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12回目 スキル解放

「でりゃ! そりゃ!!」


『ギャブッ!?』


『ァベンッ!?』


「そうそう、その調子ですぜ。だいぶ動けるじゃねぇですか」



 まさかのピノンが出て来た☆3ショックの鬱憤を晴らすように、俺はバルタの指導の元でゴブリンと戦っていた。


 ゴブリンは身長が1メートルにも満たない、ガリガリに痩せた緑色の肌をした小鬼で、これもスライム同様イメージ通りだ。


 身につけているのは木の棒と、見るからに粗くてボロボロの布で、動きは遅く、力も弱い。ゴブリンには様々な個体もいるらしいが、今回の相手はごく普通のゴブリンである。


 ゴブリンと戦うにあたっての注意点は、動きをよく見る事と、回り込まれないようにする事。ゴブリンは弱いが、基本的に群れで行動するので、隙を見せてはいけない。例え一匹に見えても、仲間がすぐ側にいる事が多いそうだ。


 確かに今回も、二匹のゴブリンと戦っている間に増援が来た。ただしそれは、バルタが土の魔法で作った石のナイフを投げて仕留めてくれたが。



「…………ふう。モンスターと解ってはいても、人型ってのはやっぱ思う所があるな。凶悪な顔をしてるから仲良くしようとは思わないけど」


「ああ、僕も最初はそうだったよ。だから大抵の貴族は、小さい頃からゴブリン狩りに連れ回されるんだよ。戦に駆り出された時に人間相手でも戦えるように人型の魔物で慣れとくんだ」


「なるほど。ティムそうだったのか?」


「うん、まあ。僕の場合は、主に魔法を使ってだったけどね」



 そんな会話をしつつ、俺はゴブリンから着ている布と木の棒を剥ぎ取った。ゴブリンの上位個体なら宝飾品が、ゴブリンの巣までいけば溜め込んだお宝がある場合も多いらしいが、今回は普通のゴブリンなので剥ぎ取れるのは持ってた木の棒と汚い布だけである。



「こんな木の棒と汚い布を何に使うんだ」


「ゴブリンの集めた木の棒は、いい炭の材料になりやすね。汚い布の方は魔法で綺麗にしてトイレの尻拭きでさぁ」


「…………マジかよ」



 え、これで尻を拭くの? 魔法で綺麗にするとは言ってたけど、病気になりそうで嫌なんですけど。



「ガモン、倒したゴブリンは一ヶ所にまとめてくれ。焼却するから」


「お、おう。解った」



 俺が集めて重ねたゴブリンの死体を、ティムが魔法で焼却するのを横目に、俺はスキルの画面を出して熟練度を確認した。


 すると、ひのきの棒の熟練度が25になっており、鍵が掛かっていたスキル欄が光っていた。そして俺がそのスキル欄をタップすると鍵が弾け飛び、そこにはひのきの棒のスキルが解放されていた。


 ひのきの棒のスキル名は『気絶』。その説明を読むと、『意識外からの一撃により、6割の確率で気絶させる。もしくは死角からの一撃により、2割の確率で気絶させる』とあった。


 …………ほほう? 100%では無いけど、相手の意識を奪うスキルか。しかも、死角からって、気づかれていても背後をとれば2割で気絶させられるのか? けっこう強くないか? 五回に一回なら、けっこう起きるだろ。



 そして、このスキルの解放には続きがあった。この後もスライムやゴブリンと何度か戦い、ひのきの棒の熟練度が40に達した時、スキルの説明が変化したのだ。


 なんと、『意識外からの一撃により、7割の確率で気絶させる。もしくは死角からの一撃により、3割の確率で気絶させる』となったのだ。


 …………ひのきの棒の熟練度の上限は20。そして一度武器合成を行ったらその上限は40になった。ここから単純に考えるなら、あと三つで上限は100になるはずだ。


 そしてスキルの上げ幅も同じなら、熟練度を100にした時のスキルは、おそらく『意識外からの一撃により、確実に相手を気絶させる。もしくは死角からの一撃により、6割の確率で気絶させる』になる筈だ。


 ガチャの確率からして、例えひのきの棒でも五本集めるのは大変そうだが、集められたなら、結構なチートアイテムになりそうだ。


 って言うか、☆3でこの性能が手に入るなら、☆4や、まだ見ぬ☆5はどうなっちゃうんだ?



「…………ってスキルなんだけど」


「…………本当に? こんな木の棒に、そんなスキルが宿っているの? それって『魔剣』って事でしょ?」


「……………………」



 馬達に水を飲ませる休憩の時に、ひのきの棒に解放されたスキルの話をすると、ティムは素直に驚き、バルタは真顔になって考え込み始めた。


 ティムはいいけど、バルタの反応がなんだか怖かった。



「…………旦那。スキルの説明にあるのは、『一撃』ってだけなんですね?」


「え? あ、うん」


「検証しやしょう。その検証結果によっちゃあ、とんでもないスキルですぜ。旦那の読みが当たっていて、もし敵を絶対に気絶させる事が出来るようになるなら、その木の棒は『国宝級』って話になりやすぜ」


「そんな大袈裟な」


「まあ何事も、検証してからでさぁ」



 俺はその後、バルタが自身のスキルを使って見つけたモンスターと、次々と戦う事になった。それもバルタの指示に従ってだ。


 そして、その結果として解ったのは、『気絶』スキルは俺が敵を認識してない限り発動しない事。軽く当てる程度の攻撃では発動せず、それなりにダメージを与えられる攻撃に付与される事。


 最後にスキルの発動は、ひのきの棒さえ装備していれば他の武器にも乗る事だった。つまりは、思いっきり投げた石にでも、『気絶』が乗るのだ。100%になるまで育てれば、不意打ちが高い確率で成功する、とんでもない性能を秘めていたのだ。


 ひのきの棒、チート装備やんけ!?

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― 新着の感想 ―
[良い点] めっちゃいい武器ですね!
[良い点] チート装備だけど、地味だ。 石つぶて投げたら無敵かも? [一言] じわじわ〜と面白くなってきた。
[気になる点] いちいちスキルを報告するのに 違和感がある 知り合いに一億円を持ってると話して 殺されて金奪われてたアホと同じレベルに見える
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