136回目 地下墓所ダンジョン・三階層
俺がガチャを回し、シエラ達がドゥルクの授業を受けている間、ティム達は地下墓所ダンジョンへと先行して潜っていた。
緊急クエストの期限まで残り一日半。期限切れによって起こるのが、ダンジョンから溢れたモンスターが大挙して街を襲うスタンピードである以上、ギリギリまで時間を使う訳にはいかない。ティム達には、あらかじめ一階層と二階層のアンデッドを間引いて貰っていたのだ。全ては、今日中に緊急クエストを終わらせる為である。
「行くぞ! 気合いを入れろ!!」
「「おうっ!!!!」」
ダンジョンの入口で合流した俺達は、そのままの勢いで地下墓所ダンジョンの一階層と二階層を駆け抜けた。ティム達の働きのおかげでスムーズだ。
そして三階層へと降りる階段に差し掛かった所で、ブームンとリナが魔法の詠唱を始めた。
その二人の手には☆4のガチャ装備である『大瀑布の書』と『獄炎の書』が握られ、開かれている。土魔法使いであるブームンと風魔法使いであるリナが、それら『魔術書』を使うと言うのはどういう事か。
単に二属性の魔法を同時に使うというだけではない。その真骨頂は、組み合わせである。
「合体魔法! 『マッドスワンプ』!!」
「合体魔法! 『ファイアストーム』!!」
三階層に入った瞬間にブームンとリナから放たれる二つの合体魔法!!
ブームンの『マッドスワンプ』は、ダンジョンの床を広範囲の泥沼に変えてスケルトンやゾンビを飲み込み、リナの『ファイアストーム』によって発生した炎をまとった竜巻は、滑るように移動しながら地上のアンデッドを巻き上げ、空中を漂うレイスをも一掃していった。
「敵は崩れた! 今の内に畳みかけるんだ!!」
ティムの号令により全員から放たれる攻撃が、三階層にひしめくアンデッドに突き刺さっていく。
「シエラ! 結界を頼む!」
「はい!! 『ホーリーフィールド』!!」
ある程度のアンデッドが一掃された所で、シエラに『聖属性』の結界を張ってもらう。
元々、シエラには『聖属性』の素養は無く、このような聖属性の結界魔法など使えなかった。それを使えるようにしたのはドゥルクだ。ドゥルクはシエラの体に『聖属性』の魔道回路を刻んだのだ。
俺にはよく解らなかったが、それはやって貰った本人であるシエラが呆れる程の荒業らしい。
しかし何にせよ、アンデッドに対しては聖属性の魔法が一番効く。これで安心して『◇キャンピングカー』を出せるのだ。
『攻撃用ドローン部隊、出ます』
そして『◇キャンピングカー』が出ると同時に、五十台もの攻撃用ドローンが飛び出し、アンデッド達への射撃を開始した。
◇
地下墓所ダンジョン・三階層での攻防は、俺達の思っていた以上に順調に進んでいる。
増やしたドローンでの攻撃も効果的なのだが、やはりドゥルクによって強化された魔法使い達の活躍が大きい。
そして更に、俺達にはドゥルクの指導によって作られたアイテムもある。
これはゾンビが落とす『ロウソク』スケルトンが落とす『骨』レイスが落とす『水晶』、この三つのドロップアイテムを錬金術によって合成することで出来る『さまよう者の漁火』。
見た目は真っ黒い骨のそれは、ちょうどサイリウムペンライトのように軽く折り曲げる事で発光する。そしてそれを投げると、その光を見たアンデッドは吸い寄せられるように集まり、光が続く間は動けなくなる。
この光を、さらに幻術士であるアナが使う幻術によって空中に投影すると、それを目にしてアンデッドまで動けなくなる。これがかなり効果的で、動けなくなったアンデッドを攻撃用ドローンが取り囲んで一斉射撃で仕留めるのだ。
「…………って言うか、ドゥルクの貢献具合が凄いんだけど。これ、攻略がメチャクチャ楽になったんじゃないか?」
『…………『そう思ってくれるならば嬉しいの、報酬は書籍ガチャでの新たな本とスィーツで良いぞ』と、ドゥルクより伝言を預かりました』
「…………その程度で良いなら全然安いよなコレ。これからもよろしくって言っといて」
『承りました』
ブームンとリナの合体魔法や、シエラの聖属性魔法は魔力の消費が激しい。なので時おり後ろに下がって『魔力回復ポーション』を飲んでいる。これは『ガチャ・マイスター』の『ポイント・ショップ』で交換した物であり、回復量は同じだが市販の物より量が少なくて飲みやすいと好評である。
だけど飲み物だから当然腹に溜まる。あまり飲ませる訳にはいかないから、そこは俺達でカバーするのだ。
具体的には、魔力はあるが戦闘ではほとんど使わないメンバーに『魔術書』を渡して使わせる戦法である。
例えばザッパが『大瀑布の書』で霧を発生させ、そこにアレスが『雷撃』を撃ち込む事で拡散させる方法や、ティムが『氷魔弾の弓』で凍てつかせた敵を『獄炎の書』を使った俺が炎の矢で撃ち抜いていく、などである。…………うん。魔力が足りなくて短い時間しか出来なかったけど、炎の矢を結構撃てたので、俺は満足です。
そうして乱戦を繰り広げること数時間。俺達はとうとう、ダンジョンマスターのいるボス部屋にまでたどり着いたのだった。
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