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177回目 王都『ジョネイブ』

 王都に近づくにつれ、道が段々と変わっていった。


 道幅は広く舗装も立派になり、王都の騎士や兵士の見廻りとすれ違う事も多くなった。王都の騎士達は一様にアルグレゴやアレス達の騎乗している霊獣に目を奪われ、その後馬車についている家紋に目を止めてこの一団がターミナルス辺境伯の一行だと知って挨拶に来る。


 そして少しだけノルドと言葉を交わすと、再び巡回に戻っていった。



「…………何と言うか、王都の騎士ってのは洗練されてるな。動きひとつ取っても、こう…………無駄のない気がする」


『まあ王都の顔となる者達じゃからな。全ての動きに『型』の様なものがあるんじゃよ。ガモンも覚えてみるか? ワシは百年ほど教師をしとった事もあるから教えられるぞ?』


「…………遠慮しとくよ。あれをやってる自分が想像できないし」



 俺は『◇キャンピングカー』の中で空中に投影された外の様子を見ながら、ドゥルクと話していた。


 王都までは、あとほんの十数キロなのだが、今の先頭は霊獣に乗ったアルグレゴ小隊とノルド達が乗った馬車であり、『◇キャンピングカー』もそれに合わせてスピードを落としている。ドゥルクがこの『◇キャンピングカー』を幻術で馬車に偽装しているので、車のスピードで走るなんて不自然な事は出来ないのだ。


 どんどんと立派になっていく道が、ついには二車線になった。両端には歩道もあり、この道路の設計に日本人が関わっているのは明らかだった。


 そして王都の外壁が見えた辺りでアルグレゴ小隊の一人が街門まで霊獣を走らせ、少ししてから戻って来た。



「隊長! 話はつけて参りました!」


「ウム、ごくろう! では行くぞ、しっかりついて来い!」


「「「「ハッ!!」」」」



 霊獣に乗った騎士達に囲まれた二台の馬車(一台は『◇キャンピングカー』)が街門を潜ると、街の中にいた人達が一瞬静かになった。



「お、おい。なんだよあの、やたらと綺麗な馬は」


「どこの貴族様だ? あれほどの馬に乗る騎士達を従えるとは、相当の実力を持った貴族様に違いない」


「あの家紋、ターミナルス辺境伯様だぞ」



 ザワザワとした聞こえてきて気分がいい。それはアルグレゴ小隊の面々も同じようで、アルグレゴとアレスは流石に普段通りだが、小隊の者達の中には、少し顔がニヤけている者がおり、それに気づいたのであろうアルグレゴの眼光が鋭く光っていた。


 ニヤけてしまった彼らに待つ過酷な運命については気になる所だが、俺はキャンパーに言って王都の街並みを様々な角度から投影して貰った。


 王都『ジョネイブ』。そこには当然、王が住む王城がある。ジョルダン王国の王都はその王城を中心に据えて、周囲を街が囲む形状をしているようだ。


 王城の周囲には水が張られた堀もあり、その周囲を豪華な屋敷が建ち並ぶ区域が囲むと、更にもう一度堀をへて外側に街が広がっていた。


 そして街並みを見てみると、まず目立つのは道路だ。この道路は馬車が悠々と通れる程に広く、当たり前のように二車線であり両脇には歩道もついていた。そして歩道側には街路樹があり、街灯のような物まである。


 街の建物は基本的には石造りで、高い建物が理路整然と並んでいる。ドゥルクによると、この街を設計したのはやはり『勇者』であり、ドゥルクが生まれるより前に現れたこの勇者は、この街を設計するにあたり上下水道も完備させたのだと言う。



『勇者『ナカノ』。この国の王族には『国興し』と言われたその勇者の血が入っておる。しかもこの街はこれで未完成らしいぞ? 勇者ナカノ自身が早世したのもそうじゃが、残された街の設計図も火事で焼けてしまったからの。じゃからこの王都は、これだけの完成度でありながら『未完の街』とも呼ばれておるのじゃ。まあ、その呼び方は国に禁止されとるから、陰で呼ばれとるだけじゃがな。…………言うなよ?』


「なんか格好いいけどな、『未完の街』」



 そういう絵画とかありそうだ。と口走ると、やはりあるらしい。結構有名な画家が何枚も描いているらしく、ドゥルクの『書庫』にもあると言っていた。後で見てみよう。



「しっかしかなりデカイなこの街。人もメッチャ多いし活気づいてる」


『ウム。二重の堀がある事と上下水道が完備されている事からも解るように、この街は水が豊富でな。運河で他の街と繋がっておるから、流通の要所として発展しておるのじゃ。キャンパーよ、川の近くにある建物を映してくれるかの?』



 ドゥルクの言葉に従って、俺達の目の前には川の側から見た建物と、川を背面にした建物の正面が投影された。



『この川沿いにある建物を所有しておるのは基本的には商人じゃ。全ての建物が四階建てで設計されており、上の階は倉庫になっておる』


「上が倉庫なのか?」


『そうじゃよ。ホレ、一番上の壁にロープが掛けられた滑車があるじゃろ? あれは『魔道クレーン』と言ってな、重い荷物でも楽に積み降ろしが出来るように作られた魔道具じゃよ。建物の両面にあって、建物の中を介して運河から地上に陸上げされるんじゃ』


「へぇーー。面白いなぁ…………」



 俺はちょうど荷物を運んでいる映像も見せられ、ちょっと感動してしまった。これだけ荷物が頻繁に行き来するなら、そりゃ発展している筈だ。道路がやたらと整備されているのも、この辺りが関係しているのだろうな。

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