194回目 冒険者ギルドへの依頼
カーネリアを仲間として受け入れた後、俺達は冒険者ギルドへと向かった。その理由は、王都の冒険者ギルドでギルドマスターをしている鳥獣人『エルドルデ』に会う為だ。
エルドルデに会うのは、今日が初めてでは無い。二日前にも、俺が保護している白狐族の姉弟である『ニッカとダッカ』について相談をしているからだ。今回出向くのは、その白狐族の里を探し出す依頼を、本格的に出す為である。
白狐族とは閉鎖的な種族だ。彼等はまずその姿が美しい。真っ白な髪に深い青の瞳は神秘的だし、そもそも『神の使い』とまで言われるのが白狐族だ。
実際に彼らの中で一部の者が持つ固有スキルには『神通力』という物がある。神に伺いを立てて自分達の力を増大し、同時に敵の力を奪うという非常に強力な範囲スキルで、固有スキルとだけあって持つ者は白狐族に限られる。
それに加えて彼等の操る炎は青く、『巫術』という不思議な術を使うのも特徴的だ。
姿が美しく能力が高いとなれば狙われる。そのため白狐族は特定の里を持たず、定期的に移動する種族なのである。
「だからねぇ、あの二人を里に返してあげたいんだけど、その里が見つけるのは至難の業なのよ。簡単に見つかったら彼等が移動している意味が無いとはいえ、困るわよねぇ…………」
そう言って頬に片手を当ててため息をつくのは、鋼のような鍛え上げた肉体をヒラヒラでスケスケのドレスに包んだ鳥獣人の大男だ。
ジョルダン王国の冒険者ギルド本部ギルドマスター『エルドルデ』。『華麗なるエルドルデ』『舞う死神のエルドルデ』『筋肉大車輪エルドルデ』などと、現役時代は様々な二つ名で恐れられた『Aランク』の冒険者だった男だ。
「一応、二人からも話は聞いたんだけどね。カワイイわよねあの二人。どちらの子も食べちゃいたくなるわ。ガモンちゃんの好みはどっちなの? なんならアタシでもいいわよ? ガモンちゃんとはゆっくり親交を深めたいし、一晩中つきあってあげるわよ?」
ズイッと俺に迫る顔は恐怖でしかない。俺は体を引いて少しでも距離を取りつつ、その申し出を断った。
「いえ結構です! それよりもニッカとダッカの事ですよ。二人から聞いた話に、何かヒントは無かったんですか?」
「…………二人が捕まる少し前に、里の付近で騒ぎがあったらしいの。その騒ぎが何の騒ぎなのか二人は良く知らなかったけど、その騒ぎの中で白狐族の里が発見されたのだと思うのよね」
「騒ぎ…………ですか」
「そうだとすれば、その騒ぎは結構大きな物だったと思うのよ。私としては、それこそ近くの魔王の封印でも解けかけたのではないかと予測するわ。だとしたら、記録は残っている筈なのよ」
「なら、見つかると?」
「その里自体はもう移動していると思うけど、二人が拐われた当時の里の場所が解れば、捜索する範囲は絞れるわよね? そこまでいけば、何とかなると思うわよ?」
おおっ、マジで頼りになりそうな人なんだな、このギルドマスター。格好と言動はおかしいけど、実力はしっかりとあるタイプの人だ。
「ただ、狙われ易い白狐族の里を探してコンタクトを取る仕事になるから、信用出来る者にしか任せられないわ。ガモンちゃんには冒険者ギルドに『依頼』を出して貰う必要があるわよ? かなりの高額報酬でね」
「ええ、もちろんです。出し惜しみする気はないので、遠慮なく提示して下さい!」
「そう? なら依頼の難易度はCとして、人を選ぶ特殊指定依頼として出すわね。報酬とギルドの手数料、そしておそらく必要になる追加報酬も含みで白金板一枚貰うわね。ちなみに追加報酬分は使わなくても返せないから、そのつもりでいてね?」
お、おう。…………一億か。いやまぁ払うけども。たぶん俺のスキルの中にある『マイスター・バー』で情報買うよりも安いだろうし。俺も捜索にまで時間は取れないしな。
「いちおう聞いておきたいんだけど、追加報酬分って具体的には何の分なの?」
「この依頼だと、捜索範囲を広げる事になるとアタシが出る方がいいのよね。それに白狐族の里を見つけたとして、交渉役もアタシになるでしょうから、その分よね」
マジか。ギルドマスターで、しかも元・Aランク冒険者であるエルドルデまで動いてくれるなら、むしろ安いまである。それに安心感も違うな。
「わかりました。よろしくお願いします」
俺はエルドルデに頭を下げて、白金板一枚を置いて依頼を出した。
「うん。…………じゃあ、アタシからも一つ依頼、と言うかお願いをしてもいい?」
「なんですか?」
「アタシも『フレンド』に入れてくれない? もちろん、ギルドマスターの名にかけて悪用しないと誓うから。…………お願い出来ない?」
「なっ!? …………い、いえ。何でもありませんわ」
そのエルドルデの言葉に一番反応したのは、しばらくはフレンドにしないと告げているカーネリアだ。
まぁ、確かにカーネリアとしては思う所はあるだろうが、カーネリアに関しては叔父であり魔導大臣のマルヒルドも、そして何よりカーネリア自身も『ドゥルクの書庫』を狙っているので簡単には信用出来ないのだ。カーネリア本人もそれが解っているから、一瞬立ち上がったがすぐに座り直した。悔しそうにしながらも。
俺はそんなカーネリアの様子を少し見てから、エルドルデに向き直ってフレンドにする事を了承した。
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