありがとうございます。助かります。


そのあまりの多さに白目をむきながら、こんなにあったのかと戦慄し、反省しました。申し訳ありませんでした。


出来るだけになりますが、誤字脱字の無いように気をつけますので、これからもよろしくお願い致します。

 カラーズカ侯爵領の東に、テルゲン王国の北と東にある国からの物資を受け取っている街がある。


 その街には、北と東から河が流れ込んでおり、それはさらに南東へと流れていく。要は運河による物流に特化した街なのだ。


 領都でもないのに人が多く、とても栄えているその街の名前は『アマノフナバシ』。その見所は大きな運河と、街の中心部にある大きな跳ね橋である。



「え、跳ね橋? 跳ね橋って、こう橋が真ん中から割れて跳ね上がるやつ? 跳ね橋があんの?」


「ええ、ありやすぜ。あっしらが行く冒険者ギルドは街の北東にありやすんで、その跳ね橋を渡る必要がありまさぁ。結構スゲェもんなんで、楽しみにしておくといいですぜ」



 俺達がこの街に立ち寄ったのは、『邪眼族の螺旋迷宮』に入る手続きをする為だ。俺達が目指すダンジョンは世界屈指の最難関ダンジョンのひとつなので、入るのに手続きがいる。


 冒険者と言うのは、基本的には生きるも死ぬも自己責任だ。しかし、死んでいるのが解るなら良いがそれが解らない場所、例えばギルド職員と言えど簡単には入っていけない最難関ダンジョンで誰にも知られずに死なれると、行方不明と言う扱いになる。これが一番困るらしい。


 なので死ぬ危険性の高い最難関ダンジョンには、手続きがいるのだ。手続きがあるだけで、止められもしないし、助けにも来ないけどな。


 と言う訳で、街の南西部から入った俺達は、まず街の中心にある跳ね橋へと向かう事になった。


 この街は物流の中継地点として栄えているため、道路は広いが馬車の往来か多い。そのため俺達も、混乱を避ける意味もあって、街から離れた場所で『ランブルクルーザー』を降りて徒歩である。


 いや違うな。この街はなんと言うか、見ていてワクワクする街だから歩くのは楽しい。馬車の往来だの混乱だのを抜きにしても、徒歩で行くのが一番良さそうだ。



「すごい活気だな。店も屋台も多い」


「ここには常に四つの国の商人が集まっていやすからね。新しい商品なんかもよく並びやすぜ」



 バルタの説明を聞きながら、三階建ての建物が両側に立ち並ぶ、石畳の街を歩いていると、その一角に人が集まる屋台があった。なにやら大勢の人々が、そこで売っている物を競って買っているようだ。



「おっ、なんか人が集まっている所があるぞ?」


「たぶん何かの新商品のお披露目ですぜ。あの騒ぎだと、よっぽど革新的な商品が出て来たんでしょうぜ」


「へぇー。ちょっと見ていこうか」


「いいですぜ」



 俺達は人が集まる屋台を覗きに行って、何を売っているのかを見た瞬間、スゴスゴと元の道に戻った。



「……………………ガチャアイテムじゃねぇか」


「…………まぁ、画期的って言えばそうでやすからね。こういう事もありまさぁ」



 屋台で売っていた物は、☆3『トラベル圧縮袋』だった。生活ガチャの中では結構出てきたヤツだ。間違いなく、売っている青年はゲンゴウの所の社員だろう。


 まぁ画期的ですよ。俺も旅行に行く時には必ず持っていた必須アイテムだ。これがあると荷物の整理が凄く楽になるんだよな。


 売っている人の説明も上手かったのか、圧縮袋は飛ぶように売れていた。


 ちなみにお値段は強気の大金貨一枚。大容量の物が三点セットで、繰り返し使えるとは言え大金貨一枚は百万円だ。いくら何でも高すぎると思ったが、それでもなお売れている。


 新しくて画期的な物は、多少値が張っても買いにいくのが商人。おそらく彼らは、使っている様子を見て再現が可能だと気づいたのだろう。


 たとえその物のコピーでなくとも、こういった技術は何かに利用できる可能性があるからな。彼らの手で、日本にも無い新商品が出て来たら面白いよね。



「見えて来やしたぜ」


「おおーーっ! デカイなぁ! 上がってはいないけど、確かにこれは跳ね橋だな!!」



 運河の街『アマノフナバシ』の誇る跳ね橋。大きくて広い橋が運河に架かっており、跳ね上がる部分の手前には、大きな門のような物が構えられ、その門の上に橋を跳ね上げるための装置が乗っている。


 装置の手前側には重りがあり、それを下げる事で反対側に太い鎖で繋がれた橋が持ち上がる仕組みだろう。


 跳ね橋の構造的には原始的な物だが、その材質は金属と石で出来ている。この形なら普通は木製じゃないのか? と思うが、ここは異世界だ。木製よりもこちらの方が利点があったのだろう。



「これはこの街の名前、『アマノフナバシ』からも解るでしょうが、勇者が指揮をとって造られた跳ね橋でさぁ。跳ね橋自体は元からあったんですが、材質が木材でしてね、当時は今よりも材木が取れなかったんで、壊れても直すに直せなくて苦労していたんでさぁ。そこで当時の勇者が、かつてこの辺を治めていた王に命じられて、この橋の建設の指揮を取る事になったんでさぁ」


「それでコレが出来たのか」


「大変だったらしいですぜ? 材質も木製だと気軽に直せねぇってんで、水に強く劣化しにくい魔法金属をイチから開発したって話でさぁ」


「マジかよスゲェ」



 その勇者は、かなりの年月をかけてこの橋を造り上げたものの、その後すぐに病に掛かり死んでしまったらしい。


 なのでその勇者の功績と言えば、この跳ね橋だけになってしまうようだが、それでもこの橋を利用する人やこの橋の維持をする人々にとっては、救世主に他ならなかった。


 跳ね橋を造り上げた勇者の名前は『キョウヤ=フナバシ』。そこから取ってこの跳ね橋の名前は『キョウヤ橋』と言い。街の名前は、その勇者が運河に橋を掛ける際によく言っていた『天の川』と勇者の名前を組み合わせて『アマノフナバシ』となったらしい。


 なるほどな。『勇者』の功績も色々だ。

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