181回目 王都での依頼
王都の冒険者ギルドにはモンテナが、そしてジョルダン王国の王城にはノルドがアルグレゴ小隊を連れて話し合いに行っている。
もう話し合いをしているのかは知らないが、その話題に上っているのは間違いなく『俺』だろう。…………いやむず痒いな。俺じゃない、俺のスキルと魔王の事だな。ちょっと調子に乗ってしまった。恥ずっ。
まぁとにかく、王城とギルドの二ヶ所で俺のスキルや魔王の事について話し合いがされている訳だが、その中心にいる筈の俺は暇である。
いずれは俺も、王都のギルドマスターや王様…………じゃなくても、この国の偉い人と顔合わせをする事になるのだろうが、それは早くても数日後だと言われたのだ。
「ウム。これで手続きは完了じゃな。残りの半分もしっかりな」
「はい。ありがとうございます」
冒険者ギルドの受付に座っている爺さんに護衛依頼の手続きをしてもらい、これで本当に依頼の半分が片付いた。
後は待ちの時間だ。だからこの際、王都の依頼を受けてみようと俺はシエラとアレスの二人と話し合い、依頼が貼り出されている掲示板に向かった。
「さすがは王都のギルドだな。冒険者ギルドもデカイし、掲示板もデカイ。貼り出されている依頼もやたら多いよな」
「そうですね。でも、『冒険者』への依頼と言うよりは『何でも屋』への依頼という感じですわ。これなんか、ペットの世話係の募集とありますわ」
「本当だ。ペットの世話をして、一日に大銀貨一枚? 高くね?」
『ペットの世話係の募集(期間:無期限)』
・チャックフー子爵家においてペットの世話をするだけの簡単なお仕事です。ペットの食事の準備や遊び相手をしているだけで高収入を得られます。資格としては、体力のある方であれば誰でも大丈夫です。
※この依頼を受けている間は、原則として外出等が出来ませんので、ご理解ください。また、依頼の期間中に受けた不利益に関しても責任は負いかねます。
……………………と、シエラが見つけた依頼の内容を読んでみたけど、怪しさが凄い。ペットの世話係でなんで外出禁止になるんだ? なんか外にバレたらマズイ動物でも飼ってんのか? それに何より、依頼中に受ける不利益ってなんだ。ヤバイ匂いしかしないだろこれ。
「絶対に受けちゃダメなやつ」
「同感ですね。俺達はもっと普通の依頼を受けましょう」
俺の言葉にアレスも頷き、俺達は別の依頼を探し始めた。俺達のランクで受けられるヤツで、あまり時間が掛かり過ぎないのがいい。何日も拘束されると身動き取れなくなっちゃうからな。
なので俺達は、無難に王都周辺での討伐依頼を受ける事にした。討伐する対象は『ドランクモンキー』という猿のモンスターで、説明に『酒乱』とあった。モンスターの説明で酒乱? と、ちょっと気になった事もあって、俺達はその依頼書を剥がして受付に持っていった。受付で空いているのは、先程も手続きをしてくれた小柄な爺さんの所だけだった。
「すいません、この依頼の説明を聞きたいんですけど」
「はいよ。…………『ドランクモンキー』か。コイツは面倒くせえぞ?」
俺達から依頼書を受け取った爺さんの説明によると、ドランクモンキーはあらゆる国に広く分布する猿のモンスターで、群れを作って行動するらしい。
群れのボスはメスで、ボスであるメスとその側近のメスがいて、オスはメスに尽くす為にいる兵隊なのだと言う。
なぜメスだけがボスなのかと言うと、ドランクモンキーのメスが必ず持っているスキルがその理由だ。ドランクモンキーのメスは必ず『調合』と『発酵』のスキルを持ち、ボスにいたっては更に『貯蔵』のスキルを持っている。
それが何を意味するのかと言うと、この猿は『酒を造る』のである。…………って、酒を造るの!? マジで?
「コイツの酒はその地にあるものを何でもかんでも材料にして木のウロやら岩の窪みなんかでも造るから当たり外れがでかい。当たりの酒は瓶詰めにされて高級酒として売り出される事もあるがハズレはただの毒だ、見つけても飲むんじゃねぇぞ?」
「いや飲みませんよ」
当たりの高級酒は気になるけど、毒かも知れない酒を飲んだりしない。冒険者の基本は『命大事に』である。
「それと、基本的には全て討伐でいいんだが、もし余裕があったなら、メスの小猿だけは捕まえてきて欲しいと言う要望も追加しておく」
「捕獲? メスの小猿って、…………まさか酒を造らせるのか?」
「そういう事じゃな。コヤツらは群れのボスには絶対服従で、ちゃんと言う事を聞く。給料も造った酒を飲ませてやれば満足するし、人間より使いやすいなんて声もあるぐらいじゃぞ? 『ゲートキー酒造』って商会の酒がそれじゃよ」
「マジかよ、凄いな」
本当に猿のモンスターに酒を作らせている商会があるらしい。ちなみにボス役はそこの女将さんだそうな。女将さんに指示されて法被を着た猿が仕事をする。…………その光景ちょっと見てみたい。
そうして色々と情報を聞いた結果、俺達はこの依頼を受ける事にした。
決め手となったのはそのドランクモンキー達の弱点。見知らぬ酒があると、その酒が無くなるか酔い潰れるまで飲み続けるそうだ。
クックックッ、度数が高すぎて飲む事が出来なかった酒は死ぬほど余っている。アルコール度数が80%とか96%なんて酒もあるぞ? 何となく酒をガチャ・ポイントにするのは嫌だったし、こんなの飲むのドゥルクしかいなかったから、どうしょうかと思っていたんだ。
ちょうどいいから、この不良在庫でそのドランクモンキーを一網打尽にしよう! あんまり増えると商会の馬車を襲ったり、街に来て酒を盗んだりもするらしいから遠慮はいらないな!!
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