138回目 狙われる我聞
一二三書房様のWEB小説大賞で一次選考を突破しました。ヤッフゥーー!!
これも皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございます。
これからも楽しんで読んで貰えるように頑張りますので、引き続きよろしくお願いします。
レッサーリッチの初撃を何とか凌いだ俺達は、即座に反撃に出た。攻撃用ドローンも全て動員し、レッサーリッチを囲んで射撃を開始する。
五十台もの攻撃用ドローンに+4まで強化した弾丸シリーズを搭載しているので、なんならこれで蜂の巣にして終わりだ! なんて思っていたのだが、現実はそう甘くもない。
射撃が開始された瞬間、レッサーリッチの本体と思われるスケルトンが、下半身の頭蓋骨の山へと潜り込み、更には頭上に渦巻いていた瘴気の雲から大量のレイスが湧き出してドローンへと襲い掛かったのだ。
「クソッ! そう上手くはいかねぇか! キャンパー! レイスは任せるぞ! 一匹も逃すなよ!!」
『かしこまりました。目標をレッサーリッチからレイスへと変更。全て始末します』
その言葉と同時に、全ての攻撃用ドローンは標的をレイスに変えて動き出した。攻撃用ドローンの指示系統はキャンパーに一任してあるので、あとは任せておけば大丈夫だろう。
「レッサーリッチは俺達で仕留めるぞ! まずはあの頭蓋骨を剥がす!!」
「「任せて下さい! 合体魔法いきます!!」」
名乗りを上げて前に出たのは、魔術書を手にして詠唱を終了させたブームンとリナだ。二人の手に魔術書はあるのだが、今回はブームンが『獄炎の書』を手にしており、リナの手には『大瀑布の書』があった。
ブームンは持ち前の土魔法で作った岩の大玉を『獄炎の書』の炎でコーティングして火山弾を、リナは『大瀑布の書』で発生させた大量の水を自身の風魔法で圧倒的な質量を持った水竜巻へと変化させた。
「『ボルケーノ・ストライク』!!」
「『ウォータートルネード』!!」
ブームンの放った燃える火山弾とリナの放った質量を持った水竜巻が轟音と共にレッサーリッチに直撃し、頭蓋骨の山を打ち崩す!!
だが、流石に一撃では全て崩れず、レッサーリッチが頭蓋骨の山の中から放った衝撃波が頭蓋骨を周囲に爆散させ、火山弾と水竜巻を打ち消した。
しかも床に散らばった頭蓋骨は、砕けた骨を集めてスケルトンとして立ち上がる。
「スケルトンだ! 削るぞ!!」
「「おうっ!」」
俺達はそのスケルトンを一掃すべく攻撃を放つ! 俺達の放つ斬撃やボウガンの矢で次々と沈んでいくスケルトン。だがそれと同時に、俺はある違和感を感じていた。
…………どうも見られている気がするのだ。宙で攻撃用ドローンとやりあっているレイスも、地上で仲間達から攻撃を受けているスケルトンも、そしてレッサーリッチを内包している頭蓋骨の山もだ。それらの持つ視線、それが俺一人に集中している気がするのだ。
その、まとわりつくような視線に気持ち悪さは覚えるが、今は戦闘中だ。俺は戦いに集中する事で、無理やりその視線から意識を逸らした。
「合体魔法を放ちます!! 『ウォーター…………』えぇっ!? ま、魔法が…………!!」
『カタカタカタカタッ!!』
スケルトンの討伐が粗方終わり、タイミングを見計らっていたリナが再び水竜巻を放とうとしたが、大量の水が風と共に舞い上がった瞬間、その水と風が空中に現れた二つの頭蓋骨に吸収された。
水と風を吸収したそれぞれの頭蓋骨の眼と口に炎が燃え上がり、頭蓋骨はカタカタとまるで笑っているかのように音を立てる。その姿は、このボス部屋に入った時に俺達の魔力を吸収した、レッサーリッチの背後に浮かんでいた頭蓋骨と同じ物に見えた。…………って事は!!
「攻撃が来るぞ! 皆、備え…………くぅっ!?」
「ガモン!?」
「旦那!?」
再びこのボス部屋に入った時の攻撃が来るのかと警戒した瞬間、俺は自分の中からゴッソリと魔力が抜かれたのを感じ、急激に力を失った脱力感に襲われ、床に膝をついてしまった。
そして目眩まで起こした頭を振って顔を上げると、そこには水と風の魔法を吸収した二つの頭蓋骨が、俺に向けて大きく口を開けていた。
「嘘だろ…………!」
『カタカタカタッ!!』
「ガモン様!!」
目の前に浮か二つの頭蓋骨から魔法が放たれる瞬間、俺と頭蓋骨の間にシエラが割って入り、『七星の盾』で魔法を防いでくれた。
そしてその直後には、アレスの稲妻をまとった斬撃が頭蓋骨の片方を切断し、もう片方の頭蓋骨はティムの氷の矢に貫かれて凍りついて砕け散った。
「大丈夫ですかい旦那!!」
「ガモン様! 無事ですか!?」
「あ、ああ。大丈夫だ。助かったよシエラ…………!」
膝をついたままの所をバルタに助け起こされながら、俺はシエラに礼をいった。…………マジで怖かった。死ぬかと思ったもの。
「しかし何ですかい今のは? 明らかに旦那をピンポイントで狙ってやしたぜ」
「俺だけ魔力を取られたもんな。…………何か恨みでも買ったかな」
「冗談言ってる場合じゃありやせんぜ。一旦、下がりますぜ!」
そう言うやバルタはヒョイっと俺を担ぎ上げて部屋の入口近くまで飛ぶように走った。…………俺、そんなに軽くもない筈なんだけどな。バルタには関係ないらしい。
ちょうどその時、キャンパー率いる攻撃用ドローン軍団がレイスの討伐を終えたらしく、その標的がレッサーリッチに変わった。攻撃用ドローンの数が見るからに減っている事から、レイス軍との戦いは結構な激戦だったようだ。
そしてレッサーリッチにも、変化が起きる。レッサーリッチの本体を覆っていた頭蓋骨の山が四方八方に向けて弾け飛んだのだ。その影響で、飛んで来た頭蓋骨の直撃を受けた攻撃用ドローンがまた激減した。攻撃用ドローンはその性質上、物理攻撃に弱い。スピードはあるのだが耐久力が無いのだ。
『オオォォォ……………………』
「…………あれが本体か? 頭蓋骨の上にいた時とは姿が違うな…………」
頭蓋骨の山が消えた後には、一体の大柄なスケルトンが立っていた。その両手には巨大で丸みを帯びた『山羊の角』のような鈍器を持ち、その頭は山羊の物と思われる頭蓋骨に変わっていた。
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