159回目 アルグレゴ小隊
魔王の本体、『郷愁の禍津像』についての話し合いを終えた後、俺は領主のノルドにひとつ頼み事をして了承して貰った。
そして二日後には、領主の城にある訓練所にアレスの父親であり、ターミナルス辺境伯家の指南役でもあるアルグレゴと、ノルドとアルグレゴによって選抜された二十名の兵士が並んでいた。それと相対するのは、もちろん俺である。
「なるほど。つまり我々の任務は、その☆3装備を使い込んで熟練度を上げきる事なのですね? その為に、ここにいる全員を『フレンド』にすると」
「そう言う事です。よろしくお願いします」
危うく忘れかけたが『スキル合成』についてドゥルクに相談したところ、本職の兵士達の訓練に使って貰えば熟練度なんてすぐにカンストするだろう、と言う結論になった。
そして、その事をノルドに話すとアッサリ了承された。それは、本当にいいの? と思わず聞き直すほどにアッサリだった。
「ん? すぐに決めたのが不思議かな? 私にもメリットのある話だから了承しただけだぞ。いや、むしろ進んで協力しよう」
ノルドが言うには、俺のフレンドになる事で使える『フレンド・チャット』や装備の数々は、ターミナルス辺境伯領のモンスターの討伐や野党の殲滅に大いに役立つので構わない。との事だ。
もちろん、俺もスキルを集める為に兵士達を利用させて貰うので協力を約束し、移動の足としてミニバンの提供も決めた。まぁ、ミニバンについては練習が先なので実際に使われるのは少し後になるだろうが。
と、言う訳で。俺はその場に集まった『アルグレゴ小隊』となるメンバーを全員『フレンド』に登録した。
「…………なるほど、これがアレス達が言っていた『フレンド・チャット』ですか」
「はい。同じフレンド同士で、なおかつ実際に会った事のある人物なら、誰とでもチャットが出来ます。取り敢えず、この小隊でグループを作っておく事をオススメしますよ。やり方は…………」
「…………ふむ、なるほど。…………いやこれは便利ですな。これがあれば、いちいち伝令を走らせる手間もない。うぅむ、これだけで戦いがどれだけ有利になる事か…………」
チャット機能ですぐ戦いに結び付くあたり、やっぱりアルグレゴは武人だよな。
アルグレゴを含めて二十一名の新たなフレンドに、フレンドとなる事で使えるようになった機能の説明をした俺は、続いて昨日の内に回しに回しておいたガチャ装備をその場に出していった。
いやぁ回しまくったよ装備ガチャ。やる事が明確になってくると、クランに入れた仲間にも付けられるスキルの数々は絶対に必要だ。
しかも、スキル合成が有能過ぎるのだ。ガチャ装備の中でも、アクセサリー系は熟練度の概念が無い。装備を合成して+4まで育てればそれだけでスキルが手に入るのだ。
そして、その中でも耐性系のスキルは本当に大量に欲しい物だった。なにせ。
毒耐性(中)+毒耐性(中)+毒耐性(中)=毒耐性(大)…………からの。
毒耐性(大)+毒耐性(大)=毒無効。
と言うように、毒耐性を育てると毒無効が手に入るのだ。もちろん、その為には毒耐性(中)が手に入る☆3『防毒の御守り』が三十個も必要になるのだが、それだけの価値はあると思う。あとはこの耐性系や無効系のスキルを別種類で集めた時にどうなるか、とかも気になる所だ。
ちなみに、今回は装備ガチャだけを千回もやりました。ええ白金板一枚分、つまりは一億円を投入しましたよ。
その結果として、俺はアルグレゴ達の前にガチャ産の☆3武器や☆3防具を山積みに出来ている訳だ。
その内容としては『銅の剣(+4)』とか『鉄の胸当て(+4)』とかが多い訳だが…………。
「…………ガモン殿。…………これは?」
「……………………そ、それも一応、装備品だから…………」
ガチャ装備の山からアルグレゴが引っ張り出した装備品を見て、俺はそっと眼を逸らした。
そこにあったのは『ピエロの服(+4)』と『安眠パジャマ(+4)』に『ビーチサンダル(+4)』である。
いや、分かるよ? そのどれもが戦いに行くための装備じゃない。でも『安眠パジャマ』で手に入る『安眠』は結構便利だ。なんせ、そのスキルがあるだけで眠りの質が上がり、どこでも寝られるようになるんだから。
もうひとつ『ビーチサンダル』も結構便利だぞ? ビーチサンダルで手に入るスキルは『ベタ足』。これは命中率に補正をかけるスキルで、その補正率は20%と地味に高いのだ。
そして『ピエロの服』のスキルは『ファンブル』。つまりは『失敗』だ。これだけは何に使えるのかはよく解らないが、何となく取っておいた方が良い気がする。…………いや、本当に何に使うのか解らないから、マジでただ何となくだ。これに関しては、アルグレゴにも余裕があったらでいいと伝えた。
ちなみに熟練度の確認は、☆3『商人の片眼鏡(+4)』で出来るようになっていたので、アルグレゴに渡してある。アルグレゴの副官に任命された兵士が、早速装備していたので、熟練度の管理は彼がやるのだろう。
「よし! では各自装備を選び、訓練を開始しろ! 目的に装備の熟練度上げが加わった以上、訓練に総当たり戦を加える! そのつもりで励め!!」
「「ハッ!!」」
アルグレゴ小隊の面々はガチャ装備に身を包んでランニングに向かった。本当は、俺も一緒に訓練をした方が良いのだろうが、この後は別の予定がある。
もうすぐこの街を去るティム。…………いや『ティアナ』に、デートに誘われてるのだ。
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