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133回目 ドゥルクの書庫、おまけ付き

 ドゥルクがストーリー・サブクエストの報酬だと言って指し示したのは、だいたい手の平サイズの鍵穴だった。


 それはドゥルクの柩が安置された部屋の奥の壁に付いている…………ように見せかけて宙に浮いている。


 いや、これはおそらく最初は壁に付いていたのだろう。しかし、その後ろの壁は大きく破壊された跡があり、その抉れた壁の前方に鍵穴だけが浮いているのだ。…………本当にナニコレ? どうなってんの?


 近づいて鍵穴を覗いてみる。手の平サイズの鍵穴は向こう側が簡単に覗けるのだが、その奥にはギッシリと本が詰まった多数の本棚や豪華な机に椅子。さらには様々な道具に財宝がオレンジ色の光に照らされていた。


 何だか凄い。見るからに宝の山って感じの書斎だ。見てるだけで凄くワクワクする。



「え? まさかこれが『ドゥルクの書庫』なのか?」


「そうだよ。ついでに言うなら、これと同じ鍵穴はドゥルク老師の自宅や国の魔導研究所にあるドゥルク老師の研究所にもあるよ。誰も開けられないただの鍵穴として」


「ええ。あっしにも、どうにかして開けられないかって解錠の依頼が来た事がありやすぜ。しかし誰も開けられねぇってんで、放置されている遺産なんでさぁ」



 俺の質問に答えたのはティムとバルタだ。バルタがその解錠を依頼された時は、すでにバルタはカラーズカ侯爵家に雇われていた為に、ティムの短期留学という形でジョルダン王国に招かれ、鍵穴を見たらしい。



「…………それで、俺がこれを貰えるの? いやメッチャ欲しいけど、いいの? って言うか、どうやって開けるの? コレ」


「…………うん。実は鍵だとされる物はもう解っているんだよ。そこにある柩に眠るドゥルク老師の遺体には、胸に大きなアミュレットが埋め込まれているんだけど、恐らくはそれが鍵なんだ」


「ただ、そのアミュレットを外そうとすると、恐ろしい勢いで魔力が吸われるんでさぁ。魔力が高めの奴は大丈夫ですが、低い者だと即死する程の勢いなんで誰も手を出せねぇんで」


「だから、僕達もこの瞬間を待っていたんだ。…………ドゥルク老師。あのアミュレットが、この鍵穴の鍵なんですよね?」



 ティムの質問に、それまで空中でフヨフヨと浮かびながら様子を見ていたドゥルク=マインドが降りてきて、ニッコリと笑った。



『…………まったくもって的外れじゃ』


「「ええっ!?」」



 うわっ! 恥ずかしい! これは恥ずかしい!! 謎は全て解けてるみたいなテンションだったのに全然違うとか、ティムとバルタの顔が赤くなるのも無理はない。だって見ていても恥ずかしかったもの!!



『あれはただ魔力を溜め込むだけの魔道具じゃよ。儂が使う為だけに調整したから、他の者が触れると魔力を吸われるというだけじゃ。まあ、知識を溜め込む機能もあるから、書庫の一部と言えばそうかも知れんが、鍵ではないぞ』


「そ、そうなんですか…………。えっと、では鍵は?」


『書庫の鍵は儂自身じゃよ。昔、勇者に聞いた『生体認証』と言う物にヒントを得ての。書庫の鍵をスキルとして体に刻んであるのじゃ』


「スキルとして!?」


『そう難しい話では無いわい。魔道書を使って魔法を覚えるのと大差ない。長年の研究によってスキルの回路がどのように刻まれるかも儂は熟知しておるからの。ガモンよ、両手を出すがよい』



 俺はドゥルクに言われるままに両手を出し、ドゥルクの幽霊の手が重ねられると光を放ち始めた。そして光は徐々に強くなったかと思えば一際大きくなった所でプツリと消えた。



『…………なんじゃこれは!? スキルの回路を刻む隙間が無いではないか、どういう事じゃ!?』


「あーー…………。それは多分、俺の持つスキル『ガチャ・マイスター』のせいですね」



 俺は自分が普通の方法では他のスキルや魔法を覚えられない事をドゥルクに話した。ドゥルクはそれを聞くと、口を開けたまま絶句していたよ。



『ガモンが勇者である事は察しておったし勇者のスキルが規格外なのも解っておったが、それほどの規模のスキルは聞いた事がないのぅ。…………しかしこれは困った。スキルが与えられんでは鍵を渡せぬのぅ』



 ドゥルクはその場で浮き上がってフヨフヨと漂いながら少し考え、『…………そうしようかの』と何やら納得すると、再び俺の前に降りて来た。



『スキルを刻めないのでは仕方がない。儂が書庫と一緒に付いて行くわい』


「え?」



 ドゥルクはそう言うと、何やら呪文を唱えて壁際に浮いていた書庫の鍵穴を消した。え、持ち運び出来るのこれ!?


 その疑問をドゥルクにぶつけると、実は『ドゥルクの書庫』は、ドゥルクが独自に創り上げた『小さな異世界』であるらしく、全ての鍵穴はひとつの世界に通じているただの入口だそうだ。



『まあ、もう儂の家や研究所に鍵穴がある意味もないしの、そっちも消しておいたわい。完全な引っ越しじゃな』


「それ大騒ぎになるんじゃ…………」



 と、ティムやバルタを見ると驚愕した顔で硬直していた。ああ。なるんだな、大騒ぎに…………。



『引っ越し先はあの『◇キャンピングカー』で良いぞ。なんでもお前さんのスキルに仕舞われておる時は生き物は入ってられないと聞いたが、儂なら問題ない筈じゃ。あの中に移住するとするわい』


「…………お、おう」



 妙にウキウキした様子でそんな事を言うドゥルクに、俺は頷くしかなかった。書庫と一緒に本人まで付いてくるとは思わなかったが、どうなんだろコレ。


 …………いやでも、大魔導師ドゥルク=マインドが味方についたってのは、凄い事だよな。…………幽霊だけど。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 仲間枠なのかな?
[一言] こうなると思っていた。ドゥルクの好奇心と食欲を満たすキャンピングカーがあれば、そこに住みたくなるわなぁ。専属の魔法専門家、アドバイザーと考えて飯を奢るしかないのだろう。
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