172回目 ☆5とラーメン
☆5 霊酒の壺
・世界に流れる精霊の魔力を集め『霊酒』を作る壺。一日に僅かな量しか出来ないが、ひと舐めすれば活力が漲り、一滴口にすれば怪我が治り、ひと口飲めば死の淵からも甦る。これを瓶で一つも捧げるならば、精霊の王ですら力を貸してくれるだろう。
・酒としても美味であり、悪酔いも二日酔いもしない。一壺満たして酒宴を開けば、神ですら降りて来るかも知れない。
「…………またえらい物が手に入ったな」
これは絶対にヤバイやつ。もうポーションがいらなくなるかも知れないし、『精霊の王』とか『神』とかヤバイ存在の力も借りれるらしい。
こんなの持ってるとバレたら、誰かが奪いに来るかも知れない。だってひと口で死の淵からも甦るんだぞ? たぶん権力者なら思うだろう、『それなら、ちゃんと飲んだなら、不老不死になれるんじゃないか?』と。
そうなったらもう取り合いになる。下手したら戦争の火種にすらなりかねない。これは人前に出せないな。
…………いやでも待てよ? 外に出して置かないと、中に酒が溜まらないんじゃないか、これ? って言うか、一日でどのくらい溜まるのかも解らないな。
俺は、取り敢えず『霊酒の壺』を出してみた。
「わっ! それが☆5の…………食品? ですか?」
「きれい!!」
ステンレスの台に置いた『霊酒の壺』は、まるで色取り取りの水晶を合わせて塊にし、くり抜いて作ったような形をしていた。大きさは両腕を回して抱え上げる程で結構大きい。そして中は今は空っぽである。
「ガモン様、これはどういったアイテムなのですか?」
シエラが聞いて来たので、興味深そうに色んな角度から眺めているアリアを置いて説明をした。するとシエラは額に手を当てて天を仰いだ。
「また教会に報告出来ない事が増えましたね。ガモン様、これの事はおいそれと話さない方が良いでしょう。『◇キャンピングカー』に置いてドゥルク様に管理して貰うのをお勧めします」
「ドゥルクか。…………酒だし、飲んじゃうかもな」
「それはガモン様が持っていても同じでは?」
「ぐっ、…………否定出来ない!」
だって飲んでみたいもん! ☆5の酒だぞ!? 普通に興味あるわーー。
俺は後でドゥルクに預けると決めて、『霊酒の壺』をスキルの倉庫に仕舞い、残念がるアリアを宥めて作業に戻った。一応アリアには口止めをしたが、まだ子供だし、アレスにも話をしておこう。これ、マジでヤバイと思うし。
「で、またこれが残る…………と」
全ての食材を業務用冷蔵庫に入れ終わると、ステンレスの台の上には数十枚のチケットが残った。食品ガチャの☆4は、こういうチケットが多い。
それらは『サーティナインアイス・チケット』や『バーガークィーン・チケット』や『タコ焼きパーティーセット』などの、その店やパーティーをやるための場所に案内される為のチケットである。
前にティムにあげた『アフタヌーンティーセット』と同じ括りのやつだな。ちなみにチケット以外の☆4だと、『仙桃』とか『無限おにぎり』とかヤバそうなのが出てくる。ヤバそうなやつは問答無用でスキルの倉庫行きだ。
まぁそれはそれとして。
「ラーメン屋に引かれるなぁ。カップラーメンとか袋ラーメンしか食ってないし、本物のラーメンは作り方知らんし、作れたとしてウマイとは思えんし…………」
でもこの色んな店に行けるチケットってあまりダブらないんだよ。ラーメンにしたって函館とか喜多方とか博多とか種類が多い。ダブってるのは喜多方か。俺は好きだよ、喜多方ラーメン。
「うーーん。使っちゃおうかなぁ。でも人数がチケット一枚で四名までなんだよな」
俺・シエラ・アレス・アリア・アラム・アレマーと、今家にいるのは六人。ちょっと半端だな。これだと二枚使わないといけないし、そうなると二人足りない。
人数が足りないと勿体ないよな。貧乏性かも知れないけど、なんか凄く損した気分になる。
となると、後二人は誘いたい。やっぱりここはアルグレゴだよな。そうすれば家族が揃うし。じゃあ残る一人はアルグレゴの副官をやっているイージドでも…………。
『呼んだかの?』
「…………」
『…………』
「…………なんで居るんだドゥルク? お前一回外に出たら、俺の許可無しに『◇キャンピングカー』の中に戻れないだろ」
『何やらワシの直感がここに来た方が良いと囁いてのぅ。それで? 何の話をしとったんじゃ?』
こいつマジか。どうやって嗅ぎ付けたんだ。食いしん坊エスパーか? 幽霊のクセに。
『そのチケットを使うのかの? 『アフタヌーンティーセット』の話は聞いておるぞ、それもその類いのアイテムじゃろ。ワシも連れて行ってくれんかのぅ。老い先短い老人の頼みじゃ』
「老い先も何も終わってるだろ。…………はぁ、まあいいか。ちょうど後一人だったし。幽霊がカウントされるかは解らないけど」
結局、俺はアルグレゴをフレンド・チャットで呼んで、七人と幽霊一人で☆4『喜多方ラーメン・チケット』を二枚使った。
本物のラーメンに皆が喜んでくれたのはもちろんだが、俺は久し振りにお店で食べるラーメンや餃子に涙が出る思いだった。ドゥルクみたいにメニューの端から端までなんて出来なかったが、ついつい二杯食べてしまったよ。
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