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第九話(おおもりらくよう)
061
僕は暗いトンネルをくぐった。その先に誰かが待っていた。
かえでさんだった。
062
「らくようさん、どうして結婚しなかったの?一度しかない人生なのよ。私よりいい人いっぱいいたでしょ。せっかくの人生無駄にして。一体何を考えてるの?」
「君がいい。」
「え。」
「君がいい。君じゃなきゃダメなんだ。」
「……」
「……」
「……そういうと思って私も待ってたんだよ、結婚もせずに。」
「……かえでさん。」
「……らくようさん。」
「……かえでさん。」
「……あの、そろそろ、さん付けで呼ぶのやめない?」
「そうだね。じゃあなんて呼ぼうか?」
063
お話はここまで。この結末は終わりではなく、始まりに過ぎない。