魔の森へ出発!
翌朝、御飯を食べた後、ライルとユイナは冒険者ギルドに来ていた。
「常設依頼の薬草や魔物のチェックはこれでよしっと。ユイナ、この薬草類で判らないのある?」
「大丈夫にゃー。どうする、直ぐに魔の森に行ってみるかにゃ?」
「うーん。魔の森にたどり着くのに1日、探索に1〜2日かかるとすると、往復で5〜6日必要だから…保存食切り詰めれば、何とかなるかな?」
「う、安物の干し肉にゃ…しょうがないにゃ…」
一瞬耳がペタンとなって悲しそうな表情を浮かべるユイナだが、
「いや、現地調達すればいいにゃ。森の中ならイケるにゃ。狩るにゃ。受付でアスラにどんな生き物がいるか聞いてみるにゃー。」
と受付カウンターにいるアスラのところに向かっていき、慌ててライルも追いかけたのだった。
「おはようございます、ライルさん、ユイナさん。」
「おはようございます、アスラさん。」
「ライルさん、武器は決まりました?」
アスラは笑顔で朝の挨拶をして迎えてくれた後、相談したことを気にかけて聞いてきてくれた。
「ええ。この頑丈な棍棒をとりあえず使おうと思います。」
ライルは下手に目立つのを避けるため、ユイナと話し合って、棍棒と言うことに決めていた。
「なるほど。扱い易そうで良いですね。武器の扱いに慣れてきたら、より破壊力のある物に換えていっても良いでしょうし。」
「うん。重いと武器に振り回されるし。これで頑張るよ。ユイナも特訓してくれるし。」
「へー、そうなんですね!良いですね!」
「うん。でもありがたいけど、容赦ないんだよね…。」
そう言って昨日の訓練を思い出して顔をしかめるライルに
「ニャハハ、私にまかせるにゃ!強くしてやるにゃ!」
と言ってユイナが良い顔でニッコリ笑ってライルをアワアワさせ、そんな2人を見てアスラは堪えきれなくなって吹き出し、笑っていた。
「ところでアスラ、魔の森にいる獣や魔物を教えて欲しいにゃ。特に食べれて美味しいのを教えて欲しいにゃ!」
笑いがなんとか収まったアスラにユイナが尋ねると、アスラは一呼吸置くようにちょっと背筋を伸ばして、
「あ、ついに魔の森に行かれるのですね。最近の情報は浅い所だけであまり無いですが、獣では小動物の他に、鹿やウルフ、ボア(猪)、ベアー(熊)が多いそうです。どれも巨大らしいですけど。その中では、ジャイアントボアが別格の美味しさらしいですよ。」
と教えてくれた。
「にゃるほど!…じゅるり。」
美味しい肉を想像して、ユイナは垂れそうなつばを飲み込んでいた。
そんな中、アスラはさらに続けて、
「魔物は奥に行く程凶悪なのが出るそうですけど、近くではゴブリンやオークぐらいらしいです。巨大なスパイダーやスネークの方が強いかもしれません。
ただ魔の森は深く入ると悪霊が出るらしいんですよ…。ある時期を境に呪われたという噂が絶えなかったんです。あまりの多さに名前が魔の森に変わったくらいですから…。十分注意して下さいね。」
と魔の森の注意すべき情報を教えてくれた。
「そうにゃのか。呪われた人はどうなるにゃ?見たことはあるにゃ?」
「私は無いんですけど。とても人前に出れる状態ではなくなって、再起不能になるらしいです。最近は気味悪がって誰も入らないですし。」
「ふーむ、ライルの光魔法を頼りに行くしかないかにゃ…ライルよろしくにゃ。」
「僕が頼り!?ヤバい…」
自分にかかっていると聞きライルが焦り出したが
「本当にやばかったら私がライルを担いで逃げるから心配しなくて良いにゃ。大丈夫にゃ。」
とライルを安心させるよう、ユイナが私に任せろとばかりに胸を張ったのだった。
「じゃあアスラさん、情報ありがとうございました。」
「あ、ユイナさん、もしできたらで良いのですが、エクスポーションの材料の、白透草を採ってきてくれると助かります。魔の森でよく採れたらしいんですけど、最近行く人いないから、あまり出回ってなくて。高く買い取りますよ。」
「分かったにゃ。見つけたら取ってくるにゃ。行ってくるにゃ〜。」
「いってらっしゃい。気をつけてー!」
こうしてライルとユイナはアスラに笑顔で手を振ってギルドを出て行き、
「無事に帰って来てください。」
アスラは去ってゆく2人の背中を見ながら祈っていた。
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