105回目 蟻戦、終了
『ギギィッ!?』
『ギィギィッ!?』
『ギチギチチッ!?』
『次いきます!!』
突然、上空から降って来た車に圧し潰された仲間を見て慌てるクリムゾン・アントと、嬉々として他のクリムゾン・アントの上にも別の車を落としていくキャンパー。
『ギ…………ギギィィ……………………』
「……………………」
そして、俺のフルサイズSUV車☆4『ランブルクルーザー』に圧し潰されて虫の息のクリムゾン・アントと、上空から落とされて酷い事になっている『ランブルクルーザー』を前に放心状態の俺。
あ、ヤバイ。泣きそう…………。
「…………あ、あの、ガモン様? これはどういう状況ですか…………?」
「…………シエラか、トルテとアレスは?」
「動けなくなった事を悔しがっていましたが、大丈夫です。それより…………」
「ああ、こっちはもう大丈夫だ。見ての通りの地獄だから」
「…………ガモン様は大丈夫ですか?」
「…………ちょっとキツイかな」
俺がシエラと話している間にも、戦場ではゴスンッ!! ガシャンッ!! と酷い音が鳴り響いている。
キャンパーは『ランブルクルーザー』だけでは飽き足りず、他の車も、なんなら普通の『キャンピングカー』まで空から落としている。
そして俺の愛車になるはずだった『ランブルクルーザー』も、その下のクリムゾン・アントに息があると見るや、もう一度倉庫に回収して再び空から落としていた。鬼か。
何度も空から落とされて完全に『廃車』と認定された車が消えていく。俺の『ガチャ・マイスター』から出たガチャアイテムはゴミが残らない仕様なので、一欠片の破片すら残さずに消えていく。
後に残ったのはグシャグシャの『ランブルクルーザー』と、圧し潰されて息絶えたクリムゾン・アント達の死骸である。
「これだけ残りましたね?」
「まあ、理由は解るよ」
ただ一台だけ残った『ランブルクルーザー』。これはまだ動くとか廃車になってないとか、そういう事ではない。だってどっからどう見てもグシャグシャだもの。ガラスとかも全部割られてるもの。
「『ランブルクルーザー』には何度も乗るつもりだったからな。ホラ、窓磨いたりする道具を積んでいたんだよ」
ガチャアイテムは、中に別のアイテムが入っていると、例え完全に壊れていてもそれを取り除くまでは消えない。
このルールは、前にゲンゴウの部下達が☆4『ドラム式洗濯機』の検証をしていた時に解ったルールだ。
ゲンゴウの部下達は鎧まで丸洗い出来る☆4『ドラム式洗濯機』と同じ事が、☆3『洗濯機』にも出来ないかと試して『洗濯機』をブッ壊したのだが、完全に壊れていた『洗濯機』は、その中に入っていた盾や兜を取り除くまで消えてなかった。それで解ったガチャアイテムのルールだ。
それを裏付けるように、俺の『ランブルクルーザー』も、中から整備道具を取り除いたら破片も残さずに消えた。
さよなら『ランブルクルーザー』。俺のピンチを救ってくれてありがとう。
……………………あーー、クソッ! 絶対またガチャから出してやる!!
『終了しました。脅威は無くなったと報告いたします』
戦闘が終り、やりきった感を出してキャンパーが報告してきた。いやね、まぁ助かったのは確かなんだけど一言いいたい。鬼かと。コイツのせいで四台あった☆4の車が全て無くなりました。本当にありがとうございましたドチクショウ。
「取り敢えずよくやったよ、俺達は。犠牲も大きかったけど蟻も蟻塚も無くなったし、これで解決だろ。取り敢えずゆっくり休もうぜ。俺、風呂入って酒飲みたい」
『少し休むのは良いのですが、お酒は控えた方がよいと思います。まだやることは残っていますので、先にそちらを片付けるべきです』
「え? …………あぁ、素材の回収か? まあ、それは確かに必要だな」
『それもですが、もっと大事な事があります。あの蟻塚を掘り返す事です』
「…………何でだよ?」
『お忘れですか? あそこには自爆したクリムゾン・アントの女王が残した物があるのですよ?』
「あっ! そうですね! あそこにはクリムゾン・アントの卵が残されている筈です!!」
「あぁーー…………。マジかぁーー…………」
そうだ、そういやそういう話だったな。あんまりにも地獄な戦いだったから忘れてた。
クリムゾン・アントの卵かぁ。絶対に放っといちゃダメな奴だ。ここで新たにクリムゾン・アントの群れとか、考えただけで絶望感が凄い。
しかも、キャンパーの予想は俺が思う最悪よりも、もっと上だった。
『自爆を選択した以上、その卵の中には新たな『女王』がいるでしょう。放っておくと、今度は完全なるクリムゾン・アントのコロニーが出来上がります』
「あーー、ダメだ。それは本当にダメなやつだ。今回はダンジョン・コアでの急激な進化だったから、基本は強化されただけのアカメアリだった。それが完全にクリムゾン・アントのコロニーになったらもう戦争だろ。それは本当にダメなやつ」
と言う訳で、少し休んで素材の回収も終えたら、今度は皆でクリムゾン・アントの卵をどうにかする事になった。…………熱湯ぶっかけてどうにかならないかな?
…………いやならないか。クリムゾン・アントって、シエラの話によると、本来は溶岩地帯に巣を作るらしいし熱には強いだろうしなぁ。
面白い。応援したい。など思われましたら、下の☆☆☆☆☆から評価をお願い致します。
モチベーションが上がれば、続ける力になります! よろしくお願いします。
 




