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117回目 大魔導師ドゥルク=マインド

「…………ありゃ。…………あぁそっかーー。出来ないかぁーー…………」



 翌日、キャンパーにもっともな事を指摘されて冷静になった俺は、頭を冷やす為に自室で一人になり、装備の検証をしていた。


 緊急クエストとストーリー・サブクエストの件については、ティムとバルタに『フレンド・チャット』で連絡を取った。二人は準備をしてから寮まで来てくれると言ってくれた。マジで助かる。持つべきものは友人である。


 それはいい。それはいいのだが、空いた時間に『○○の弾丸』シリーズを強化していて問題にぶち当たった。


 弾丸シリーズの属性付与はその弾丸限定のものであり、他の武器に付与できない。言われてみれば当たり前の話だが、ガチャ装備のチート加減でなんとかなると思っていた俺が甘かった。


 となると、トルテにもボウガンを渡すしかないか。属性付きの武器は、あとは杖くらいしかないしな。さすがに杖じゃなぁ。


 俺は試しに『灯火の杖(+4)』を出してみた。これのスキルはそのまま『灯火』。杖の先に野球ボール程度の火球を出す魔法だ。これは既に熟練度も100になっているので、俺はスキルをセットさえすれば、指の先にでも火球を出せるようになっている。


 ただこの火球、杖の先を振って投げる事も出来るんだけど、そうすると二・三秒で燃え尽きるんだよな。杖の先にある分には消えないから、松明としては使えそうだけど、戦闘用にはならない。


 やっぱりボウガンだな。あれなら弓が使えない俺達でも何とか使えそうだし。味方を撃たないようにさえ気をつければ、戦力になれるだろう。



『マスター、お茶を淹れました。二人が到着したようですし、休憩されてはどうですか?』



 弾丸の合成や装備の検証をしている間に結構な時間が経っていたらしい。キャンパーがお茶を持ってくるついでに、ティムとバルタが寮についた事を教えてくれた。もうすぐ、シエラに連れられてやって来るようだ。



「ガモン様、ティムとバルタさんが到着しました」


「おおっ、ティム! バルタ! 来てくれて良かった。助かるよ!」



 シエラに連れられて部屋へと入って来た二人は、一緒に旅をしていた時の装備に身を包んでいた。俺達と一緒に行ってくれるようで一安心だ。



「ガモン! 緊急クエストが出たって聞いたぞ! 詳しく聞かせてくれ!」


「ええ、あっしにも聞かせて下せぇ。緊急ってのは穏やかじゃねえですからね」


「ああ、もちろんだ。取り敢えず現状を説明するよ」



 俺は二人に緊急クエストの内容とストーリー・サブクエストの内容、そして仲間であるトルテの兄貴がいるパーティーがそれに巻き込まれている事を二人に説明した。



「大魔導師ドゥルク=マインド!? 本当にそう書かれてるんですかい!? あの爺さんが死んだってのは聞いてやしたが、あの爺さんからの依頼なんですかい!!」


「知ってるのか? バルタ」


「有名も有名ですぜ。かつての勇者パーティーの一人にして数百年を生きた大魔導師ドゥルク=マインド。何十冊と本を出してやすし、魔導学園の学園長も百年はやってたバケモンでさぁ」


「うん、ドゥルク=マインドなら僕も知ってる。一度だけ顔を合わせた事もあるけど、忘れられない位に凄い人だったよ。魔力の塊みたいな人だった。本人はのほほんとしたお爺さんなんだけどね」


「そんなに凄い人なの?」


「ええ。あっしも依頼の関係で何度か組んだ事がありやすが、あの爺さんがいるだけで安心感は凄かったですぜ。文字通り『万能』。なんでもかんでも魔法で済ましちまう爺さんでしたぜ」


「へぇーー。…………え? そんな人が今は埋葬されてんの?」



 話を聞く限り絶対に死なない爺さんだと思うんだけど、なんで死んだんだこの人?



「その死に様も壮絶でしたぜ。南のガンガルド王国って国で反乱が起きて、南一帯が不安定な状況ってのがつい最近まで続いてたんですがね? そのせいで兵も冒険者も数が足りなくなったんでさぁ。何せ、金を払うもんが居ねえもんで、人が離れていったんでさぁ」


「近隣諸国も安定はしていたけど余裕は無かった。だからある程度難民の受け入れはしたけど、その後は関わらないように見て見ぬふりをしていたんだ。…………そのツケが、数年前に爆発した」


「南の国にある幾つかのダンジョンで、ほぼ同時期にスタンピードが起きたんでさぁ」



 ティムとバルタの話によると、そのスタンピードは本当に世界が滅びてもおかしくない規模だったらしい。


 何百万とダンジョンから溢れ出すモンスター。その危機を事前に察知して防いだのがドゥルク=マインドと言う大魔導師だった。



「ドゥルクの爺さんは、各国にその危機を事前に伝えていたんですぜ? でも、腐敗したり緩みきっていたギルドや政府は、それにマトモには取り合わなかったんでさぁ。スタンピードが起きたとしても、そこまで酷い事態にはならないと、楽観視して大した金も兵も出さなかったんでさぁ」



 だがスタンピードは実際にドゥルクが訴えた通りに、いや、それすらも越える規模で起きた。ドゥルクが事前に準備していた結界の中は数百万ものモンスターで埋めつくされ、それを目の当たりにした各国や冒険者ギルドは世界の終わりを覚悟した。


 だが、それは防がれた。ドゥルク=マインドという世界最高峰の大魔導師が、自らの全魔力とその命を対価にして放った極大魔法によって、スタンピードを起こしたダンジョンごと、この世から消滅したのだ。


 髪の毛の一本、爪の先に至るまで干からびたドゥルク=マインドの遺体だけを残して。

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