170回目 スキル増し増し
ギルドマスターのモンテナから、護衛依頼の詳細が届いた。
出発するのは明後日の朝。王都に向かうのは領主であるノルドと護衛としてアルグレゴ小隊。ギルドマスターのモンテナとその部下が一人、計二十四名である。
ここから王都までは基本的に『◇キャンピングカー』で向かう。ただ、王都の一つ前の街からは馬車での移動になるそうだ。
不用意に『◇キャンピングカー』を人目に晒して騒ぎを起こさない為と、領主としての威厳を示す為に一つ前の街で馬を買い、アルグレゴ小隊もそこからは騎士として随行する予定だと言う。
もちろん、馬車の後ろを『◇キャンピングカー』でついて行く訳にもいかないので、そこからは俺達も馬車だ。俺達の馬車には、アルグレゴ小隊から騎士が四人、それとアレスが馬に乗って護衛につく事になった。
え? 俺は馬に乗らないのかって? 乗れる訳ないだろ。日本で普通の一般人だった俺にそんな事を求められても応えられないのだ。
◇
予定も空いたので、俺はシエラやアレスと共にアルグレゴ小隊の訓練に参加する事にした。
今日の俺の動きは軽い。何故ならアルグレゴ小隊のおかげで大量に手に入ったスキルを合成しまくって自分にセットして来たからだ。
俺の今のスキルはこうだ。
《兵長の心得》
・五名程度の兵を指揮する者の心得。視野を広く持ち、瞬時の判断力が上がる。
《剣士の心得》
・剣に生きる覚悟を決めた者の心得。剣を装備する事により身体能力が上昇し、魔力は下がる。
《心眼》
・視野を広げ、わずかな動きも見逃さない心の眼。瞬発力と判断力を高める。
《剛力》
・力に特化する。強く踏み込んだ一撃は、目の前の敵を力でねじ伏せるだろう。
フッ、合成したスキルでも戦闘力に特化している物を選んだ。理由は単純、勝ちたいからだ。
アルグレゴ小隊での訓練は体力作りから始まって模擬戦に至る。レベルの恩恵が無く、ステータスも中々上げられていない俺はいつも下位層だ。もうダッシュも筋トレも模擬戦も負け負けである。
だから今回こそはとスキルを揃えて来た。そのおかげで屋敷からアルグレゴ小隊がいるターミナルス辺境伯家の訓練所までのランニングも速いペースで走れたし、体力的にも大分余裕がある。筋トレに関してもかなり余裕があり、俺はスキルの偉大さを痛感していた。
「だいぶ調子が良いようですね、ガモン殿」
「分かるかイージド! 俺は今日はやるぞ!」
アルグレゴ小隊の副官イージドがやって来た。そして俺の返事に笑顔で頷くと、持って来たマジックバッグを渡して来た。中は熟練度上げが終わったガチャ装備に違いない。
俺はそのマジックバッグを受け取ると、俺が用意してきたマジックバッグをイージドに渡した。中身は次に熟練度上げをしてほしい装備だ。ゲンゴウから貰った金で装備ガチャを千回まわして来たので、またかなりの量が入っている。
「何か新しい装備や優先して欲しい物はありますか?」
「いや、基本的にはダブりばかりだったからな。☆4も出たけど、こっちは強化出来ないと熟練度を上げる意味はないし。でも、+2まで強化出来たやつもあるから、幾つか入れてあるぞ」
「いいですね。☆4の性能を見たかったので嬉しいです。シエラ殿が持つ☆5がとんでもないので、興味あったんですよ」
このイージドと言う青年は、兵士と言うよりも研究者と言う側面が強い。だからか、このガチャ装備の熟練度上げが楽しいらしく、積極的に協力してくれるのだ。
そしてシエラの使う☆5『七星の盾』も熟練度はかなり上がり、そのスキルも全て見えている。
☆5 『七星の盾』
《スキル》
・『永続スキル』《物理防御+100・魔法抵抗力+100》
・《宝玉封印》七つの星ひとつにつき、ひとつの魔法、もしくは攻撃を吸収・封印する。封印解除する事で、その魔法を宝珠から撃ち出す事が出来る。
・《魔力変換》宝玉に封印したエネルギーを魔力に変換し、盾の持ち主へと還元する。
・《セブンズ・スター・バースト》全ての宝玉が満たされている時に使える。内包するエネルギーを宝珠から撃ち出す強力無比な一撃。
まだ熟練度を上げきってはいないので『セブンズ・スター・バースト』は使えないが、これが熟練度MAXになったら永続スキルによって俺の物理防御と魔法抵抗力はそれぞれ永久に+100される事になる。一気に堅くなるな、俺。その時が楽しみである。
「…………くっ! 参りました…………!」
「はぁ…………はぁ…………! か、勝った…………!!」
そして訓練の方では模擬戦が始まり、最後の方に組まれた一戦で、俺は初めて辺境伯家の兵士に模擬戦で勝利した。
スキルのおかげとは言え、メチャクチャ嬉しい。これに永続スキルでの堅さが加わるなら、もう調子乗っても許されるんじゃなかろうか?
そんな考えが読まれたのか解らないが、次の相手と戦おうとする俺の前に立ったのは、…………アルグレゴだった。
「いやちょっ!? な、なんでアルグレゴが!?」
「良いスキルを身につけて、だいぶ調子に乗った顔をしていましたからな。上には上がいる事を示すのも、導く者としての勤めでしょう。さぁ、何処からでもかかって来い!!」
「くっ! やってやらぁ!!」
…………今日の訓練は、こうして終わりました。え? 結果? ボコボコにやられましたけど何か?
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