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119回目 タミナルの共同墓地

 ギルドマスターのモンテナと話をつけた俺達は、街の北門を抜けて共同墓地へと向かった。あまり遠い訳では無いのだが、なるだけ早く行くために『◇キャンピングカー』での移動だ。


 共同墓地は、死霊系のモンスターの出現率が高い。だから遺族達もおいそれと行ける場所ではなく、依頼を受けた冒険者以外は、共同墓地に行ける日が決まっているらしい。


 それは毎月の中で三日だけだ。毎月のゼロのつく日、その三日だけは共同墓地の中央にある塔の結界が発動し、共同墓地の中が安全になる。それを毎日やらない理由は、結界を発動するための魔石の消費量がエグいからだそうだ。


 なんでも、冒険者ギルドが依頼で集めたり買い取ったりした魔石の十日分が、その三日間で消費されるそうだ。多くの冒険者が売りに来るであろう魔石を十日分とは、確かにエグい。


 まあでも、一般人が気軽に来れないってのは助かる。それは突然現れたダンジョンに巻き込まれる人がいないって事だからな。救助活動をしている間に、さらに救助者が増えるなんて笑えない。だがこの状況なら、ギルドに共同墓地での依頼を停止して貰った今、新たに共同墓地に来る人間はいないだろう。


 そして共同墓地まで数メートルまで来た所で、『◇キャンピングカー』を降りて倉庫に収納すると、俺は共同墓地の中心あたりから空に伸びている塔に目を向けた。



「あれがその結界を張るって言う塔か。なんか灯台みたいな造りだな」


「それはアレを初めて見た人が誰でも思うやつだね。本の挿し絵なんかにある灯台と同じ形をしているから、現地の人にも『墓場の灯台』って呼ばれているらしいよ」



 おおぅ、『墓場の灯台』か。それ自体が小説のタイトルみたいだな。俺はティムのそんな話を聞きながら、スキルから☆4『導きの龍水晶』を取り出した。


 俺と縁のある人物の場所を指し示すと言うこのアイテムは、今は確かに共同墓地の方を指している。


 と言うかコレ、いま指し示す矢印の先が微妙にブレてんだよな。タミナルの街でこれが共同墓地を指していたのを見た時は、『ああ、やっぱりザッパ達が縁のある人達なのか』と思ったが、どうやら同じようにダンジョンに巻き込まれている、もう一つのパーティーもそうらしい。



「ダンジョンになったのは地下にある施設だったな」


「地下施設となると『地下墓所』ですね。共同墓地の西側にある施設ですわ。案内します」


「ああ、頼むよシエラ」



 地下墓所というのは、地球で言う所の『カタコンベ』であるようだ。埋葬方法は地球とは違うようだが。


 こちらの世界のカタコンベは、頭と体を別々に火葬し、焼け残った頭蓋骨を壺に納めて体を焼いた灰を隙間に詰め込んだ物を保管している。どういう宗教観なのかは知らないが、この国では街と縁の薄い者や外から来た者を弔う方法として一般的であるらしい。



「うん? なんか変な造りだな。シエラ、地下墓所は西だろ? 直接は行けないようになってるのか?」


「はい。地下墓所は多くの冒険者も埋葬されているのですが、そのせいかモンスターの出現率が一番多いのです。なので一番奥になるように配置されているのですわ」



 共同墓地は街ほどではないが塀で囲われている。そして南側の入口から入ると、西側は壁で塞がれており、東か北にしか行けなくなっている。


 それも北への道は塔に繋がっているだけであり、そこにしか行けない。つまり俺達が西側に行くためには、円を描くように東からグルリと回り込む必要があるようだ。


 なので俺達はまず東に向かったのだが、そこにあったのは貴族達の墓所だった。凝った造りの墓石が並び、中には鎧やら剣やらを模した墓石もあった。


 そしてその中央には、ひときわ目を引く大きな石像が立っていた。それはひと目見て『魔法使い』だと解る三角帽子にローブを纏った長い髭の老人の石像であり、右手に持った杖を天に掲げて左手には本を抱いていた。


 それが誰の石像で、そこが誰の墓なのかなんて聞かなくても解る。きっとあれが、大魔導師『ドゥルク=マインド』なのだろう。


 俺達は、誰が何を言うでもなくその場で立ち止まり、ドゥルク老師の墓に向かって黙祷を捧げた。それは一瞬程の短い時間だったが、たぶん全員がドゥルク=マインドという英雄に敬意を払った結果だろう。


 そして貴族の墓所を抜けて北側の一般的な墓所に来た辺りから、共同墓地にはモンスターが現れ始めた。出て来るのはスケルトン。それもただのスケルトンではなく、小柄で凶悪な人相の骸骨や、頭だけが人の物ではない骸骨が出て来たのだ。



「おっと、どうやら本当にダンジョン化してやすね。『ゴブリン・スケルトン』に『コボルト・スケルトン』でさぁ。どっちも共同墓地には出ないはずのアンデッドですぜ」


「ゴブリンとコボルトのスケルトンなんているのか…………って早いな!」



 俺が出て来たスケルトンに対してボウガンを取り出そうとした時には、すでにスケルトン達は粉々に砕けていた。スケルトンと見るやバルタが☆3『スリングショット』で仕留めてしまったのだ。



「まだまだいっぱい出やすから、心配しなくても旦那達の出番もありやすぜ。それと、今使ったのは強化してない『衝撃の弾丸』ですぜ。ザコならこれで十分って事でさぁ」



 バルタの言う通り、それからも西の地下墓所に行くまでに何度もスケルトンは出て来た。ただし、その全てがバルタとティムにアレスの三人で片付けてしまったので、結局俺が戦う事は無かった。


 …………いやいや、まだダンジョンにすら入ってないからね! 俺の出番はこれからですとも!

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