魔の森に突入!
「さぁ、頑張って行くにゃー!」
「おぉ〜…」
魔の森に向けて出発した1日目は、何事もなく無事に魔の森に辿り着いた。一夜明け、今から魔の森に向けて踏み出すところである。
ライルは初の野宿と、交代で行う見張りによる緊張に加えて、共同で使うことになったユイナのテントに広がる花のような異性の香りにドキドキして、寝不足なのであった。
(見張りと寝るのを交代で行うから勿体ないと押し切られて、テント購入せずに来たけど、ヤバいから帰ったら絶対買おう。)
「何か言ったにゃー?」
「いやっ!ここから魔の森だから慎重に行こう。地図によると目的地はあっちだよ。」
思わずつぶやいてたライルはかなり焦ってワタワタしながら行き先を指差していた。
「了解にゃ。索敵よろしくにゃ。」
「うん、…『サーチ』」
…ライルが索敵の魔法を使うと、左前方に反応があった。
「目的地に向けて進むと左手に、この低さと大きさはウルフかな?が4匹いるよ。更に100mくらい奥に巨大な何かが1匹いるね。」
「ウルフは囲まれるたり仲間を呼ばれると厄介だから、直ぐに潰したいにゃ。」
「近づくと匂いで気付かれるよね…どうしよっか?」
何か先制攻撃ができる良い作戦がないかと2人は考え、ユイナが
「投げナイフが当たる距離まで近づきたいけど…風下になるように、風魔法であちらからこちらに風を吹かせるのは……」
と言いながらライルを見ると、
「暴発が危にゃいから止めとくとして…」
と別の方法を考え始めた。するとライルは、
「それくらいなら大丈夫!…のはず」
と微妙に歯切れの悪い感じでやる気を見せていた。
「ホントかにゃ〜?自爆は嫌だにゃ〜…」
ユイナがジト目でライルを見ると、ライルは「声を出せば大丈夫のはず」と自分に言い聞かせるようにつぶやいた後、
「任せて」
とユイナに言って、(自爆は怖いから少し方向をずらして…と保険をかけつつ)
『ウィンド!』
と風魔法を唱えた。すると、
「おぉ〜!成功にゃ!」
狙い通りにこちらが風下になるように良い風が吹いていた。
「じゃあ近づいて、投げナイフを投げたら突っ込むにゃ。ライルは茂みに隠れていたら良いにゃ。」
そう言ってユイナは音もなく素早い身のこなしでウルフに近づいていった。
シャッ!ザクッ!!
ユイナが投げたナイフは見事に1匹の首元に刺さり、刺さったウルフはそのままドサッと倒れた。
その間にユイナは疾風のように駆け寄り、相手に避ける暇を与えず、1匹を切り捨てた。
残り2匹となったウルフは、飛びのいてユイナと距離を取ると、飛びかかるタイミングを計りながら、ユイナを中心に周りをグルグルと回りだした。
ライルは隠れて成り行きを見ていたが、(これ同時に飛び掛かられると厳しくないか?と感じ、)焚き火用?の自作魔道具を使って、近い方の1匹を狙い、小さなファイアボールをボッ!と撃ち出した。
ウルフはいきなり向かってきた火に少し焼かれて、動揺して動きが止まり、その隙にユイナは反対側のウルフにサッと飛び掛かり、切り裂いた。
最後に残ったウルフはユイナ相手は不利と見ると転身し、ライルに飛びかかってきた!
「ライルッ!棍棒!」
焦ったユイナの声を聞きながら、ライルは向かってくるウルフの大きく開いた口をワンドで受け止めた。ワンドを咥えこんだウルフに対し、
『ファイア!』
とライルが魔力を込めると、ワンドから炎が湧き上がり、口の中を焼かれたウルフはのたうち回って、倒れた。
「ライル、良かっ…」
こちらに向かってこようとしたユイナに対し、ドドドドドッ!!と音を立てながら巨大な何かが突っ込んできた!
それは全長が6m、高さ2mを越える巨大なボア(猪)だった。
ユイナは何とか転がって避けると、そこはナイフを投げて倒したウルフの近くだった。
ユイナが転がった体勢でジャイアントボアが旋回してくる様子を目で追っていると、ナイフが刺さったウルフが最期の力を振り絞り、飛びかかってきた!
(体勢が崩れてて避けられない!ヤバい!)ライルはスローモーションのように感じる時間の中、咄嗟にユイナとウルフの間に土の壁の魔法を挟もうと、
『アースシールド!!』
と唱えていた!
すると、ユイナの手前からウルフに向かって3mくらいの奥行きの地面が、ドンッ!とユイナの身長ぐらい打ち上がり、
「ギャン〜〜ッ!」
とウルフも景気よく撃ち上がっていた。
そこへ旋回してきたジャイアントボアが突っ込んできたが、ユイナが更に転がって回避すると、ボアは突然現れていた壁に対処できず、ドゴォーン!!!と盛大な音を立てて壁に激突した。
フラフラになったジャイアントボアの首をユイナが切り裂くと、音を立ててボアは崩れ落ちた。
「ふぃ〜。凄かったにゃん…」
安堵して脱力するユイナと、呆然としてペタンと座り込むライル。
「ライル、ありがとにゃ。助かったにゃ。暴発も良い方向にいったし。ワンドの使い方も上手かったにゃ。」
「うん。無事で良かった。」
「でも攻撃する時は安全マージンや周りに気をつけて欲しいにゃ。…うん、それでも今回は助かったし、嬉しかったにゃ。これからもよろしくにゃ〜。」
(そうか、自分が一杯一杯だったから、ジャイアントボアの接近に気付けなかったんだ…)状況を思い出し、反省するライル。そんなライルをニコニコしながら手を引っ張って立たせるユイナ。
「あっこれ美味しいと言ってたジャイアントボアにゃ!」
目をキラキラさせて、解体を始めるユイナ。
「ライル、血の匂いで色々寄って来ないように索敵よろしくにゃ。あとお肉冷やしたいんだけど、ワンドに氷ってまとえるにゃん?……おぉー!便利にゃー!」
テキパキと解体して、
「ボアの牙と皮は素材になるにゃ♪ お肉は冷やしてこの葉っぱに包んで、出来上がり〜♪ ウルフの牙も集めておくにゃ〜♪」
ユイナは上機嫌で素材を集め、二人は目的地に向かうのだった。
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