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192回目 先祖と子孫

 俺の『◇キャンピングカー』の中から普通に出て来た、自分の先祖であるドゥルク=マインドの幽霊に目を見開き口を大きく開けていたカーネリアだったが、ハッとして口を閉ざして顔を引き締めると、ドゥルクの前に進み出て片膝をついた。



「お久し振りでございます、ご先祖様。カーネリア=マインドでございます」


『うむ、分かっとるよ? 儂を見て随分と驚いとったが、儂に会いに来たんじゃないのかの?』


「…………いえ、実はご先祖様が幽霊となって存在している話は叔父から聞いておりましたが、私は半信半疑でした」


『そうか、無理もないの。では何をしに来たんじゃ?』


「はい、私は…………!」



 そこで言葉を切ったカーネリアは立ち上がると、まるで舞台女優かのような動きで振り返り、ビシッ! と俺を指差した。



「ご先祖様の後継者と名乗る、このガモンなる不埒者と決闘に参ったのです!!」


『……………………』


「……………………」


『…………何の話じゃ?』



 カーネリアの言い分に首を傾げるドゥルクを見てしばらく考え、俺は手をポンッと叩いた。


 そうだよ、そう言えばドゥルクは会議の内容を知らない筈だった。俺だって自分が『ドゥルクの後継者』なんてのになったと言われたのはさっきだもの。知ってる訳がない。



「えっとね。なんか俺の正体を隠す必要があるとかで、俺はドゥルクの後継者って事になった? みたいだ。それなら俺が持つスキルの力も誤魔化せるだろうって感じらしいけど…………」



 ノルドからは、今回の会議の内容は機密事項になったから、軽々には話さないように言われている。もちろん関わりのある者に話す事は禁じられていないが、ドゥルクの子孫とは言え、カーネリアとか言うこの娘には話せないだろう。


 なので少し誤魔化しながら、俺は事の顛末をドゥルクに説明した。なんかグダグダで、ちゃんと伝わったか自信が持てなかったのだが。



『…………フム。なるほど読めたわ。ティム達のためじゃな。そして我が子孫はそれを知らんと見える。とすれば話の本流は最重要機密事項となった訳じゃな。情報の危険性を考えれば当然じゃな』



 流石は大魔導師ドゥルク=マインドだ。裏側の話までキッチリ読み取ってくれた。そしてカーネリアをジロリと睨むと、カーネリアは不利を悟ったのか、サッと視線を逸らした。



『ならば、カーネリアは不完全な情報を掴まされた…………いや、この迂闊さはマルヒルドのヤツかの。アヤツが今回の事を迂闊に喋った事で、カーネリアが暴走したと考えるのが自然かのぅ』



 俺が『勇者』である事や『郷愁の禍津像』の真実は秘匿された。だが、それでも『ドゥルクの書庫』を持つ『俺』という存在は目立つから、俺は『ドゥルクの後継者』として発表される。…………という話だったよな。


 そのマルヒルドとか言うやつは『ドゥルクの書庫』にご執心だったようだから、屋敷に帰ってから悔し紛れに俺の事をグチり、それを聞いたカーネリアがろくに話も聞かずに屋敷を飛び出した。


 そういう話らしい。



「うっ…………! い、いえ! 私は暴走など…………!」


『ガモンが儂の後継者じゃと言われて、すぐに飛び出してきたんじゃろ? それが暴走でなくて何なのじゃ? やめとけ。お主はまだガモンの正体すら解ってないじゃろ』


「で、ですがご先祖様の遺産は、『ドゥルクの書庫』は我ら子孫が管理すべき物です! こんな誰ともわからない者に任せては護れません!!」


『儂の造り上げた『書庫』をどうするかは儂が決める事じゃ。儂はすでにそれをガモンに譲り、ガモンのスキルは『書庫』を護るにも足る力じゃ。管理という点で言えば、お主らに預けるよりも余程安全な場所にあるわ!!』


「そ、そんな! それでは本当に私達よりもその男の方が上だと言うのですか!? ご先祖様! 叔父は魔導大臣にまで登り詰めましたし、私は魔道士隊のエースになったのです! ご先祖様は我らを認めてはくれないのですか!?」


『認めるとか認めないとかの話でも無いんじゃがな。だってお主ら、儂が死んだ途端に遺産を巡って争い始めたじゃろ。儂は見とったのじゃぞ? 遺産を争って身内を罠に嵌めたりもしとる奴らに、危なくて渡せんじゃろ?』


「そ、それは…………。遺産は一つの場所にあった方が管理しやすいと、叔父上が…………」



 ああ、遺産争い。そう言えばそんなのがあったとか言ってたな。ドゥルクも知っていた訳か、可哀想に。自分の遺産を巡って子孫が争う姿なんて、絶対見たくない物だろうにな。



『まぁどうしても『書庫』の安全性が気になるならば、試してみるといいわい。ホレ、書庫はこの『◇キャンピングカー』の中じゃよ。見て来てみい、見れるものならな』


「わ、わかりました。では…………。あ、あれ? な、何だこれは!?」



 ドゥルクに促され『◇キャンピングカー』に入ろうとするも、押し返されるカーネリア。まあ、俺のフレンドにならないと入れないからな。



「は、入れない!? これはご先祖様の仕業ですか!?」


『違う。これがガモンのスキルじゃよ。ホレ、結界を壊す為に魔法を撃ってもよいぞ? ターミナルス辺境伯家に迷惑をかけん程度にな』


「いやいや、魔法はダメだろ?」



 確かこの娘、魔道士隊のエースとか言ってたぞ。そんな魔法を撃ち込まれて、『◇キャンピングカー』が壊れたらどうすんだ。



『心配いらんわい。儂の魔法でもちょっとコゲる程度じゃったからの』


「試したんかい!?」



 何してくれてんのコイツ!? そしてカーネリアも、岩槍や氷の魔法を撃ち込み始めた。いやいやいやいや!? 本当に大丈夫なんだろうな、コレ!?



「…………ハァッ、…………ハァッ。そ、そんな、私の魔法で破れないなんて…………!?」


「何をしているのですか!!??」



 …………結論から言うと、『◇キャンピングカー』は無事でした。ビクともしておりません。ただ、騒ぎを聞きつけて慌ててやって来たターミナルス辺境伯家の執事には、メッチャ怒られました。何故か俺が。


 ……………………解せぬ。

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