140回目 ダンジョンの死
バルタによる『ダンジョン・コア』破壊の心得。
ダンジョン・コアは決して素手で触ってはならない。内在魔力量にもよるが、ダンジョン・コアの方が魔力が高かった場合、魔力を通してダンジョン・コアが一体化し、新たなダンジョンマスターにされてしまうからだ。
人間がダンジョンマスターになった場合、高い確率で『グール』や『バンパイア』になる。そうなると、もう人には戻れず自我も再構築されるため、元の人格すら死んでしまう。
環境が整っておらずダンジョンが形成されない場合でもモンスター化は起きる為、外で発生したばかりのダンジョン・コアを見つけたとしても、素手で触らないのは絶対条件だそうな。
「なので必ず、武器を使って破壊してくだせぇ。それと、ダンジョン・コアは武器によって破壊されると、そのダンジョンに則したアイテムに変わりやす。中々に便利なアイテムが多いですぜ。使えそうにないアイテムでも、研究材料にはなりやすんでギルドが買ってくれやす。まあ、時には物好きな貴族が買取に名乗りを上げる事もありやすがね」
そういやバルタが使っていた『呪われたナイフ』もダンジョン産だったな。…………呪われたアイテムとかいらないんだけどな。このダンジョン産って考えるとアンデッド系のアイテムとか出てきそうだ。…………アンデッド系のアイテムってなんだろ?
取り敢えず、クエスト的にこのダンジョンを無くす必要もあるので、ダンジョン・コアの破壊は絶対だ。
ダンジョンによっては有用なので破壊を禁止されている物もあるらしいが、それは余程に有用な場合に限られるそうだ。こんなアンデッドしか出ない上に共同墓地なんて場所に出来たダンジョンに用など無いのである。
「それじゃあガモン、さっそく破壊してくれるか?」
「え? 俺がやるの?」
「ガモンがやらないで誰がやるのさ。これはガモンの緊急クエストだろ?」
ティムに促されて、ダンジョン・コアの破壊は俺がやる事になった。不安しかない。俺は剣も持ち、念の為にと構えた盾の陰からダンジョン・コアに斬りつけて破壊した。…………かなり脆いなこれ、簡単に壊れた。
ダンジョン・コアはその場でホロホロと崩れて、床に落ちる寸前で一つに固まってアイテムと化した。
そこに現れたのは短い杖だ。グネグネと曲がった持ち手に小さな腕が四つ生えており、その手は一つの髑髏をガッシリと掴んでいる如何にも呪われてそうなアイテムだった。
「…………何これ」
「これが何かは『鑑定』しないと解りやせんが、たとえ呪われたアイテムだとしても触れただけでは呪われやせんので大丈夫ですぜ」
そう言ってバルタは簡単に杖を拾い上げた。流石は呪われた武器を使っているバルタだ、扱いに慣れている。
うーん、しかし見てるだけで不安になる杖だなこれ。一応、その『鑑定』ってのをして貰ったら売っちゃおうかな。ガチャアイテムなら倉庫に入れればどんなアイテムか解るんだけど、俺のスキルの倉庫はガチャアイテムじゃないと入らないからな。
「…………ん? 『鑑定』? そう言えば、前に回した装備ガチャでそんなアイテムが出ていたような?」
俺はスキルの倉庫を開いて、装備のアクセサリーの目録を見ていった。するとその中に☆3『商人の片眼鏡』というアクセサリー装備を見つけた。そのアクセサリーが持つスキルは『鑑定』である。
☆3『商人の片眼鏡』はアクセサリー装備なのでスキルはもう発現している。ただし装備の強化次第で鑑定の精度は変わり、強化なしだとアイテム名だけ、+1でアイテムの持つ効果の名前、+2で効果の情報などと鑑定できる精度が上がっていく。
これは四つあったので、さっそく合成。+3だと何処のダンジョン産かが表示されるようだ。
で、それを使って見た杖の詳細がこちらです。
『邪教の杖』
《生命への冒涜》
・瀕死の生物をアンデッド化し支配する禁忌の杖。その生物の魂は杖に囚われ、決して外に出る事はない。この杖が破壊されない限り。
・この杖を使ったアンデッド化に失敗した場合、杖は使用者の魂を永遠に奪い、使用者は不滅のアンデッドとしてさ迷う事になるだろう。
◇地下墓所ダンジョン・踏破報酬。
「……………………いらない」
なんて酷いアイテムだろう。呪われてるって言うか呪いをかけるアイテムだな。瀕死の相手をアンデッドにして使役するとか、どんなサイコパスだよ。本気でいらない。
と、そんな事を考えていると、突然俺達の足元に赤く輝く魔方陣が現れた。
「んっ!? な、なんだこれ!?」
「ああ、心配しなくていいですぜ。ダンジョンが死ぬんで、あっしらを外に追い出すだけでさぁ。そのままジッとしといてくだせぇ」
バルタに言われてジッとしてると、周囲の風景が上下に流れる様に切り替わり、俺達の頬を風が撫でていった。急に明るくなったので顔をしかめながら周囲を見ると、そこは共同墓地の外であり、近くには三階層の入口付近に出していた『◇キャンピングカー』も来ていた。
そしてすぐ側には、崩れた地下墓所の入口が残されていたが、この中はもうダンジョンでは無いようだった。
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