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恋が渦巻く五つのヒント

作者: 赤い鯉人

どんよりとした曇りの朝で、教室の窓に映るだらしない自分を見て、「今日も頑張れよ」と呟く。


「なーにしてんのっ!」


大きい声とともに、いきなり後ろからバンッっと背中を叩かれ、心臓がドキッとなる。

振り返れば、気づけば見下ろすほど身長の差がついてしまった幼馴染。


身長の割には胸は大きく、クラスで上から3,4番目くらいのサイズ、顔面偏差値は+8くらいのそこそこな美人だ。

俺はこんな恵まれた幼馴染に、当然のごとく恋をしている。


自分の思いに気がついたのは、小学5年生の時だった。

彼女がインフルエンザで一週間ほど休んだ時、どこか心の中にポッカリと穴が空いたような気がした。

自分はこれがなんなのかわからず、裏に住む爺さんに聞くと「恋」なのだと教えてくれた。


初めての恋。

それは俺にとって、衝撃的であった。


彼女は、とてもとは言えないが僕に比べれば頭が良い。

中学受験をするかも、という噂を耳にしたときは、一日中寝れなかった。

しかし、そんなことも杞憂に終わり、中学で何も変わらない二年間を送った。


中学3年生の夏。

秋になると受験シーズンに入るので、告白するには最後の機会だと思いつつも、相手の思いを知ってからの方がいいと逃げてしまう。


そんなことを考えながらも、今日も他愛もない話をしていると、唐突にその時はきた。


「好きな子っているー?」


来た、と思った。

好きな子はいるか、という話だ。


僕は適当にお茶を濁し、聞き返してみた。


「好きな子ねー。いるよー!」


即座に返された答えに、僕の心情は少し曇った。

好きな相手を前にして、「好きな子がいる」と堂々と言えるものか。

不安を紛らすため、彼女から先週誕生日プレゼントでもらったミサンガを引っ張る。


でも確認したいので、というよりお決まりなので、誰なのかを聞く。

今、俺の心臓はバックンバックンしている。


「じゃあ、5つのヒント出すから、考えてねー!」


今俺の頭の中に、この学年の男子の特徴がリストアップされた。


「一つ目のヒント。んーっじゃあ、君とその人が話しているのを、私は何度も見たことがあるよ!」


終わった。この世の終わりだ。暗に「君は好きじゃない」と言われているようなものだ。

とてつもなく悲しかったが、会話は進む。


「二つ目のヒント。私より身長が高い人。」


一応、彼女に相応しいかどうか知りたいので、頑張って推測する。

今ので、男子の4分の1が消えた。


「三つ目のヒント。私より頭の悪い人。」


今ので、残りの男子の5分の3が消えた。


「四つ目のヒント。夏が誕生日の人。」


今ので残りの男子の半分が消えた。


「五つ目のヒント。同じ学校だった人。」


候補が、、、消えた。

五つの条件を満たす男子はこの学校にいない。


となれば、考えうるのは中学受験をした子だが、同じく条件満たす子はいない。

彼女は誰が好きなのか。その真相は闇の中へと葬られ、僕は寂しく毎日を過ごすのであった。


- ・——— ・——— ・——— ・——— ・——— ・——— ・——— ・——— ・-


<彼女目線>


窓に映る自分を眺めて呟く彼。

そのどんよりとした心に光を差してあげるべく、後ろからこっそり近づく。


「なーにしてんのっ!」


彼の大きくなった背中をバンッと叩きながら大声で言う。


振り返った彼の顔を見て、心臓がドキッとなる。

昔は私より小さくて頼りなかった彼が、今では見上げるほどの身長の差がついてしまった。


成長期で一気に伸びた身長に伴い、部活である程度鍛えられたがたいと、顔面偏差値+10(自分補正付き)のタイプど真ん中だ。

私はこんな恵まれた幼馴染に、当然のごとく恋をしている。


自分の思いに気がついたのは、小学5年生の時だった。

彼がテストで良くない点をとってしまい怒られている時、彼と同じで心が締め付けられるような気分がした。

自分はこれがなんなのかわからず、裏に住む婆さんに聞くと「恋」なのだと教えてくれた。


初めての恋。

それは私にとって、衝撃的であった。


彼は、とてもとは言えないが私に比べれば頭が悪い。

中学受験をするかも、という噂が回ったとき、彼が悲しまないか気が気でなかった。

しかし、そんなことも杞憂に終わり、中学で何も変わらない二年間を送った。


中学3年生の夏。

秋になると受験シーズンに入るので、告白する最後の機会を与えるためにこっそりと自分の思いを伝えたいが、相手が自分を好きでないかもしれないと思うと、勇気が出なくて逃げてしまう。


そんなことを考えて、今日は他愛もない話にブッこむことにした。


「好きな子っているー?」


完璧だ、と思った。

あまり会話の流れに逆らわないようにし、自然と聞くことができた。


そして彼は適当にお茶を濁し、聞き返された。

少し希望が見えた。


「好きな子ねー。いるよー!」


少しでも早く思いを伝えるべく、即座に答えを返した。

好きな相手を前にして、「好きな子がいる」と堂々と言えたのだ。

恥ずかしさを紛らすため、彼から先月誕生日プレゼントでもらった髪留めをいじる。


確認してもらうこと前提、というよりお決まりなので、誰なのかを聞かれる。

今、私の心臓はバックンバックンしている。


「じゃあ、5つのヒントを出すから、考えてねー!」


事前に考えていたヒントを発表する。


「一つ目のヒント。んーっじゃあ、君とその人が話しているのを、私は何度も見たことがあるよ!」


窓に映る自分を眺めて、自分自身と話をする彼。

とてつもなく緊張したが、会話は進む。


「二つ目のヒント。私より身長が高い人。」


成長期になって、急激に伸びた身長。


「三つ目のヒント。私より頭の悪い人。」


テストで悪い点をとって怒られる彼。


「四つ目のヒント。夏が誕生日の人。」


先週の誕生日にあげた手作りのミサンガ。


「五つ目のヒント。同じ学校だった人。」


一番の大ヒント。

このヒントを入れるか迷ったけれど、彼に気づいてもらうこと前提なので入れた。


この五つのヒントの条件満たす子は彼以外いない。思いは伝えられた。

あとは、彼は誰が好きなのか。その真相を探るため、私は闇の中へ足を踏み入れるのであった。

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