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113回目 達成報告

「なあアレス。本当に良かったのか? まず親父さんにあって、話をしてから決めても良かったんだぞ?」


「いえ、大丈夫です。むしろ父さんなら、いいから役に立って来いと言うはずですから。俺はまず、ガモン殿達に受けた恩を返しますよ」



 アレスの家族であるアレマーさん達とは、ティムの屋敷で別れた。キャンパーに預けていた荷物も全て渡し、後はティムにお任せしたのだ。


 だが一人だけ、アレスだけは俺達と一緒に冒険者をやると言い出し、家族と別れて俺達について来た。家も畑も失い、村からも追い出された身の上ではあるが、家族の生活を守るために働くと、アレスは冒険者となる決意を固めたのだ。アレスは本当に心身共にイケメンである。


 …………まぁとは言っても、帰る家に家族はいる訳だけどね。


 そうして冒険者ギルドに向かっていた俺達だったが、宿屋が並ぶ区画に来た辺りで、トルテが立ち止まった。



「なあガモン。今回の依頼の報告って、長くなるよな?」


「そりゃ長くなるだろうな。俺としてはとてもEランクの依頼とは思えない物を掴まされたから、文句の一つも言いたい所だしな」



 まあ、アカメアリの巣の近くに『ダンジョン・コア』が出来て、それをアカメアリの女王が砕いてクリムゾン・アントの女王に進化するなんて、誰も想像だにしなかっただろうが、こっちは死にかけてるし大赤字も喰らっている。


 クレームの一つや二つを上げて依頼料をふんだくる程度の事は許されるはずだ。



「じゃあ悪いけどさ、ちょっと抜けていいか? タイミング的に、今日なら兄ちゃん達は休みのはずなんだよ」



 何だろう。アレス達を見ていて兄弟が恋しくなったのだろうか。トルテはちょっとブラコン気味だからな。


 兄ちゃん大好きなトルテからしてみれば、アレス達の兄弟仲が羨ましく感じたのかも知れない。フッ、なんだかんだ言って、トルテもまだ子供だな。



「いいぞ。俺達も報告が終わったらもう帰るし、報酬は分けて取っとくから今日はそのまま帰ってもいいぞ?」


「そうか? じゃあそうするよ。明日、寮まで行くからさ! じゃあな!」


「おう、お疲れーー」



 兄ちゃんのいる宿に走っていくトルテを見送って、俺達は冒険者ギルドへと向かった。


 そして冒険者ギルドに着くと、いつも俺達の相手をしてくれるミミナがいる受付に行き、依頼完了の証としてヘテナ村の村長から貰った割符と子細の書かれた封筒を提出する。


 ミミナは一瞬、トルテが居らずアレスがいる事に眉を寄せ、さらに俺の右肩の上辺りに浮いている『防衛用ドローン』を見て目を見開いたが、すぐに元の表情に戻って俺達の相手をしてくれた。プロだな。


 割符は何やら魔方陣のような物が刻まれたコインで、それをギザギザに割ってある物だ。ミミナはそれを受け取ると、対になっているであろう割符を取り出した。


 パッと見て、ギザギザの具合からその二つが合わさると思えない。アレ? これ違うんじゃ…………。と不安になったが、ミミナが二つを近づけて手を放すと、二つに割られたコインは空中で引き合う様にぶつかって一つのコインとなり、甲高い音を立てて机の上に転がった。


 おおっ! マジか。どうなってんだあのコイン。ちょっと欲しいんだけど。



「はい。確認が取れました。確かにウチのギルドで発行した割符ですね。では、封筒(こちら)の方も確認しますので、少々お待ち下さい」



 そう言って封筒を開けて中を確認するミミナ。あれに何が書いてあるのかは知らないが、書いてあるのは間違いなくクリムゾン・アントの件だろう。


 村長には、村として追加報酬は出せないと言われたが、俺としてはそこは元々期待していなかった。ただ、クリムゾン・アントの素材を買い取りに出す為にも、ギルドへの報告書にはしっかり書いてくれとお願いはしておいたのだ。



「ガ、ガモンさん! ここに書いてある事は本当ですか!? アカメアリではなくてクリムゾン・アントの蟻塚だったと、しかもそれをガモンさん達が討伐したとありますが…………!?」


「ちょっと正確ではないんで、それは後で詳しく報告させて貰いたいんですが、クリムゾン・アントがいたのは本当です。キャンパー、あれを出せ」


『かしこまりました。マスター』


「こっ、これは…………!!」



 俺がキャンパーに命じて出させた物は、クリムゾン・アントの頭だ。やはり証拠なら物を見せた方が早いからな。なるだけ状態の良い物を選んで持ってきたのだ。



「た、確かにこれはクリムゾン・アントの頭ですね」


「このクリムゾン・アントの素材と、あとクリムゾン・アントの卵も回収してあるのですが、ギルドで買い取って貰えませんかね?」


「クリムゾン・アントの卵ですか!? そ、それはもしかして中身も入っている物ですか!?」


「はい。状況的に見て、次代の女王の物もあると踏んでいます」


「なっ!? す、少しお待ちください! 上と相談してきます!!」



 そう言ってミミナは奥へと行ってしまい。俺達はしばらく待たされた後に、戻って来たミミナの案内でギルドの奥にある個室へと通される事になった。


 どうやら、冒険者ギルドのお偉いさんが話を聞いてくれるらしいな。

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