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163回目 副官イージド

 朝になり、朝食を終えた俺はゲンゴウの家を訪ねた。用件は近々寮から出る事になるので、その挨拶である。まあ、すでにその話はしてあったのだが、ゲンゴウには大分世話になったし、これからも色々世話になるだろうから、挨拶は重要だ。



「そうですか、ついにこの日が来てしまいましたか。寂しくなりますな」


「いやいや、住む場所が変わるだけでいつでも会えますよ。それでなんですけど、何かゲンゴウ殿にお礼をしようと思ってさ。何か俺の☆4アイテムで欲しい物とかないですか?」


「礼など。既にガモン殿には随分と儲けさせてもらっておりますから、むしろ私が渡さねばならない程ですよ。しかし、くれると言う物はありがたくいただきます。…………そうですな。でしたら『フォークリフト』を頂けますか? あれは随分と便利ですので」



 ☆4『フォークリフト』か。フォークリフトは、荷運び用の爪が前面に二本ついた荷物運搬用の自動車だ。確かにあれは、ゲンゴウのような大きな商会を持つ者にはとても便利な物だ。…………あれ、でも?



「フォークリフト売らなかったっけ? 確か座って乗るヤツと立って乗るヤツを売ったと思うんだけど?」


「ええ、それがとても役立っているもので、あと二・三台欲しいと思っていたのですよ。ここで一台貰えば、出費が抑えられますからな。ぜひフォークリフトでお願い致します」


「ちゃっかりしてるな。でも、そういう事なら後でお店の方にフォークリフトを一台置いていきますよ」


「ありがとうございます。…………ガモン殿、何かあればいつでもこのゲンゴウに声をかけて下さい。ワシに出来る事であれば、何でもやらせて貰いますわい」



 ゲンゴウへの挨拶を終えた俺はシエラとアレスを呼び出して、三人でターミナルス辺境伯の城を訪ねた。事前に行く事をフレンド・チャットを使ってノルドとアルグレゴに伝えていたので、門は顔パスで通り抜け、まずはアルグレゴ小隊が訓練をしている訓練所へと向かった。



「おお、ガモン殿。お待ちしておりました。早朝訓練でまた熟練度が上がりきった装備がありますので、昨日の物と一緒にまとめてあります。どうぞお受け取り下さい」


「マジでか…………。さすがは辺境伯家の訓練ですね。まさかこんなに早く熟練度が溜まるとは思っていませんでした」


「それは熟練度の管理を任せている副官の手柄ですな。イージド! 説明だ!」


「はい!」



 アルグレゴに呼ばれて出てきたのは、昨日アルグレゴが熟練度を見れる装備である『商人の片眼鏡』を渡していた副官である。どうやら彼はイージドという名前らしい。



「ガモン様より預かりました装備を使用する中で、熟練度の上がり方に法則がある事を突き止めました」


「法則?」


「はい。ガモン様の装備は、新しい動きや種類の違う物とのぶつかり合いによって、特に多くの熟練度が溜まっていきました。それは言い換えるならば武器や防具が経験を積んでおり、それこそが熟練度と言う形になっていると言う事です」



 イージドはいま言った事を、兵士の実演を交えて教えてくれた。同じ盾で武器を弾く訓練でも、剣だけを相手にするよりは、槍や棍棒も交えて相手をした方が熟練度は上がる。要はそういう事だ。


 イージドはそれに加えて、どの動き、どの攻撃やシチュエーションでより熟練度が上がるのか、武器や防具の形状によっての違いなど、様々な角度からの検証結果まで示してきた。


 たった半日で、しかも初めて聞くであろう熟練度なんて物をここまで研究して結果を出すとは。イージドは、何て優秀な男だろう。


 俺は当初、熟練度が上がりきった装備を回収したら、回収した数よりも少し多い程度を置いて行こうと思っていたのだが、気が変わった。


 このイージドがいるならば、いま持ってる全部を置いていっても良いくらいだ。


 俺がそう伝えると、イージドの目つきが変わった。そしてイージドは部下を二人ほど呼びつけると、俺が山積みにしていく装備を素早く仕分けては、部下に指示を出して運ばせていった。



「取り敢えず、今ある分はこれで全部かな。フレンドチャットで進捗を伝えてくれれば、次のも準備しておくよ」


「了解です。では私は訓練に戻ります」



 と、話が終わった所でアルグレゴにひとつ要望を出された。それは、装備品として置いていった『安眠パジャマ』をしばらく貸し出して欲しいと言うものだ。



「『安眠パジャマ』を?」


「はい。あの『安眠パジャマ』で得られる『安眠』と言うスキルが非常に好評でして。昨日は夜営訓練も行ったのですが、わずか二時間の仮眠で一晩寝たようだと報告が上がっているのです。私自身はまだ試してないのですが、使用した部下からの要望が強いとイージドから報告が上がっておりまして。そのような効果があるのであれば、訓練の質も上がりますからな。お願いできますか?」



 本職の兵士からこういう要望が出るくらいに役立つなら、『安眠パジャマ』は全部売らずに取って置こうかな。確かまだ倉庫にいくつか入っていた筈だ。



「わかりました。取り敢えず手持ちの分は置いていきます。+4まで上げてないのも置いていきますので、検証もしてくれるとありがたいです」


「わかりました。ありがとうございます!」



 まあ、『安眠パジャマ』はガチャ装備なだけあって防御力もそこそこあるからな。夜営中に襲われても、そのまま戦いに入れる。


 テントから飛び出して来た、羊柄のパジャマ姿の兵士を見たら、襲って来た敵もちょっと引くかも知れないけど。

面白い。応援したい。など思われましたら、下の☆☆☆☆☆から評価をお願い致します。


モチベーションが上がれば、続ける力になります! よろしくお願いします。

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