森の中
登場人物
ライル:精霊使い。黒髪の華奢な男性。称号『暴発乱舞』
ユイナ:豹族の獣人。真紅の髪と瞳を持つ女性。称号『紅』
フラウ:アルマジロ系獣人。金髪に緑の瞳の女性。体の一部に鱗。称号『月ノ環』
以上3人のパーティ名:『紅月の舞』
ポルゴ:タヌキ獣人の男性。美味しい食材を求め同行する料理人
ヒルド:ユイナの同族の戦士長
ターミャ:虎族の獣人。イエラガ男爵の第3夫人の娘
バロ,カロ:元軍馬。黒い牡馬がバロ、茶色の牝馬がカロ
精霊達
シズク:泉の妖精。分身なので力は0
ミリ,ミル,ミレ:水神竜ミラカナチの娘。上半身が少女で下半身が龍。水の精霊
エンヤ,エンカ:火竜の尻尾と股下に鱗のある足を持つ兄妹。火の精霊
プーカ:闇の精霊、黒山羊の可愛い姿
ユイナ達が警戒する中、現れたドリアードは、
「旅ノ人ヨ、私ニ手ヲ貸シテ貰エナイダロウカ。」
と話しかけてきた。
「どういうことにゃ?」
ユイナが警戒を解かずに問いかけると、
「コノ先ヲ進ムト私ノ仲間ガイルノダガ、何カニ操ラレテイルヨウデ、様子ガオカイシノダ。
私ノ樹液ヲカケレバ元ニ戻ルト思ウノダガ、近ヅクト私モ操ラレテシマウカモシレナイノデ、託セル相手ヲ探シテイタノダ。」
とドリアードが敵意がないことを示すように、ヒルドやターミャの騎士たちが回り込むように移動しても身を隠さずに力を抜いた状態で答えてきた。
そのお願いの内容を聞いたフラウが
「それは私たちも操られる危険があるのでは?あと、上手く樹液をかけて元に戻しても、また直ぐに操られるなら危ないだけなのですが。そこはどうなのですか?」
と懸念を伝えると、
「仲間が様子ガオカシクナル前ニ何日カ姿ガ見エナカッタラシイノデ、ソノ場デ直グニカカルヨウナ物デハナサソウダ。捕マラナケレバ大丈夫ダト思ウノダガ、私タチハ移動ニ制約ガアルノデナ。難シイノダ。
アト私タチドリアードハ一度解イテシマエバ、直グニ免疫ガデキルノデ同ジ術ニハカカラナイ。ソレハ大丈夫ダ。」
とのことだった。最後にライルが
「僕たちを選んだ理由は?」
と聞くと、
「精霊ヲ連レテ、水神竜トイフリートノ加護ヲモツ者デアロウ?私ニハソレデ十分ダ。ソレニ豹族ハ、操ラレテイル仲間ニヤラレテイル方ト森ノ者達カラ聞イテイル。強ソウダシ貴方達以上ノ適任者ハイナイト思ッタ。一度鳥ニ頼ンデ樹液ヲ持ッテイッテ貰ッタノダガ、撃チ落トサレテシマッテナ…。依頼ヲ受ケテクレルノナラ私ニデキルコトハ何デモシヨウ。スマヌ助ケテクレ!」
そう言ってドリアードは頭を下げたのだった。
ライル達『紅月の舞』のメンバーが目配せをして、頷き合うと
「そういうことなら、分かりました。僕たちもドリアードさんにお願いしたいことがありましたので。」
と言って、ドリアードと協力することで話を進めようとした。
すると、
「ちょっと待って、ドリアードに会えただけでも凄いのに…色々気になる事があって、どこから突っ込めば良いのか、理解が全然追いつかないんだけど…。」
そう言ってターミャと騎士達が困惑しまくっていたのだった。
ばれてしまったし、これから一緒に戦うとしたら知っといて貰った方がやりやすいので、ターミャ達に「秘密なんですけど」と精霊達のことも紹介して説明と情報共有を行った。
「ひゃ~。すごいねぇ。」
ターミャ達は心底驚いていたが、なんとか理解すると、世の混乱を招かないように他言無用にすることも誓ってくれた。
説明のため少し待って貰っていたドリアードが、頃合いと見て
「ソレデ、ソチラカラノオ願イトハ、何ダ?」
と聞いてきた。
「実は部族の者が体が動かしにくくなったり幻覚を見る等の術に苦しんでいると聞いたので、対抗薬の素材としてドリアードさんの樹液を頂きたいと思っていたんだにゃ。」
とユイナが答えると、
「ム、確カニ。対抗薬ガナイト、私ノ仲間ニ近ヅクノモ難シイナ。ソノ分モ用意シヨウ。容れ物はあるか?」
と言ってドリアードは容れ物を受け取ると、指先から若草色に輝く液体を滴らせて注ぎ満たしていった。
「ありがとうにゃ。」
ユイナが受け取って、調合を指示するフラウに渡すと、
「チナミニドウヤッテ作ルノダ?」
とドリアードが興味を持ったらしく聞いてきた。
フラウは、説明するよりもその状況を見て貰った方が分かりやすいし、安全な今のうちに作った方が良いので、今からポルゴに調合してもらうところを見学しますか?と話し、実際に調合作業を見て貰うことにした。
ベースとなる材料を取り出して準備をすると、
「ナルホド。ソウイッタ物ヲ混ゼルノカ。私ノ樹液ノ力ガ増幅サレテ効果ガ高クナルデアロウナ。」
そう言ってドリアードが感心していた。
すると、闇の精霊のプーカがチョンチョンとフラウの服を引っ張って、
「僕の力も役に立ちそうなんだけど…混ぜる?」
と、小さめな声で小首をかしげて聞いてきたのだった。
「えーと、凄くありがたいんだけど、どういった力なのかな?」
フラウがプーカの力が分からないので判断がつかず困っていると、
「どんな力だ?説明できるか?見せれるようなら見せてみろ」
と泉の妖精のシズクが助け船をだし、プーカに話しかけた。
そこでプーカが分かったとばかりに頷いて、目を閉じ祈りを捧げるようにすると、
『シャットアウト』
と聞こえるか聞こえないかギリギリくらいの小さな声で呟いた。するとプーカの頭の上、黒山羊の角の先のところに黒く光る球形のものが現れた。プーカがそれを自分の体に落とすと、プーカの体全体を覆うように広がったあと透明になっていった。シズクが見たところそれは、空間に膜を作るように外からの干渉を遮る力であった。
「ふむ。良さそうだが、それは遮るものを選べるのか?支援魔法も遮るようだと困るのだが」
とシズクがプーカに確認すると、対象は選べるし、対象を制限するほど効果は高まるとのことだった。
「それなら、植物系や虫系、既知の毒などにはドリアードの樹液で対応できるであろうから、プーカ以外の闇の魔法に対して抵抗するようにするのが良いのではないか。できるか?…ふむふむ、これは凄いぞ。ただそれは魔法であるから、今作る薬に混ぜるより、直接かけた方が良いであろうな。」
とシズクが案を出し、フラウ達もドリアードも賛同したので、プーカは役に立てると飛び跳ねて大喜びであった。
その後持続時間を聞くと、1日くらい保つとのことだったので、早速かけて貰うことにした。プーカは嬉しそうにニコニコしながら、皆にかけて回っていた。
しばらくして無事に対抗薬が完成し、ユイナの部落の方へ向かう準備が整った。ドリアードは見送る形になると改まって、
「仲間ヲヨロシク頼ム。私ノ名ハ[パキュルー]トイウ。今回受ケテクレタコトハ忘レナイ。今後貴方達ガ何カ困ッタコトガアッタラ、私ニデキルコトナラ必ズチカラニナルコトヲ、私ノ名ニカケテ誓オウ。貴方達ガ上手クイクコトヲ祈ッテイル。」
と言って、一人一人の名前を覚えながら別れの挨拶をして、送り出してくれた。
「仲間のことは任せて。行ってくるにゃ~」
そうしてユイナ達はドリアードのパキュルーに手を振って、部落に向けて主発したのだった。
ドリアードと別れてからは、順調に森の中を進んでいった。
「もう少しで部落にゃ。」
ユイナの言葉に、より注意を払いながら進んでいると、森が静まりかえるように音が無くなっていき、複数の者が森の中に潜んでいるような気配を感じた。そして元軍馬のバロとカロも周りを睨むように警戒する中、歩を進めると、
「止まれ!」
という声と共に、槍を手にした複数のイタチ族が現れ、馬車を取り囲んだのだった。
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