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186回目 隷属の首輪

「なぁシエラ。これって、街まで戻れば何とかなるのか? 例えばアイテムボックスと、この子達の主の死体を持って街に行けば解放できるとか」


「…………難しいですね。この『隷属の首輪』は、よほど逃がしたくない奴隷にのみ使われる代物です。鍵が無ければ首輪を外すのは難しいですし、その主の死体から魔力が消えれば、この子供達は首輪が締め付けられて死んでしまいます」



 ほとんど詰んでるじゃねーか。しかし、その後でこの首輪さえ外れれば、この子達の所有権は発見者に移るという説明もあった。


 首輪さえ無ければもう奴隷じゃないのかと聞くと、そう簡単では無いらしい。この子達には、魔力で『奴隷紋』という物が刻まれており、それがある限りこの子達は奴隷なのだと言う。


 誰の所有物でもなく街を歩いていたなら、一番最初に捕らえた者に所有権が移ると。なんとも救われない状態になるらしい。



「…………はぁ、まぁ放っとけないわな。…………今の状況で俺が言うのも何だけど」



 俺はいまだに酒のせいで熟睡している小猿達が入った檻をチラ見して、ため息をついた。


 いやしかし、それはそれ。俺はスキル構成を《盗賊の心得》×4に組み換えた。そして☆3『解錠ツール(+4)』を取り出す。


 …………スキル構成を四つ同じにしたら、備考欄に『称号:盗賊の極意』ってのが増えたぞ? 効果は…………『盗賊系スキルの権能倍化』? マジか。これイケるかも知れないな。



「ガモン様? まさか外せるんですか!?」


「まだ解らない。でも、このスキル構成とアイテムがあれば出来る気がするんだよな。ちょっとやってみるさ。出来なきゃまた考える」



 俺は二人の子供から弟と思われる子を膝に乗せ、隷属の首輪の解錠を試みた。



「…………おっ、解るぞ。…………なるほど? 魔力の鍵が何重にも展開されてるのか。ふぅん。ダミーも多いな。…………いや、でもイケるな、これ」



 隷属の首輪にある鍵穴に『解錠ツール』をあてると、その内部構造が俺の頭の中に展開された。


 鍵の構造と魔力的な構造をかけあわせた、かなり面倒な仕様になっているが、俺はスキルのお陰で理解できる。解錠の方法も頭に浮かんでくるので、その通りに進めれば解錠できる。



「ダッカ!! 私の弟に何をしてるの!? ダッカから離れて!!」


「ダメです落ち着いて! あなたの弟さんは大丈夫だから!!」



 突然の声に驚いて眼を向けると、姉の方の子が目を覚ましたらしく暴れていた。シエラが抑えているからこちらには来れないだろうが、急いで解放してやらないとずっと暴れそうだ。


 俺はスキルに向けた集中力を更に高めて、隷属の首輪へと向かい合った。


 シリンダーを回しながら一定量の魔力を流し、シリンダーに刻まれた魔方陣を起動し、次のシリンダーに向かう鍵を開ける。


 専用の鍵があれば、ただ魔力と共に鍵穴に差し込んで回すだけなのだろう。



「…………ふぅ、あと一つか。…………えっと……………………よし! いった!!」



 カシャリ! と音が鳴り、ダッカと呼ばれた子供から隷属の首輪が外れた。



「アレス!」


「はい!!」



 俺は子供の首を締め付けていた首輪をつかみ取ると、空中へと放り投げた。するとすでに剣を構えていたアレスが一閃し、『隷属の首輪』は斬り裂かれ稲妻に撃たれて塵となった。



「よし、と。じゃあ次は君だ。こっちおいで」



 首輪の外れた少年をアレスに預けて、俺は少女に手招きする。少女は呆気に取られた顔で俺とアレスを交互に見ると、「…………助けてくれるの?」と呟いた。



「うん。まぁ、一筋縄ではいかないらしいけど、ちゃんと自由にしてあげるよ。それは約束する。…………ほら、こっちおいで」


「……………………」



 再び手招きをしても少女は動かなかったので、結局はシエラが少女を俺の所まで連れて来た。



「よーし、動くなよー?」



 俺は少女を膝に乗せると、隷属の首輪の解錠に再び乗り出した。二度目ともなると少しだけ楽だ。おそらく鍵が少年のやつと一緒なのだろう。俺は『解錠ツール』をカチャカチャ言わせて、この少女も隷属の首輪から解放した。



「よし、終わったぞ」


「あ、ありがとうございます」


「ガモン様、まずは王都まで帰りましょう。万が一ですが、彼女達を奴隷とした者達の仲間が来たら面倒な事になります」


「そうだな」



 俺はスキルの倉庫から大きめの普通車を一台出して、少年を抱き抱える少女をシエラと一緒に後ろに乗せて、運転席に座った。アレスは助手席である。


 そして未だ目を覚まさない少年を心配そうに抱きしめる少女から話を聞きつつ、車を走らせて王都へと戻った。


 少女の名前はニッカ、ダッカという少年とはやはり姉弟だった。俺達は彼女達と少し話しつつ、彼女達を簡単には奴隷という身分から解放できない事を伝えた。


 奴隷紋とは国が定めた奴隷に施される紋章であり、悪徳奴隷商に悪用されまくっているが、解放には国の、もっと言えば国王の許可が必要になるらしいのだ。


 …………いや、悪用されまくってんなら法整備しろよ。と思うが、この最悪の状況が奴隷の現実らしい。


 奴隷にするのは簡単で、解放するのは難しい。しかも国の管理もガバガバなら、そりゃ悪党に利用されるのも当たり前の話である。

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