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158回目 『罠』

 いきなりですが、頭がパンクしそうです。


 ここに来て、歴代の勇者が戦った『魔王』が実は倒せてなくて封印されてるだけだったとか。


 その魔王が実は『神獣』の本体から分離した『影』の部分だったとか。


 その本体は『郷愁の禍津像』という呪われそうな石像になってダンジョンで発見されているとか。


 まぁ色々ありましたよ。しかもこれ、追加情報あるんだよ。


 ドゥルクの話によると、『ヤギ』と『タヌキ』の魔王と戦った時、一体だけ物凄く強い眷族がいたそうな。他の眷族とは明らかに違うそいつらは、倒した後もチリにはならず、死骸を残したと言う。それは明らかに眷族のルールと違う。


 これについて『マイスター・バー』のマスターから情報を買った。お値段は白金板二枚。今回の情報取得で、十億円の大台突破である。ドゥルクの遺産の約半分が溶けました。



「それによると、『郷愁の禍津像』を『魔王』に近づけると、融合するどころか反発するんだって。そして本体が影に負けて眷族化して、『郷愁の禍津像』はまた世界のどこかで再構築される…………らしい」


「「「……………………」」」



 いやもうね、何だそりゃって話ですよ。だって罠じゃん。そんなの解る訳ないだろ。


 例えばだ。日本で異世界ものやファンタジーのラノベやゲームになれた俺が、『ヤギ』の魔王と戦う事になって、ヤギの『郷愁の禍津像』を手に入れたとしよう。


 そして俺が、その『郷愁の禍津像』と『魔王』に何かの関連があると気づいたとしよう。


 そしたら俺は、その『郷愁の禍津像』を持って魔王に挑む訳ですよ。魔王に捧げるまである訳ですよ。だって日本のゲーム的には、これで『神獣』が復活するか、悪くても魔王が弱体化するって思うもの。RPGならそういうイベントがありそうなアイテムだもの。


 そんで起きるのが、メッチャ強い特別な眷族の出現? しかも『郷愁の禍津像』は消えて、どっか別の所で復活する訳でしょ? これ本当の関連性に気づくの無理だろ。絶対に魔王の眷族を呼び出すアイテムだと思うもの。


 とまぁそんな事を、俺は『◇キャンピングカー』にフレンド・チャットで呼び出した関係者に伝えた訳ですよ。


 呼んだのはティムとバルタに、領主であるノルドとギルドマスターのモンテナ、それにタカーゲ商会の会頭であるゲンゴウと仲間のアレスです。シエラとドゥルクは最初からいます。


 そして全員の反応はと言うと。はい、みんな頭を抱えていますね。そりゃそうですよ。俺だってそうなったもの。


 そしてしばらく無言の時が過ぎた後、バルタがおもむろに手を挙げた。



「はいバルタ。どうしたの?」


「…………あまり言いたくはねぇですがね。あっしはその『郷愁の禍津像』ですかい? いくつか手に入れた事がありやすぜ…………」


「おおっ!! マジか!? なんだ持ってんのか? それとも破壊したのか!?」


「……………………売りやした…………。悪趣味な貴族が、高値をつけるもんで…………」


「……………………おぉぅ…………」



 ソッと眼を逸らすバルタ。まぁ、知らなかったらそうなるよね。そりゃ売るよね、あんな気味の悪い像に、高値をつける奴がいたら。



「…………正直に言うと、私も見た事がある。貴族の屋敷に招待された時に自慢された悪趣味な像が、たぶんそれだろう」



 そう言ったのはノルドである。ノルド自身は一ミリも欲しいとは思わなかったようだが、あまりに気味の悪い像だったので覚えていたようだ。


 その他にも、モンテナやゲンゴウもおそらくだが見た事があるらしい。でも手元に置いておいたのはドゥルクだけである。


 しかし、結構出回っているんだな、魔王の本体。誰もそれと知らずに飾ってるヤバイ状況な訳だが。



「…………ハァ…………。取り敢えず、『郷愁の禍津像』を持ってる貴族を洗い出すか。事情を話した所で、譲ってくれるとは思えんがな。どう思う、ゲンゴウ?」


「そうですな。ノルド様の懸念されている通り、むしろこの話を聞けば世界に一つの貴重品と手放さなくなるでしょう。良くても足元を見て吹っ掛けられますな。事情など話さない方が良いでしょう」


「ウム、まぁそうだろうな。何か手を考えねばいかんか。それとモンテナ、お前は王都のギルドマスターを訪ねて魔王と『郷愁の禍津像』の関係性を伝えて来い。あやつなら信用できる。言うまでも無いが、必ず本人に口頭で伝えるのだ」


「わかりました、必ず」


「私も一度王都に出向かねばいかんな。ガモン君、すまないが君の事を陛下に報告するぞ。ついては話に信憑性を持たせる為にガチャ装備を一つ貸してくれ。出来るだけ強くて見映えの良いのを頼む」


「見映えが良いものですか?」


「人は見映えの良いものを、より信頼するからな。それはどんな立場にいても変わらんものだ」



 そんな俗物的な話を聞いて顔をしかめる俺を見て、ノルドは苦笑した。



「そんな顔をするな。それに陛下は、見た目だけで決めるような方ではない。これは大臣達を説得する為のものだ」



 その後も、ノルドは次々と全員の役割を決めていった。さすがは辺境伯閣下だけあって、その采配に淀みは無い。


 そしてティムもまた、『モグラ』の『郷愁の禍津像』を持って、帰国する事が決まったのである。

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