24回目 熟練度MAXの恩恵
バルタが森に入ってしばらくたった頃。バルタに熟練度の進捗を教える為に出しっぱにしていた『ガチャ・マイスター』に変化が起きた。
正確に言うならば、変化が起きていた事にいま気づいた。何せ俺もティムも読書中で、俺はスキル画面は出していても、それを見てはいなかったからだ。
それもこれも、ガチャから☆3のアイテムとして出てきた『漫画本』が悪い。ひのきの棒を集めてガチャを引きまくっていた時に出て来たのだ。
内容は推理物の少年漫画が二冊と、アイドルを目指す系の少女漫画が一冊。しかも日本語表記なのに、なぜかティムでも読める仕様になっていたのだから、これはもう読むしかないのだ。
それにしても漫画本まで出して来るとは、やってくれるじゃないか『ガチャ・マイスター』。これ、全巻揃えるのに幾ら掛かるんだ? ガチャ一回あたりの額にしても一冊十万だぞ? 勘弁してくれよ。
おっと話が逸れた。ガチャの画面に起きた変化だったな。
ガチャ画面に起きた変化、それは唐突に現れた新たなアイコンだ。輝く宝玉のような物と、何やら砦のようなアイコンなのだが、それらが何を現したアイコンなのかはサッパリ分からない。これは開いてみるしかないだろう。
まずは宝玉アイコンからとタップして、現れた画面とその説明を読んで、…………俺は固まった。
「…………はい?」
「ん? ガモン、どうかしたのか?」
「いや、あまりにも予想外なのが出て来てな…………」
画面に表示されているのは、『所持スキル一覧』の文字と、その下の広いスペースの左上にある『気絶』という表記。
そしてその『気絶』をタップして出て来た説明文は『意識外からの一撃により相手の意識を刈り取る。もしくは死角からの一撃により、6割の確率で気絶させる』とあった。それは、俺達が予想していた『ひのきの棒』の完全版のスキルだ。
これはバルタが持って行った、ひのきの棒の熟練度が溜まりきったと言う事だろうか? それによって、この新たな機能が解放されたと考えるのが妥当だと思う。
え? つまり装備品の熟練度を完全に育てきれば、俺はそれを装備する事なくスキルを行使できるって事か? 強すぎないか、それ。
と思ったが、スキルを使い放題とはいかないらしい。今はまだスキルが一つしか無いから関係ないが、スキルのセットには制限があるようだ。
セット上限は四つ。しかし、ガチャ装備のスキルはチートな物もあるから、四つもセット出来るなら結構な強さになると思う。
いや、ちょっと待てよ? これって、装備している物のスキルとは別口だよな? うっっっわ! マジか、だとするとスキル次第ではとんでも無い事になるな! 最強の男も夢じゃない!?
「ククククク……………………!」
「こ、今度は急に笑って。ど、どうしたんだ、ガモン…………?」
「ああ、ちょっと夢が広がってな? まあ、後で教えるよ」
いけない、いけない。ついつい黒い笑いが出てしまった。ティムがドン引きした眼で見てくるし、気をつけないとな。
俺は顔を戻すために軽く頬をもむと、気を取り直してもう一つ増えていた、砦のようなアイコンをタップした。
するとそこに出て来たのは『クラン作成』と言うタイトルと、それに伴う説明文だ。クランは分かる。ゲームなんかで俺も所属した事がある。もっとも、所属しているだけで真面目に取り組んではいなかったが。
しかしクランか。パーティーではなくクラン。多くの仲間が必要って事か? 何に? そりゃ当然『ストーリークエスト』だろう。このスキルを俺に与えた存在がいるとして、俺にやらせたい何かには多くの仲間が必要らしい。
まあもっとも、アイコンはあってもまだクランは作れない。だって条件に。
・クランハウスを登録する。
・クランメンバーを十名以上集める。
・白金板五枚以上の運営資金を集める。
と、あった。クランハウスは賃貸物件でもいいだろうけど、クランメンバー十名と白金板五枚が問題だな。信用出来る人間を探すのも時間が掛かるだろうが、白金板五枚って日本円にして五億だぞ。
装備以外のガチャアイテム、例えば生活ガチャで出た日用品なんかは売れるみたいだから、それらで稼ぐ事は出来るだろうが。…………なんか、すぐに利用されたり捕らえられたりする未来が目に浮かぶなぁ…………。
「…………保留、まぁ保留だよな。今すぐどうこう出来る事でもないし」
「何か独り言が多いけど、大丈夫か?」
「大丈夫だ。ちょっとスキルに新しい機能が増えてな。それを確認していただけだから」
「へぇ、聞かせてくれるか?」
興味を示したティムに、新しい機能について説明をしようとした矢先、バルタからチャットが入った。
俺はティムへの説明を後回しにして、バルタに熟練度が溜まりきった事を伝え、戻って来る様に言った。
新しい機能について説明をするなら、バルタも戻って来てからの方がいいからな。
そしてバルタが戻って来てから、二人に俺のスキルに増えた新しい機能について説明をすると、二人は疲れたように頭に手を置いた。
「…………ガモン、君のスキルは機密扱いにしておいた方がいいぞ? 本気でその身柄を狙われかねないからな」
「ええ、とんでもねぇですね。…………ところで旦那、そのスキルの付け替えってのは、あっしらには出来ねぇんですか? この装備が使えるようになったみてぇに」
「ああ、フレンドに直接付けるのは無理みたいだ。でも、クランを結成すれば、クランメンバーには付けれるみたいだな」
「そりゃまた…………」
クランを作る条件は大変ではあるが無理ではない。俺はいつか作る事になるであろうクランと言う物に、少し思いを馳せた。
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