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147回目 モンテナとゲンゴウの要望

『さて、お前さんらがワシに会いに来た大筋の目的はワシの書庫だとして。ゲンゴウが何を求めておるのかは想像つくが、モンテナの方が分からんのぅ。もしやその足か? 確かに書庫の中には研究用として残しておいた『フルポーション』や『エリクサー』があるにはあるが…………。自分で用意できないお主でもあるまいに』



 ドゥルクがそう言いながらモンテナを見ると、モンテナは首を横に振ってハッキリ違うと答えた。



「俺の足の事なら気にしないで下さい。これはもうこのままにすると決めてますので。俺はもう冒険者に未練はありませんし、この足だからこそ王都にもあまり足を運ばずにすんでますから」


「おや、治さないのはワザとだったのですか? 確か『竜の呪い』に掛かっているから治せない、という話だったと記憶しているのですが…………」



 モンテナの発言を聞いて、モンテナの隣に座るゲンゴウからツッコミが入った。ゲンゴウの事だから、モンテナにポーションの融通を打診した事があるのかも知れない。



「いや、それは嘘じゃないぞ。確かに竜から受けた攻撃の残滓でポーションが効かなかったのは本当だ。ただ、数年後にバルタが解呪してくれたってだけだ。その頃にはもう、この無いはずの足に愛着もあってな、このままでも良いかとなったんだ。多少不便だがな」


『フム。ではモンテナがワシに会いに来た目的はなんじゃ?』


「『ドゥルクの書庫』の安全性を確かめに来たんですよ。あの『書庫』の中には表に出せない魔道書も多いと聞いております。なのでギルドマスターとして『書庫』の安全性を見に来たのです」


『それなら問題ないわい。『書庫』の管理自体はワシがやっておるし、そもそもここにはワシのような幽霊でなければガモンの『フレンド』しか入れん。しかもワシにしたってガモンの許可無しには入れなんだ。ここには『キャンパー』もおるしのぅ、安全性という面ではここより安全な場所はちと思い浮かばん』


「そうですな。首尾良くガモン殿のフレンドになって潜り込んだとしても、ドゥルク翁やキャンパー殿を騙すのは至難の業でしょう。ガモン殿、もしこの中でフレンドを解除したらどうなるのですか?」



 ドゥルクの話に同意したゲンゴウからそんな質問が飛んで来た。



「え? …………どうなるんだろ」


『ワタクシがお答えします。この『◇キャンピングカー』の中から瞬時に追い出されます。そしてその瞬間には敵と認識されますので、攻撃用ドローンや防衛用ドローンに排除または捕縛されるでしょう』


「ああ、やっぱ追い出されるのか。キャンパー、その時は一応『捕縛』を優先で頼むぞ」


『かしこまりました』



 と言う訳で、モンテナの疑念は解消された事になる。その後モンテナとは、外に出せる魔道書についての『一冊のみの写本』を打診され、ドゥルクは俺が許可するならばと了承していた。ただし、その『写本』をするのはここに入れる者のみと条件も付けた。



『さて次はゲンゴウじゃな。だがゲンゴウについては解っておる。勇者のやつが遺した『コスメ大全』じゃろ?』


「さすがはドゥルク翁、話が早くて助かります。…………それで、どうでしょうか? ワシとしては是非ともこの機会に『コスメ大全』を譲って欲しいのですが…………」


『譲るのはダメじゃ! あれは勇者から託された物じゃからのぅ。…………と、言いたい所じゃが『書庫』もその中にある物も、今の所有者はガモンにある。ガモンよ、お主が決めるが良い。じゃが一つ頼みがあるのだが、あれは勇者のやつの『日記』としての側面があるので、多少は配慮して貰いたいのぅ』


「俺が決めていいの?」


『もちろんじゃ。あれはお主に報酬として渡した物じゃからな』


「……………………うーーん」



 どうだろう、心境的には渡したくない。ドゥルクの言う勇者は女性だったみたいだし、もっと言えば女子高生で召喚されて来たらしい。なら、『コスメ大全』は女子高生の日記の側面がある訳だ。絶対に見たらダメなやつである。そんなのを軽い気持ちで開いた日には『一生モテない呪い』を掛けられてもおかしくはない。見た事がトラウマになるまである。


 だけど『コスメ大全』、それはきっと有用な情報が入っている。化粧品の開発という面では。



「…………ドゥルクは中を見たのか?」


『ああ、勇者の許可を貰って一部だけの。中身が有用かどうかって話ならば有用じゃ。あの中の化粧品の開発にはワシも関わっておるし、かなりの研究成果じゃよ』


「……………………うん、でもやっぱり見せられないな。俺も見る気はない」


「…………うぐ、そ、そうですか…………」


「でも、中身が有用なら使わない手もない。どうかなドゥルク、口が堅くて信用できる女性、それも一人だけに見て貰って必要な所だけ写本して貰う…………ってのは?」


『う、うぅむ。…………それが誰かにもよるのぅ』


「考えているのはシエラだ。もちろんシエラにも、日記の部分はあまり読まないように言い聞かせる。この世界で『化粧品』を再現するなら、『コスメ大全』は必要だろう?」


『…………まあ、勇者のやつも『いつかアタシみたいなJKが来た時の為に、一冊くらい残しとくわ。ジジイ、よろしく頼むし』と言っておったし、それならば日記以外の部分が残るし、良いかもしれんの』


「…………! あ、ありがとうございます! これで開発が進みますわい!!」



 と言う訳で、ゲンゴウの要望には答える事になった。ただしこれはシエラ次第だ。シエラが嫌だと言うなら、この話は無しである。


 そして後でシエラにこの話をした所、シエラも化粧品についてはティムとよく話していたらしく、興味もあった事からこの話を受けてくれた。

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[一言] ドゥルク老師フレンドじゃないんですね。 フレンドじゃないのにキャピングカー入れるんだ…… 物品扱い?
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