いざ部落へ!
登場人物
ライル:精霊使い。黒髪の華奢な男性。称号『暴発乱舞』
ユイナ:豹族の獣人。真紅の髪と瞳を持つ女性。称号『紅』
フラウ:アルマジロ系獣人。金髪に緑の瞳の女性。体の一部に鱗。称号『月ノ環』
以上3人のパーティ名:『紅月の舞』
ポルゴ:タヌキ獣人の男性。美味しい食材を求め同行する料理人
ヒルド:ユイナの同族の戦士長
ターミャ:虎族の獣人。イエラガ男爵の第3夫人の娘
イエラガ男爵:ユイナの部族の最寄りの街を治める男爵
バロ,カロ:元軍馬。黒い牡馬がバロ、茶色の牝馬がカロ
いきなり付いて来ると言ったターミャにその場に居た全員が驚き、たユイナが
「いや、ターミャ様、死ぬかもしれないにゃ!危ないにゃ!」
と慌てて止めようとした。
しかしターミャは目に強い意志を込めて、
「ユイナ様の部落が危ないのでしょう。もし今、我が身可愛さに何もしなかったら、私は一生後悔すると思うのです。止められても、例え一人でも、私は向かいます!」
と言い切った。
「なぜそこまで...?」
あまりの勢いにライルが驚いて呟くと、第3夫人が
「先日訪問させて頂いたときに、この子はユイナ様の部族に、それだけの思い入れができたようなのです。おそらく...」
と理由を言いかけると、ターミャが
「お母様!」
とかぶせるように遮った。
「......何にしても、こうなるとこの子はテコでも動かないので...」
と第3夫人が軽くため息をついたあと話を続けると、別れを思い、目に涙を浮かべて
「...連れて行ってあげて頂けないでしょうか?」
とターミャの後押しをしたのだった。
長い沈黙の後、イエラガ男爵が
「ターミャよ、出せるのは現在当家に詰めている騎士6名の内4名と、馬車1つだ。命をかけることになるぞ。覚悟はあるのか。」
とうなるように言った。ターミャは男爵の目を真っ直ぐ見て
「はい、お父様。危険は承知しておりますし、死ぬ覚悟はできております。貴重な騎士と馬車の供与ありがとうございます。これでもし当家にご迷惑がかかるようなら、除名して頂いても構いません。」
と力強く言い切った。
「...分かった。ターミャが覚悟を決めて随行を望むのであれば、悔いが無いよう全力でなせば良い。『紅月の舞』の皆さん、申し訳ないが、我が娘ターミャを連れて行ってくれないか。ターミャに何があっても問題にすることはないことを誓うので。」
そう言って、男爵は頭を下げたのだった。
「頭をお上げ下さい、イエラガ男爵様!喜んでお受けさせて頂きます。勿論男爵家の方々が本当によろしければですが。」
「そうです、こちらとしてはここまで親身になって頂き、ありがたいお話ですので。……しかし強行軍になりますので、守りはできうる限りさせて頂きますが、私どもでは身の回りのお世話は十分にできず、ターミャ様には苦労をかけると思うのですが。」
「そうにゃ。頭を下げるのはこちらにゃ。それに本当に願ってもないことですが、私の部落も歓迎する余裕はないだろうから、滞在されている時に誰もお側に居てられないかもしれないし、快適ではないと思うにゃ…。」
頭を下げた男爵に対し、慌ててライル,フラウ,ユイナが声をかけ頭を上げて貰い、危険だけでなく苦しい旅路の懸念を伝えた。男爵は頭を上げたあと頷くと、
「そうか、勿論娘も危険も苦しい状況も分かった上での話だ。すまないが娘をよろしく頼む。なに、ターミャはこう見えても、我が領内では腕が立つ方でな。槍を持てば騎士でも敵わぬほどだ。冒険者としても活動していてCランクになっている。だから泥臭いことも理解しているし大丈夫だ。」
と言ってターミャを呼んで肩を叩き、自分の前に導いた。ターミャはユイナ達の方へ向き直ると
「私は自分の意思で好きで付いて行きますので、何があっても自己責任ですし覚悟しています。皆様は私のことを気にせず行動して、私にできることがあればいくらでも使って頂きたいと思います。よろしくお願いします。」
と改めて付いて行くことを表明し、頭を下げたのだった。
その後、付いて来る騎士の紹介を受け、ライル達は客室に戻っていった。
ターミャは明日の準備をしつつ、別れを惜しむ家族と共に過ごしたのだった。
次の日朝早くにライル達とターミャ達が出発の準備を完了すると、イエラガ男爵の屋敷の人達が見送りに集まってくれた。
見送りでは、ターミャが家族それぞれとハグをして別れの挨拶をし、2度と会えないかもしれないと思う大人達が涙目になり、ターミャの母は目をハンカチで押さえていたが、事情を知らない第2夫人の幼い兄妹が僕たちも連れて行ってとせがんで困らせていた。
ターミャが
「2人はまだ小さいから、また今度ね。」
「約束だよ!」
と2人とハグをして納得して貰い、
「それじゃ行ってきます!」
と朗らかな声を上げて馬車に乗り込むと、ユイナ達の部落に向けて出発した。
馬車に乗り込む前、ターミャはユイナから、
「約束したからにはちゃんと戻ってきて果たさないといけないにゃ。」
とささやかれ、力強く頷くと決意を新たにしたのだった。
そして街道から逸れてユイナの部落に向けて森に入ってしばらくすると、動物の声や気配がなくなっていった。
「何か様子がおかしいにゃ…」
と警戒を強めていると、木がザワザワと動き、行く手を遮ってきた。
バロとカロがいなないて立ち止まり、皆が武器に手をかけると、
うごめく木からにじむ出るように、上半身が綺麗な裸の女性の姿をした半精霊のドリアードが現れたのだった!
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