174回目 ダンジョン講習
「ダンジョンの階層を繋ぐ階段には基本的にモンスターは出ない。だが絶対ではなく、モンスターが出現する場合もある、それは何故かと言うと…………。オイッ! 寝るなガモン! ちゃんと聞いておけ!!」
「…………う、うす」
「…………ったく。…………階段の一段の幅が広い時にある事だが、その広い一段がワンフロアとして認識されている場合があるんだ。そこで出て来るモンスターは基本ザコが多いが、そこがワンフロアと言う事は、その下にある階層はその分だけ一気に難易度が上がる事になってだな…………」
「……………………つらい」
俺は今、『◇キャンピングカー』の中でモンテナからダンジョン講習と言う名の授業を受けている。
ギルドランクがEランクを越えると、ダンジョンに入れる様になる。ただしその為には、ダンジョン講習を受けなくてはならない。それが冒険者ギルドの決まりだ。
今の俺のランクはDランク。そして今回の依頼が終わればCランクになる事がもう決まっている。
更に、バルタが戻って来たらバルタの『フレンド・クエスト』の為にダンジョンに潜らなくてはいけない。その話をバルタから聞いているモンテナが、「じゃあこの時間がある内に」と、移動する『◇キャンピングカー』の中でダンジョン講習をしてくれる事になったのだ。
モンテナもギルドマスターと言う立場だけあって、こういう講習の講師役をやる事があるらしい。
「それはいい。それはいいけど…………なんで俺だけなんだ…………」
『◇キャンピングカー』の中は快適で、移動も周囲の警戒もキャンパーがやってくれる。その為、ノルドはもちろん、アルグレゴ小隊ですらガチャから出て来た漫画を、うめえ棒やらポッチーやらをボリボリ食べながら読んでくつろいでいる。
各々好きな漫画を読んでいるが、中にはテーブルの上に全巻積んで読んでいる奴もいる。あれは書籍ガチャの☆4で出て来る『セットコミック』だろうな。☆3の単品と違って全巻読まないとステータスは上がらないが、その分上げ幅が大きいのが書籍ガチャの☆4だ。同じ漫画の☆3の漫画とは別枠なので、全く同じ内容でも、単品とセットコミックで効果は重複するらしい。(ドゥルク調べ)
ちなみに漫画を読む中にはアレスの姿もあるし、シエラは真剣に恋愛ドラマを見ている。シエラは俺と会った時には既にEランクでダンジョン講習も受け終わっている。
そして、アレスは最近冒険者になりランクも上がったばかりだが、時間を作っては講習を受けていたらしい。なので、この講習を受けていないのは俺だけだった。
そのせいで、いま俺はモンテナからマンツーマンでダンジョン講習を受けているのだ。しかも本来なら数日に分けてやる物を続けてやるので十時間もやるらしい。…………かんべんして下さい。
「集中しろガモン。言っとくがテストもあるからな。合格点が取れなかったら補習をしてもう一回だ。合格点を取るまで終わらんぞ」
「…………うぐぅ…………」
「お前、バルタがずっと攻略したがっていた最難関ダンジョンに挑むんだろ? 俺はバルタの願いも、バルタがそれに人生をかけているのも見てきたんだ。だからお前には期待している。アイツの目的を果たす為にも、お前には頑張って貰いたい」
「…………わかってる。俺はまだバルタから詳しい話は聞いていないけど、ティムからも頼まれているからな。手を抜くつもりは無いよ」
「…………ならいい。…………さぁ続きだ。ダンジョンのトラップにおいて代表的な物は…………」
それからキッチリ十時間。俺はダンジョン講習をやりきった。
◇
「うぉらぁっ!!」
『プギィーーッ!?』
俺の持つ☆4装備『重撃の大ナタ』がハイオークの肩から脇腹までを両断した。オークの上位種であるハイオークは、そう簡単に両断できるほど柔くはないのだが、ガチャ書籍を読みまくってステータスが上がった俺の敵ではない。
「おいガモン! だから両断するなら首をはねろって言ってるだろ! それじゃあ皮は素材にならねぇし内蔵にまみれた肉は処理が難しくなるんだよ!!」
「うるさいな、いいんだよ! 目的はストレスの発散なんだから!!」
「なお悪いわ!! モンスターとは言え遊びで殺すんじゃねぇ!! モンスターをただ殺す時は討伐する時だ! 履き違えるな!!」
「すいませんでした!!」
ダンジョン講習が終わったタイミングで、有能AIのキャンパーがモンスターを発見したと報告して来たので、俺はストレス発散とばかりにハイオークに襲い掛かってモンテナに戦い方を怒られた。
大人になって正論で説教されるの一番キツイ。まぁ、今のは俺が悪いけど。
「わかればいい! よしガモン次だ! 向こうの群れを殺って来い! アレス、シエラ! お前達も行って来い!!」
「「はい!!」」
説教はするけど直ぐに切り換えてくれるのがモンテナの良い所だよな。自分も冒険者だったからか、俺達の気持ちを解ってくれる。
よし! じゃあストレス発散ではあるけど、しっかり素材集めとして仕事しよう。
その後も俺達はモンスターを狩り続けたが、今度はしっかりと素材も回収していった。モンテナには素材の剥ぎ取り方も教わり、中々に有意義なストレス発散になった。
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