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210回目 魔王『キツネ』

『……………………』



 瓦礫の山の上に立つ、『キツネ』の形をした黒い影は、まるで本物の動物のように足場となっている瓦礫の匂いを嗅いだり、辺りをキョロキョロと見渡したりしている。


 その姿は『キツネ』の形をした影であり、その体には赤い光の線が眼や口を縁取り、胴体部分では何らかの模様のように走り薄っすらと明滅している。


 俺は本物の狐なんて見たことが無いが、普通の狐よりは大きいのだと思う。そして何よりも、その無邪気にとっている動物のような行動とは裏腹に、その体から吹き出している気配は、とてつもないプレッシャーを周囲に振り撒いていた。


 この魔王『キツネ』がその場にいるだけで息苦しく、頭が締め付けられるように感じる。



『………………………………!!』


「来るぞ!!」



 周囲を見ていた『キツネ』が、地面に転がる『郷愁の禍津像』に眼を止め、その体から一気に禍々しいものが吹き出した!


 その赤く光る眼に怒りが見えるのは、『郷愁の禍津像』が破壊されようとしているからだろう。本当ならばすぐさま破壊してしまいたいが、魔王の魔力で強化されてしまっている『郷愁の禍津像』は硬いのだ。もう数十発は弾丸を撃ち込んでいる筈なのに破壊までいかない。一発の攻撃力が足りないのかも知れない。一応は+4の弾丸なんだけどな。



『ギャルルルルッ!!』



 魔王『キツネ』は俺達を憎々しげに睨みつけてコチラを威嚇し、その魔力の感じる高まりと共に自身の体も大きく膨れ上がらせた。


 そしてそれと同時に足元から影が広がり、その影からは眷族と思われる真っ黒なキツネが姿を現した。



「アルグレゴ! もう再封印はできないんだな!?」


「魔道士達は無理だと言っていた! 供物となる『酒』と封印するための魔力が足りないそうだ!」


「なら倒す!! キャンパーは引き続き禍津像の破壊に努めろ! 俺達は魔王の相手だ! 絶対に禍津像は敵に渡すな!!」


「「おうっ!!!!」」



 魔王は倒せない。それはこの世界において魔王の事を知る者達の常識だ。この事実は一般人には知られておらず、アルグレゴ小隊の中にも知らない者が多かった程だ。そういった者達は、魔王封印の地なんて物がある事すら知らなかった。観光地としては知っていてもだ。


 魔王を倒す術はただ一つ。その魔王の本体である『郷愁の禍津像』を破壊する事のみだ。だから俺達がやるのはただ一つ、魔王の足止めだ!



『ギョオーーンッ!!』


「キツネならコンコン言いやがれ!!」



 変な鳴き声をあげながら飛び掛かって来る眷族キツネを斬り捨てる。この『影だけ』のような眷族は弱いのだ。ただ、魔王が健在である限り無限に増殖するだけで。


 そして魔王は、この眷族を生み出している間だけは動かない。魔王は常に眷族を増やそうとするから、眷族を倒していけば魔王の足止めにもなる。まぁ、ある程度だがな。



「ガモン! 私がやるわ!!」


「カーネリア! 任せる!!」



 そう言うとカーネリアは、腰にニッカを抱き付かせたままで宝玉から杖の先まで深紅の、☆4『クリムゾンワンド』を振るった。


 俺のフレンドになったカーネリアには、本人の希望で全ての装備・アクセサリーに至るまで魔道士仕様にしてある。



 《カーネリア》

 メインウェポン:クリムゾンワンド(+1)

 サブウェポン:スカーレットワンド(+4)

 腕装備:吹き飛ばしの盾(+4)

 頭装備:魔女の帽子(+4)

 体装備上:魔女のローブ(+4)

 体装備下:魔道士のズボン(+4)

 足装備:魔道士のブーツ(+4)

 アクセサリー:赤熱の指輪(+4)

 アクセサリー:理力の指輪(+4)



 これによってカーネリアの魔力は増大し、特に炎系の魔法はドゥルクが『儂の域まであと一歩かの』と言うまでになったらしい。ガチャ装備の底上げがエグい。



「いくわよ! 『ヘカテフレイム』!!」



 カーネリアのクリムゾンワンドから吹き出した白く発光する炎は、とんでもない量と熱を持ってキツネの眷族を一掃した。だが肝心の魔王『キツネ』だけは、迫る炎を自分の足元から吹き上がらせた影によって防いで見せた。


 さすがは魔王か、化物め。



『オォーーーーン!!』



 魔王『キツネ』が遠吠えをすると、俺達の足元にある影が俺達を中心とした円のように丸く広がった。



「ん!? ヤバイ! 避けろ!!」



 それは直感だったが、こんな物が良い物である筈が無いのだ。俺の言葉を聞いて一斉に円から飛び退くが、腰にニッカをしがみつかせたカーネリアも、咄嗟にニッカを抱き上げて地面を転がった。


 そして全員が離れた瞬間に、円状の影から真っ黒な槍が数本飛び出した! あのまま円に乗っていたら、危うく串刺しになる所だった。


 そして俺達の体勢が崩れた所で、魔王『キツネ』が大きく飛び出し、『郷愁の禍津像』を撃っていた『遠距離攻撃用ドローン』を爪で斬り裂き、もう一つのドローンには自身の体から『影の槍』を飛ばして貫いた!



「キャンパー!!」



 一撃で破壊されて消えていく『遠距離攻撃用ドローン』。邪魔物を潰した魔王『キツネ』は、『郷愁の禍津像』に狙いを定める!



「させるか!! ウオオォラァッ!!」


『ギャンッ!?』



 二機の『遠距離攻撃用ドローン』を始末した魔王『キツネ』が空中を蹴って軌道を変え、『郷愁の禍津像』を狙って跳躍すると、いち早く体勢を立て直したアルグレゴが、大剣を振り下ろして魔王を弾き飛ばしてそれを阻止した。


 アルグレゴのおかげで間一髪で間にあったが、ドローンを失ってしまったのが痛い。これで俺達は、魔王を相手にしながら『郷愁の禍津像』を破壊しなけければならなくなった。

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