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188回目 待たされるノルド

 ターミナルス辺境伯『ノルド=ターミナルス』は、ジョルダン王国の王城内にある客室で辟易としていた。



「ターミナルス辺境伯様。サギスキー子爵様とダマウッチー伯爵様が面会を求めていらっしゃいますが、如何いたしますか?」


「…………そろそろ陛下との会談が近いだろうから、断ってくれ」


「かしこまりました」


「…………まったく次から次へと…………」



 一礼をして去っていくメイドを見送ってから、ノルドは盛大に溜め息をつく。国王陛下との面会の約束はすでに三日前の事。ノルドはすでに三日もの間、面会を先伸ばしにされて待たされているのだ。


 その原因は解っているし、それについては文句は無い。国王陛下との面会を前にして、ノルドが事前情報として渡した『報告書』の精査と対策に追われているのだろう事は明らかだからだ。


 報告書の内容一つ取っても、『勇者』である我聞の報告に始まり、そのスキルとフレンドの概要、そのクエストにおいて仲間となったドゥルク=マインドとその『書庫』。スキルの能力によって明らかになった『魔王』の情報と『郷愁の禍津像』の真実。


 これらをノルドは、最上級機密事項と位置付けた上で報告書にまとめ、国王へと提出した。


 最上級機密と位置付けられた物は、それを少しでも読んだものに枷がつけられる。内外問わず機密を漏らせば『死罪』。その罪は一族の者にまで及び、もし国王が漏らそうものならターミナルス辺境伯は即座に国を裏切り敵となる、という意思表示も含んでいるので、国王ですら口を閉すしかない代物である。


 当然ながら、最上級機密に嘘は許されない。それをしたなら報告を上げた者と一族が極刑に処されるため、その内容は確実に真実である、という事にもなる。


 それほどの覚悟をもって上げられた報告書だ。その内容を読んだ国王や宰相が顔を真っ青にしたのも当然だ。


 最上級機密という位置付けにも関わらず、国を裏切って外に漏らす者がいてもおかしくない程の情報。国王と宰相は、心から信用を置ける者達だけで対策チームを作る必要性に迫られ、寝る間を惜しんで苦心している。


 そのせいでノルドはずっと待たされており、それについては文句も無いのだ。むしろもっと時間を掛けても良いから、完璧な対策チームを立ち上げて貰いたい。



「ターミナルス辺境伯様。ヨコイリー伯爵様が面会を求めていらっしゃいますが、どうなさいますか?」


「…………断ってくれ、理由はいつもと一緒だ」


「かしこまりました」



 ノルドが辟易としている理由はこれだ。国王や宰相から声が掛からず、むしろこの話から遠ざけられている者達。


 しかし儲け話には聡く、最近のターミナルス辺境伯領から出てくる様々なアイテムに関わりたいと考えている者達。


 そのアイテムとは要するに我聞の『ガチャ』から出てきたアイテムなのだが、それを狙う有象無象やら魑魅魍魎やらがこの三日間、何度も面会を求めて来るのだ。


 その中には『カッサライー侯爵』や『アブクゼニス公爵』などと言う大物までいたのだ。一応、その二人とは面会したが、国王から声が掛かっていない時点で信用できない者達である事は疑いようもなく、ノルドとしても関わりたくない筆頭の大貴族達だった。



「やれやれ、こうなって来ると騒ぎになるのを承知でテレビを持ってくれば良かったな。『ワールドにゃん歩き』を見て癒されたい所だ…………」



 日頃の気疲れが酷いのか、ノルドのお気に入りの番組は動物番組だったりする。それも、猫好きのカメラマンが世界の各地を巡って現地の猫を撮影するやつが特にお気に入りだったりする。



「ターミナルス辺境伯様。ウラノマネー子爵様とソデシター男爵様が面会を求めていらっしゃいますが、どうなさいますか?」


「……………………はぁ」



 来客が来る度に律儀に聞きに来るメイドも、どこかウンザリしている空気を出している。それならば勝手に断ってくれても良いのだが、当然そんな訳にもいかない。



「断ってくれ。…………理由は、いつも通りだ」


「かしこまりました」



 もうベッドに飛び込んで、寝て待ちたい所だがそうはいかない。いつ国王陛下に呼び出されるか解らないので、常に準備を整えて待ってなくてはならないからだ。


 そしてノルドが王に呼ばれたのは、それから更に一日後であった。



 ◇



「すまぬなノルドよ。長く待たせた」


「いえ、むしろゆっくりと骨休めが出来ましたのでお気になさらず。少々、やっかいな来客は多かったですがね」


「ああ、聞いておる。苦労をかけたな」



 やっと行われる事になった会談だが、報告書があまりの内容だったため、会議となった。何重にも結界魔法やスキルに護られた会議室には、ジョルダン王国の国王と宰相を始めとして、国王が信用できるとした数名の貴族と、王都の冒険者ギルドにてギルドマスターをしているエルドルデに、タミナルの街から王都に来ているギルドマスターであるモンテナの姿もあった。



 そして会議室のテーブルの上には、四つの『郷愁の禍津像』も置かれていたのだった。

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