一章2 『目が覚めるとそこは保健室でした』
「よかった!気がついた!」
鼬の声だ。そうだ、俺はB組の奴らにやられて…。
目を開けるとそこは保健室だった。覚えている。口の中には仄かに血の味がする。
「帆村くん大丈夫?」
「あぁ。ちょっと頭が痛むけど…」
「本当にごめんね。僕がアイツとぶつかってなかったら…」
「気にすんな。お前は一つも…いや、ほんのちょっとしか悪くない!悪いのはB組の奴らだ。」
きっと責任を感じているのだろう。
「ところでアイツらはどこ行ったんだ?」
「気を失ってそこで寝てるよ。僕びっくりしたよ。帆村くんあんなに強いなんて!」
「え?」
何を言っているんだ?
「俺、ボコされただけじゃ…」
「もしかして覚えてないの?」
俺は鼬からあの後のことを聞いた。どうやら俺は二発目のパンチを受けた後にアイツの首を掴んで投げ飛ばし、周りのやつまで一掃したらしい。そのあとバランスを崩して頭から倒れたとのこと。全く覚えていない。その前に、俺にそんな力はないはずだ。鼬の勘違いだろう。
「誰と見間違えたのかは知らないがそいつすげぇやつだな」
「見間違えてないよ!本当に覚えてないんだね。大変だったんだよ。先生とかたくさん来て。」
「お前がここまで運んできてくれたのか?」
「いや、僕は先生たちに捕まって事情を話してたから…」
「じゃあ誰が…?D組の人間を運ぶ人なんていないだろ?」
突然、保健室の扉が開き、女の子が入ってきた。
「私だよ。暁くん」
彼女は黒い髪の毛を肩まで下ろし、青い目をしている。彼女の名は『白熊白』。この学校の副生徒会長だ。非常に美人で、知らない人はいないだろう。
「なぜあなたが…」
「『火置象』、B組で1番強い彼がD組に投げ飛ばされたと聞いてね」
「じゃあ本当に俺が…」
「記憶がないのかな?」
「あ、はい」
「私、火置のこと好きじゃなくてね。スカッとしたから…」
そんなことで俺を…。
彼女は笑顔で話す。
「白熊さんでも笑うんですね」
「なにそれ?酷くない?女の子にそんなこと言うと傷つくんだぞぉ?」
「すいません」
「それに白熊さんって…白でいいよ」
「じゃあ白さんで」
「じゃあそれでいいや。ところであなたは?」
鼬は不思議そうに白さんを見ている。
「帆村くんの友達?」
まさか知らないのか?
「おい!そんなわけないですよね!白さ…」
「そうだけど?」
「えぇ?」
何この人?友達?俺と?
「おい鼬。副生徒会長だぞ」
「へぇ〜。すごいね!」
マジで知らなかったんかよ…。
「僕、『東鼬』です!よろしくお願いします!」
「こちらこそ。2人ともよろしくね」
めっちゃいい人そうだな。こんな人もA組にいるのか…。
俺はとても嬉しかった。
「ところで暁くん。」
「はい、なんでしょうか?」
「入れ替え戦、対策してる?」