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「保健室におっさんは似合わない」第一話 ベッドで寝ると死んじゃう病気  作者: 高取和生@コミック1巻発売中


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十一章 東京に、特許許可局はないみたいだ

 連絡をもらった翌日の午後。


 加藤は、東京の郊外にある、氷沼の勤務先の大学に向かった。


 結局、明け方近くまで、ネットで検索を続けていたので、加藤は殆ど寝ていない。

 まあ、これなら、氷沼の睡眠時の脳波研究に、協力しやすいであろう。


 研究棟の前で、氷沼が待っていた。

 相変わらず、イケメンである。

 無駄に……


 パリっとした白衣を着た氷沼は、片手を上げる姿が妙にさまになっていて、加藤はちょっとムカついた。


「よお、せいさく! 相変わらず、アンキロサウルスみたいな目してんな」


 『アンキロサウルス』は草食恐竜で、氷沼のお気に入りの一種である。


「ほっとけ! だいたい、本物のアンキロサウルスを、見たことあんのか、お前は」


「まあまあ、アンキロサウルスは、肉食恐竜に負けない防御力をもってる、スゴイ奴なんだぜ」


「知るか!」


「ああ、俺の研究室はこっちだ」


 午後の日差しのなか、トレーニングウエアの学生たちが、構内を走り抜けていく。

 現在、氷沼が所属している大学は、スポーツ推薦の学生が多数おり、世界選手権やオリンピックの代表に選ばれる者も多い。


 アスリートたちのパフォーマンス向上には、質の良い睡眠が不可欠であり、そのために専門家として氷沼が招聘されたらしい。


 この大学の英断、か?

 それとも……愚断か。


「しかし、無呼吸症候群対策の枕なんぞ、いくらでも手に入るがな」


 ぶつぶつ言いながら、加藤は氷沼の研究室の隣の、実験室に入る。

 実験室にもあちこちに、恐竜のイラストが貼ってある。

 何の研究をやっている教員か、分からないほどだ。


「ふふふ、甘いな加藤君。俺の開発中のツールは、そんな簡単なもんじゃない」


 薄暗くなった実験室で、加藤は頭に電極を装着させられて、用意されたマットレスに横になる。

 三秒後、加藤は眠りに落ちた。


 夢を見ていた。


 ガキの頃の加藤と氷沼。

 互いに図鑑を持っている。


 加藤は昆虫図鑑。

 氷沼はもちろん恐竜図鑑。


――すげえ、コエロフィシス! さすが肉食、共食いするんだ。自分の子どもも、食ってるみたいだ!

――自分の子ども、食うの? なんか、やな恐竜


 嫌だなと、口に出していた。

 加藤の上半身が、勝手に起き上がっていた。


 加藤は、マットレスが盛り上がり、彼の上体を起こしているのに気付く。マットレスは、端からくるくると、巻きずしのように巻かれていた。


 なんだろう。


 起きた感触が、いつもより気持ち悪い。

 睡眠を中断されたからか。

 それとも……


「あれ、もう目覚めたの? 相変わらず、せいさくの睡眠時の脳波は読めないな。ああ、一応レム睡眠だね、夢でも見たか?」

「俺、どの位寝てた?」

「三十分も寝てないよ」


 加藤は呼吸を整えた。


「これは、どんなからくりなんだ?」


 氷沼の話によると、時間ごとにマットレスの形態が変化し、睡眠を中断させるものだという。

 脳が睡眠の中断を察知すると、呼吸が回復するらしいのだ。


 いちいち中断なんかしたら、余計睡眠不足になりそうだが。


「従来のタイプだと、お前みたいな奴には、完全覚醒を促す、っと」

 氷沼は何やら記録をつけていた。そんな姿は、研究者っぽい。


 加藤は氷沼に訊く。


「従来型って、これはお前が作ったもんじゃないのか?」

「うん。俺が開発したのは、こんな低レベルじゃないよ。これを作ったのは、脳神経系の医者らしい。ただ、特許云々で揉めて、丸ごと外国の企業に売ったみたいだ」


 加藤のアンキロサウルスの様な瞳が光る。


「これ作った医者ってさ、四の五の、何だっけ……」


「よく知ってるな。篠宮って医者だ」



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― 新着の感想 ―
[一言] JRの宿直室に備えられているという、「自動起床装置」を思い出してしまいました(笑)。 篠宮の作ったマットレス、不眠症になりそうです(笑)。
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