110回目 金髪縦ロールのお嬢様
誤字報告をいただきました。
ありがとうございます。本当に助かります。
一応、気をつけてはいるんですけど、やっぱりありますね。頑張ります。
「うーーん。…………うーーーーん」
明くる日、朝食をすませた俺は、『◇キャンピングカー』のリビングのソファーに胡座をかいて座り、腕を組んで唸っていた。
「ガモン様、先程から随分と唸ってますけど、どうかしたのですか?」
「うん? ああシエラか。…………いやさぁ、昨日アレスにターミナルス辺境伯家へのツテを約束したから、ティムにそれを頼もうと思ってさ」
「ああ。三人のお父上は、ターミナルス辺境伯家で剣術指南役を勤めているそうですね。アリアから聞きました」
「うん。でさ、そのツテを頼むとなると経緯を説明しないといけないだろ? そうなると、あれもこれも説明しないといけなくなって、それを『フレンド・チャット』でどう文章にしていいもんかって悩んでいるんだよ」
できるだけ解りやすく簡潔に。そういう文章は難しいよね。でも今回の件についてティムには『依頼受けたから、ヘテナ村まで行ってくる』程度しか連絡してなかったんだよなぁ。説明する事が多すぎてどうしたもんかな…………。
いっそ帰ってから口頭で伝えるか? うーーん、なんかそれもなぁ…………。
「なんだそんな事ですか。それならティア…………ティムはだいたい知っていますよ?」
「…………は? なんで?」
「ティムとは毎日『フレンド・チャット』でやり取りしていますからね。アレスさん達の事も伝えてありますし、受け入れの準備もしていてくれています」
「……………………マジで?」
おっとこいつは失念だった。そうか、ティムやシエラくらいの女子が『フレンド・チャット』なんて知ったら、そりゃ毎日やり取りするよね。
って言うか、いつの間にかシエラがティムと呼び捨てにするくらい仲良くなってる。トルテとアレスといいシエラとティムといい、みんなコミュ力お化けなの?
「なんだ、俺達の他にもフレンドっているのか?」
「気になるのか、トルテ? まぁそりゃいるさ。『フレンド・チャット』にある名前で解るだろ?」
「え? …………いや、『フレンド・チャット』にはここにいるメンツの名前しかねぇけど?」
「は? …………ティムとかバルタとかゲンゴウとかの名前は?」
「ねぇよ? 本当にここにいるメンツだけだ」
新発見だな。『フレンド・チャット』で連絡できる相手に条件があるのかよ。
…………いやでも難しくはないか。たぶん顔を合わせた事があるか、とか話した事があるかとか、まぁそんな所だろう。
しかしまぁ、取り敢えず手間が省けてよかった。シエラによると、ティムはアレス一家に宿泊先として自分の屋敷にある部屋まで提供してくれるらしい。至れり尽くせりである。
◇
「……………………ハッ!? と、止まれ! 止まれ!!」
「いや、止まってますけど…………」
ヘテナ村からタミナルの街へ、俺達は無事に帰って来た。車での移動、しかもそれが『◇キャンピングカー』であれば道中に問題などある筈もない。
問題はタミナルの街に着いてから起きた。いや『◇キャンピングカー』でそのまま街に入ろうとした俺が悪かったんだけど、いま俺達は、槍を構えた兵士達に囲まれています。
「な、なんだこれは!? 馬車か!? 馬はどうした!? なんでこんなにデカイんだ!?」
「い、いやあの、…………これは俺のスキルで…………」
「スキル!? 嘘をつくな!!」
「いや嘘じゃ…………」
あーー、マズイ。思ったよりも大事になってきた。アレス一家とその荷物も乗ってるし、クリムゾン・アントの卵の事もあるからキャンパーがどうしても必要だった。
一旦、歩いてタミナルの街に入って、ゲンゴウの寮で『◇キャンピングカー』を出す事も考えたんだけど…………。
いや、騒ぎになるのは解っていたんだよ。でも、一度乗り越えてしまえば『◇キャンピングカー』で街を出入りできるようになるんじゃね? くらいの軽い気持ちで俺はそのまま街に突入する事にしたんだよ。まあ、結果失敗だったけど。…………どうしよ、コレ。
まぁーー、ワラワラと兵士が集まって来たよね。いやちょっと考えれば、そりゃそうだって感じではあるんだけどさ。
「落ち着きなさい! その者達は敵ではありません!!」
「!? リメイア様!! どうしてここに!?」
「私の友人となる方々を迎えに来たのです。武器を納めて下がりなさい!」
「「か、かしこまりました!!」」
槍を持った兵士達に囲まれて、どうしようかと考えていた俺を助けてくれたのは、貴族と思われる少女だった。
だが、その娘を初めて見た俺には衝撃が走り、助けられた云々の前に固まってしまった。
いやだって! その娘の髪が金髪の縦ロールなんだもの!! 初めて生で見た! いるんだ金髪縦ロール!? 都市伝説じゃなかった!!
「ガモン様、ガモン様! どうしたのですか?」
「…………ハッ! ああ、ゴメン。ちょっと衝撃を受けてた」
「あのお嬢様は、この街の領主様のご令嬢で『リメイア=ターミナルス』様です」
「え? シエラの知り合いか?」
「まさか。辺境伯家のご令嬢と知り合う事なんてありませんよ。ティムが『フレンド・チャット』で教えてくれたのです」
「え? ティム?」
居るのか? と思って顔を縦ロールお嬢様の方に向けると、お嬢様の後ろの方にティムとバルタを見つけた。
どうやら俺が『◇キャンピングカー』のままで街に入ると言った時に、こうなる事を見越したシエラがティムに連絡を取っていてくれたらしい。
それでどういう訳か、この街の辺境伯家のご令嬢まで一緒になって出迎えに来てくれたようだ。
って事は、あの娘がティムの婚約者って事になっているご令嬢か。まさにお嬢様! って感じだな。縦ロールだし。
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