ユイナの部族へ出発
登場人物
ライル:精霊使い。黒髪の華奢な男性。称号『暴発乱舞』
ユイナ:豹族の獣人。真紅の髪をなびかせ同色の瞳を持つ女性。称号『紅』
フラウ:アルマジロ系獣人。金髪に緑色の瞳の女性。背中,肘先,すね等に鱗がある。称号『月ノ環』
以上3人のパーティ名:『紅月の舞』
ポルゴ:タヌキ獣人の男性。美味しい食材を求めライル達に同行する料理人
ヒルド:ユイナの同族の戦士長
セト :デントナの街の門番、衛兵
精霊
シズク:泉の妖精。分身なので力は0
ミリ,ミル,ミレ:水神竜ミラカナチの娘。上半身が少女で下半身が龍。水の精霊
エンヤ:火竜の尻尾と股下に鱗のある足を持つ少年。火の精霊
シャーリ:光の精霊、天使の様な女性型
ライル達は『白い狐亭』を出たあと、馬車に購入したポーションや食料、資材などを積み込み、不備がないか確認を行った。
「荷物はとりあえず問題ないにゃ。それで馬車で乗り込めるって話だったけど、どうやってイタチ族に囲まれた部落に入るつもりにゃ?」
確認後、周りに人が居ないか確かめ、ユイナがヒルドに疑問を投げかけた。
「それは、我が部族の最寄りの街を治める男爵の協力を得るつもりです。」
「えっ?援軍を出してくれるにゃ?」
ヒルド の予想外の回答に、ユイナ達が驚くが、
「いえ、そういう訳ではないのですが、その男爵がユイナ殿が有名になった事で部落に興味を持ち、先日男爵本人と虎族である第3夫人とそのお嬢様が部落を訪れていたのです。
そして、その虎族の血を引くお嬢様が部落を大層気に入ったようで、近々もう一度訪れる予定なのです。
その時に可能であればユイナ殿にもお会いしたいとの事だったので、これから街に行って男爵に会い、今から帰省するので一緒に行きましょうとユイナ殿が言えば、男爵の馬車と同行できると思います。さすがにイタチ族も男爵の馬車に対し何かすれば軍が動くぐらいは分かるでしょうから、攻撃されることはないでしょう。」
とヒルドは侵入作戦の概要を皆に伝えた。
「なるほどにゃ。でも、それだと男爵を騙して紛争に巻き込むことになるにゃ。意図して危険に巻き込んだのなら罰せられるにゃ。」
ユイナが作戦の有効性には納得したものの、「う〜ん」とうなりながら懸念を伝えると、
「その時にはユイナ殿と皆様は知らなかったことにして、私が一人で画策したことにしますので。部落を脱出した時からそのつもりでおりますし、私一人の命で部落を救えるのであれば、本望ですので。」
とヒルドは答えたのだった。
想像以上に覚悟を決めていたヒルドに皆が息を呑んだが、
ライルが、
「いや…それでも騙すのは良くないです。正直に話し、男爵家に危険が及ばないように近づかないように伝え、可能であれば男爵家の馬車として偽装させて貰えるようお願いして…無理なら馬車で入るのを諦めて、忍び込む方法を考えようよ。どうかな?」
と提案すると、フラウも
「うん、私もその方が良いと思います。偽装も、男爵家の家紋に似たものを、私たち3人の誰かの騎士爵位の家紋として使うことにして、その許可を頂く形にすれば、偽装に加担したと後から男爵が責められることも回避できそうですし。」
と同じ方向で意見をつなぎ、
「あ、それはいい考えだにゃ。」
とユイナも同意したのだった。
「じゃあ、そういう方針で行ってみよう!」
と3人が盛り上がると、ポルゴは微笑み、
(甘いが... ...ユイナ殿は本当に良い仲間に恵まれたのだな。)
とヒルドは呟いたのだった。
その後、門で変わらず門番をしていたセトさんに、直ぐに出ることなったと話し、マシェリさんに凄くお世話になった事を感謝して、別れの挨拶をし、ライル達はデントナの街を出発したのだった。
・・・・・
街を出た後、馬車の中でシズクがライルの荷物の中から、ライルだけに聞こえるように、
「ライルよ、今のうちにヒルドに我らを伝えといた方がスムーズだと思うが、どうだ?」
と聞いてきた。
ライルがちょっと考えてから、
「そうだね。じゃあ紹介するから出ておいで」
と言うと、シズクとミリ達とエンヤが姿を現した。
「なぁぁぁっ!何者!?」
いきなり現れたシズク達を見て、ヒルドが慌てふためいて剣に手を伸ばしたが、周りが焦らず触れ合うのに気付き、唖然としていた。
驚くヒルドにまずエンヤが
「私達は精霊だ」
と語りかけ、続いてミリ達が
「ハロ~、私達は水神竜の娘だよ~」
「ギルドでお前をかき回したのはあたいらだ。手加減したんだありがたく思えよ!」
「ふむ、契約したライル達を馬鹿にしたのにあれくらいで済んだのは、直ぐにライルが止めたのもあるがな。面白かったし、もう一回いっとくか?」
とヒルドを取り囲んでわいわい騒ぎ出した。
シズクがやれやれと、
「お主ら、馬車の中はやめろ。我らは精霊使いのライルに付いているものだ。ヒルドよ、これからの作戦上、お前にはばらすが、このことは他言無用だ。分かったな。」
とミリ達に釘を刺しながらヒルドに口止めをし、
「僕が精霊使いなのですが、珍しくて騒動や混乱が起きるので秘密なんです。国でもホントに一握りしか知らないので、厄介事を招かないよう、ばらさないようにお願いしますね。あと精霊に頼み事はできますが、僕に使役力はないので動いてくれるかは完全に精霊の気分次第です。それでこちらが泉の妖精のシズクで~」
とライルがヒルドに説明して、精霊達を紹介したのだった。
ヒルドがミリ達に少しびびりつつ口外しないことを約束し、ある程度落ち着いたあと、
シズクが
「話を聞いていた限り、光の精霊と闇の精霊が居た方が良いと思うのじゃが、どうする?」
と聞いてきた。
それを受けてミリ達は、
「前も活躍したAランクのシャーリとか水神竜の里にいる光の精霊なら、ライルとは絆ができているから召喚には応じてもらえると思うけど・・・ちょっと厳しいかな」
「だよね。あたいたち以外の高ランクはあまり川から離れる訳にはいかないからね。」
「うむ。母上を困らせるのはマズイし、良くて一瞬だけだな。」
と話していた。
話を聞いていたライルが、
「ミリ達以外が離れられないってどういう?」
とつぶやくと、シズクが
「普通高ランクの精霊は役割があるからな...うちの泉の高ランクもそうだが。」
と解説してくれた。
「「「あ~......。」」」
とライル達が納得しつつ、ミリ達に(頑張って成長しないとね~と)視線を送ると
「連れて行くのは難しいかな…うん?何か視線が若干生温い気が…?」
と鋭く言ってきたので
「え?いや、それより、ミリ達の里もシズクの泉も難しいのなら、光の精霊と闇の精霊を道すがらか現地で探す感じかにゃ?」
と素早くごまかしつつ、確認したのだった。
するとミリ達はまだ見ぬ精霊に気が向いたようで、
「そうね。新しい出会いだね!」
「ふはは。選定は任せるが良いぞ。」
「楽しみー!風と土もいた方が良いよね!」
と盛り上がっていた。
そして、それを聞いた皆は若干不安を感じ、
フラウは、
「ふぇぇ~、もう空を飛んだり、地中を流されたりすることはないよね?」
と呟いたのだった。
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