218回目 タミナルに帰ろう
王都でやることも無くなり、ターミナルス辺境伯であるノルドや、タミナルのギルドマスターであるモンテナの仕事も片付いたので、タミナルの街に帰る事となった。
褒美として屋敷を貰う話もあるのだが、見に行ったら取り壊している最中だったのだ。新築で建てるらしい。
俺は中古の空き物件のつもりだったのだが、ジョゼルフ王が頑として譲らなかった。多大な功績をあげたパーティーに渡す物が中古物件では、王家がナメられるらしい。
そう言われたらしょうがないので、大人しく屋敷が建つのを待つ事にした。完成したら『フレンド・チャット』で教えてくれるそうだ。
そしてニッカとダッカについてだが、二人を拐った人間も判明し、アブクゼニスが死んだ事で再び狙われる心配も無くなった。
なので、王都のギルドマスターで鳥獣人でもあるエルドルデが二人を預かり、白狐族の里を見つけ次第二人を里に返してくれると提案をしてくれた。
元々、冒険者ギルド…………と言うかエルドルデには、白狐族の里を探す依頼を出してある。金もすでに払ってあるので、ニッカとダッカの二人を預けてしまっても問題はないのだが…………。
「いや! いーーーーやーーーーっ!!!!」
「あの、出来れば私も一緒にいさせて下さい…………!」
とまぁ、二人から大反対を受けたのだ。弟であるダッカなど、カーネリアと離れたくないとカーネリアに抱きついて、もうギャン泣きである。姉であるニッカはそこまでしなかったが、それでもカーネリアと離れたくないのはダッカと同じであるようだった。
そして更に。
「ねぇガモン。私からもお願いできない? 私もニッカとダッカを放って置けないのよ」
カーネリアからまで、そんな事を言われた。
どうやらカーネリアは、二人と仲良くなって拐われるまでの話も聞いていたらしい。それによると、二人とも両親は既に他界しており、拐われる時には姉弟を引き取ってくれた祖父もアブクゼニスの手の者に殺され、二人だけになってしまったようだ。
だからだろうか。ニッカもダッカも、自分達を護ろうと奮闘し、その後も二人と一緒にいて気にかけてくれたカーネリアにすっかり懐いてしまっている。
カーネリアがずっと一緒にいたおかげなのか、心の傷のせいで駄菓子しか受け付けなくなっていたダッカも、最近は普通にご飯が食べられるようにもなっているし、それを考えると確かにいま引き離すのは酷かも知れない。
「「「……………………」」」
「…………解った。二人も連れて行こう」
三人に見つめられて俺は根負けし、ニッカとダッカの二人は俺達が連れて行く事になった。
もちろん、エルドルデには白狐族の里を引き続き探して貰う。小さい里らしいので、二人を気にかけている人もいるだろうからな。
と、言う訳で。
全ての問題を片付けた俺達はタミナルの街に戻る事にした。帰りの足はもちろん『◇キャンピングカー』である。
ターミナルス辺境伯にアルグレゴ小隊にモンテナという、行きもいたメンバーに加えて、カーネリアやニッカにダッカと、帰りはさらに大所帯になった。まあ、『◇キャンピングカー』に乗っての移動だから人数は関係ないけども。
「そしてタミナルの街に帰れば俺達も晴れてCランク冒険者だな。ランクが上がったらすぐにクランも作ってしまうか。人集めに『技巧神の大工房』にと、やる事はいっぱいあるな」
ちなみにカーネリアはジョルダン王国の魔道士隊に入っていた上にエースを張っていたので、ギルドランクとしては自動的にCランクとなるそうだ。その実力は既に王家が認めているから、ってのが理由らしい。
「あーー、ガモン。何か考えている所悪いがな、タミナルに着いたら、お前らはCランクじゃなくてBランクに上がるぞ」
「…………は?」
「いや、だからBランクだ。護衛任務の途中だったからランク上げたり出来なかったけどよ。世界初の魔王討伐を成し遂げた奴らを、Cランクなんかで留めておけないだろ。お前らはBランクに上がるのが決定している」
「はぁっ!?」
いやいやいやいや!! Bランク!? Bランクって言ったら、影纏いの二つ名を持つバルタと同じランクだぞ!?
「いや無理だって!! Bランクってバルタと同じランクだろ!? 俺、バルタと戦ったら瞬殺される自信があるぞ!?」
「なんの自信だよ。…………まあ、確かに実力も経験も足りないんだけどよ、実績がなぁ…………。だから取り敢えず、パーティーとしてBランクって事にするつもりだ。それならカーネリアの加入もあるから、それほど不自然でもないからな」
「…………パーティーとして?」
「ああ、パーティーとしてだ。個人としてはCランクに抑える。ただ、そうと決まったからには、パーティーとしての登録がいるからな。パーティーの名前を考えておけ。お前ら、まだ決めてないだろ」
…………パーティーとしてBランクか。それでもどうかと思うけど、個人でいきなり成るよりはマシか。
「うーーん、パーティー名か…………。そういや考えてなかったよな」
いきなり持ち上がった難題に、俺達は頭を悩ませる事になった。
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