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登山準備完了

「必要な物は揃っているかな?」 

 カッセル宰相が北の山に行くのに必要となる物資を手配して、ライル達に不足がないか確認していた。

「はい、問題なさそうです。」

 今回国からの援助物資として、北の山のの標高が高くなるほど寒くなるので、防風防寒アイテムを、噴火口用では逆に、耐熱、耐暑アイテムを、そして登山の道中に必要となる、食料や寝袋、各種ポーション、縄や楔などの登山道具を頂いた。


「では、この袋の中に入れると良い。」

 さらに、険しい道のりであるが秘密保持のため運搬用の人員を雇うことができないことから、国の宝物庫にあった異空間収納袋:通称『マジックバッグ』(違う空間に時間の進行なく収納できる袋状の魔道具)を貸してもらえることになった。ポルゴが言っていた闇の魔法の魔道具である。容量は馬車2台分くらいなので大軍への軍事利用には難しいが、非常に貴重な物には変わりはないので、さすがに貰える訳はなく、シン宮廷魔導士が借り受け、戻ってきたら返す形となった。


「これ凄いにゃ。これがあったら旅が凄い楽になるにゃ~。」

「そうですね。これがあれば、私がアヴィちゃんを背負って登れそうです。」

「フラウ、この中で一番体力があるのはフラウだけど、しんどくなったら何時でも変わるから言ってよ。」

「ありがとうございます。でも、大丈夫ですよ。見た目が変わってないので分かりにくいと思いますが、この間の戦いで、力と体力が大きく成長しましたので。」

「そうなの?」

「えぇ。アルマジロ獣人の特性として、力強く、頑丈になっていく傾向がありますので。なので心配は、...わたしのドジが発動してアヴィちゃんを背負ったままこけないか......いや、こけた時にアヴィちゃんに怪我をさせないかということですね。」

「既にこけるの前提なのね...さすがフラウだにゃ...まぁ、危ないところはフォローするにゃ。」

「うん、命綱とかもしっかり準備して油断しないようにしよう。」


 フラウの言葉に若干あきれつつ、フォローは任せといてと頷くユイナとライルであった。そしてそれを見聞きしていたアヴィは、

「わ、わたしも頑張って山登るよ!」

と、こけたフラウと一緒に顔面から地面にダイブしたり、つぶされたり、山を転げ落ちていく自分を想像して、顔を引きつらせつつ出来るだけ自分の足で歩こうと決意を新たにしたのだった。



 そうして王都で準備を終えたライル達『紅月こうげつまい』とシン宮廷魔導士、アヴィ一家は北の山のふもとにある魔術師団の拠点を訪れていた。アヴィの両親も直接フェントール王子とカイルとミチルに挨拶しておきたいとのことで、この拠点までは一緒に来ることにしていた。

 到着した面々が門番に名乗ると、団長のガルクが直々に対応に現れた。ガルクは挨拶を交わした後に、ライル達を門の中に招き入れると、拠点の建物ではなく、王族の別荘の方に導いていった。

 アヴィ一家が大いに緊張しながら(ライル達も若干緊張気味に)別荘に足を踏み入れ、応接室に入ると、王子とカイルとミチル、光の精霊のキラの他に、シメノ侯爵とその配下の騎士でフラウの兄でもあるフルズも部屋で待っていた。

「あぁ、良く来てくれた!」

そう言ってフェントール王子が歓迎すると、アヴィ一家と王子側のメンバーが自己紹介を行って、今後の連絡の仕方や秘密の範囲、周囲への違和感のない理由づけ、アヴィちゃんが希望した時のサポートの方法、疑問点などを話し合った。

 最初は大物ばかりの状態に焦り、恐縮していたアヴィ一家だったが、王子や侯爵、カイルとミチルをはじめとした面々が、優しく朗らかに説明(キラの王子イジリが炸裂したり)したことで、次第に落ち着き、安心感と信頼を感じて、後半は笑顔で話していた。

 そうして和やかに話し終えると、アヴィの両親はアヴィを信頼してライル達に託し、娘が戻ってくるまでシメノ侯爵の屋敷で待つことになった。シメノ侯爵としては客人として来てもらうつもりだったが、両親はそれは逆に辛いので、元々村でやっていた経験を活かし、父は猟師として母は薬草採取をして役に立ちたいと言ってきたので、無理のない範囲でやって貰うことになった。


 その後、その日は壮行会と懇親会を兼ねた夕食会が行われ(水神竜の娘3姉妹とカイルとミチルがはっちゃけそうになってヤバイ時もあったが笑)、英気を養ったライル達は次の日の朝、北の山に向けて旅立ったのだった。


お読み頂きありがとうございます。

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