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161回目 ティアナとの約束

 カフェで食事をした後は、ティアナに連れられて街の西にある住居区へとやって来た。


 俺は今の所ゲンゴウの寮に住んでいるのでこちらの方にはあまり来ない。来るのは住居区でも北側にある貴族街の方であり、そこで訪ねるのもカラーズカ侯爵家の別邸一択だ。


 しかし、今日行くのは貴族街ではない。貴族街と平民街のちょうど中間に位置する大きな公園だ。


 そこに大きな公園があるのは知っていたが、行った事はもちろん無い。ティアナの説明によると、そこは現・ターミナルス辺境伯の二代前の当主が整備した公園で、とても珍しいが素敵なルールがあるのだと言う。



「素敵なルールって?」


「あれを読んでみて、ガモン」



 ティアナが示したのは公園の正門にある看板だ。そこには、『これより先にて権力を振りかざす者には厳罰を与えるものとする《モルタニア=ラトス=ジョルダン》』と書かれていた。



「ジョルダン?」


「うん、ジョルダン王国の二代前の国王陛下。当時のターミナルス辺境伯とは親友で、この場所は二人の思い出深い場所だったみたい。それで、こういうルールを作ってこの公園は護られているの」



 つまりはこの公園の中では貴族も平民も同じ立場になるって事か。それはさぞかし平和なのだろうな。


 …………なんて思ったのだが、広い公園を散策していると、その片隅で殴り合いのケンカをしている奴らがいた。片方はその身なりからして貴族、もう片方は平民だろう。どちらも少年で、鼻血を流しながら殴り合っているその二人の周りでは、それぞれの仲間が囲んで応援している。



「…………なにあれ」


「…………ここでは貴族も平民もないので、ああして貴族と平民の決闘に使われる事もあるの。い、いつもある訳じゃないんだよ?」


「ああーー…………。そうか、裏を返せばここは平民が堂々と貴族とケンカが出来る場所でもある訳だ。貴族としても、ここに呼び出されて逃げる訳にいかないからケンカが成立するのか」



 平和な公園はどこいった? …………まあでも、近くで三人の兵士が見ているし、酷い事にはならないだろうから放っておこう。


 取り敢えず俺は、今の光景は見なかった事にしてティアナと二人で平和な公園を楽しむ事にした。



「あ、良かった。まだ始まってないみたいね」



 公園をしばらく歩いていると、すり鉢状に下がっている場所に出た。下っていく階段の左右には簡易的なベンチが中心を囲むように段々に置いてあり、その中央には開いた二枚貝のような形の舞台がある。


 その舞台では何やら準備が進んでおり、今日は何かのイベントがある日のようだ。


 ちなみにこの世界の休日は、その土地の領主が決めるものであり、今日は五日に一日のペースである休日に該当する。そのためか今日の公園は結構な混みぐあいだったのだが、ここには一段と人が集まっていた。



「もしかしてティアナ、今日はこれを見に来たのか?」


「うん。一番の目的はこの街を離れる前にガモンと遊ぶ事なんだけど、ちょうどこの催し物があるのを教えて貰ってね。ガモンと一緒に見ようと思って」


「へぇ、…………見た感じだと劇をやるのかな?」


「そうだよ。この街を代表する英雄で、今はギルドマスターをやっているモンテナが、『龍退者』の称号を得た戦いの物語だよ」


「それって、バルタも関わってるやつだろ…………」



 悪戯をする子供のような笑みを浮かべるティアナを見て、俺はふと後ろを振り返る。すると離れた所で人混みの影に隠れるように動いた者がいた。あれは、実は今日のデートにずっとついて来ているシエラである。


 シエラは俺の護衛という任務もあるから、俺達から隠れてついて来ている。となれば、当然ティアナの護衛であるバルタもどこかにいる筈なのだが、俺はシエラは見つけたがバルタは見つけられていない。アイツは隠れるのがうますぎる。



 俺達がこれを見るって事は、バルタもこれを見る事になる訳だ。自分が英雄として語られる演劇を見るとか、どんな罰ゲームだ。



「…………バルタはね、私が城に勤めている間も、ずっと護衛をしていてくれたんだ。バルタに教わった事は凄く多いし、護られた事も凄く多い」


「そうだろうな。バルタだし」


「バルタには、もう何十年も叶えたい目的があるんだ。それが、ガモンの手助けでついに叶えられるかも知れない。…………まぁ、そのせいでバルタはカラーズカ侯爵家を離れちゃうんだけどね」


「…………なんかすいません」


「ううん。叶えてあげてね、バルタの願い」


「わかったよ」



 舞台で始まった演劇は、中々にシリアスなバトルアクションで、ドラゴンが退く理由となった片眼を潰す一撃は、やたらイケメンで爽やかなバルタが放ち、観客席から大きな歓声が上がった。


 バルタを知る俺達からすれば、あの格好よくポーズを決めるイケメンバルタにちょっと吹き出しそうにもなるが、これを隠れて見るハメになっているバルタは、きっと悶え苦しんでいる事だろう。


 そして演劇が終わり俺達も含めて観客席から大きな拍手が上がる中で、ティアナが俺に少しもたれ掛かって呟いた。



「…………私が助けを求めたとしても、ガモンは来てくれる?」


「もちろんだ。ティアナが何処にいても、すぐに飛んでくよ」



 俺はティアナの眼を見て、シッカリと約束した。

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[良い点] フラグを立てたな。お姫様は助けないと。
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