王城での対話
模擬戦を終えたドゥガート将軍が、ユイナと握手を交わしながら
「ライル殿の援護魔法が無い状態でここまでとは。予想以上であった。久しぶりに楽しかったわい。」
と驚きながら楽しそうに話しかけていた。
「いえいえ、私も魔族戦の経験で強くなったと思ってたけど、まだまだだにゃ。勝負が長引いたのは、将軍が剣で追撃できるところを(重傷化させないように)あえて蹴りに変えて攻撃してくれたからだにゃ。そのまま剣で攻撃されてたら危ない場面が何回かあったにゃ~。ありがとうございます、良い経験になったし、楽しかったにゃ~。」
とユイナも将軍との手合せの高揚感そのままに、得難い経験を積むことができて、笑顔で応えていた。
そんな話を聞いていた周りでは、(おい、あれで本気じゃないらしいぞ。)(まじか!)(強さは本物だったか…)などざわついていた。
そして、そんな注目の的であるユイナ達に、
「ドゥガート将軍、相変わらず無茶されますね。ライル君、ユイナさん、フラウさん、こんにちは。お久しぶりです。」
と苦笑しながら、シン宮廷魔導士が近づいてきた。
シン宮廷魔導士とユイナ達が再開を喜びながら挨拶を交わす中、ドゥガート将軍は
「はっはっはっ、確かに強引ではあったがな。しかしこれだけの実力と国を救ってもらった恩義がありながら、軽視されるのが我慢できなくてな。まぁ戦ってみたかった気持ちも同じくらい強かったが。」
と、してやったりと笑っていた。その話を聞いたシンが
「ふむ、なるほど...では、ライル君も力をアピールするために私と戦ってみますか?私のファイアストームとかに無傷で耐えれるところを見せれば、皆に納得してもらえると思いますが。」
とライルに確認すると、
「いや、目立ちたくないので...勘弁して下さい。」
とライルは(自分の力というより精霊の力がメインだから微妙だし...と思いながら)、断っていた。なお、この話を受けて周りでは(宮廷魔導士の魔法に無傷!?まじで!?)等と、更にざわつきが大きくなっていた。
「ははは、ライル君らいしですね。では、私の執務室でお話しましょうか。そちらのご家族も付いて来て下さい。」
「はい。ありがとうございます。」
こうして、シン宮廷魔導士に促され、ライル達とアヴィ一家が打合せのために立ち去ろうとした。
すると、ドゥガート将軍が思い出したという感じで
「あ、ちょっと待て」
と言って、この騒動を引き起こした門番を、将軍付きの騎士に命じて騎士が囲っている中央に持ってこさせた。そして、ずたぼろの状態で愕然とした表情の門番に対し、
「さて、ユイナ殿に身の程を教えると言うなら、さぞ強いのであろう。わしと模擬戦をしようか。」
と言って、殺気を込めて大剣を構えた。すると、門番は「ひっ!」と言って逃げようとしたが、円形に配置された騎士の盾に遮られ、押し戻された。転がって戻って来た門番に対し、将軍が殺気を更に込めて大剣を門番スレスレに振り下ろすと、門番は股を濡らした後、床に額を擦りつけてブルブル震えながら、ユイナ達に謝り続けたのだった。
その様子を周りが冷ややかに見る中、将軍は冷めた目で門番を見ながら、
「こんな恥知らずは我が国の騎士に相応しくないため除名処分とする!異論はないな?処分についてはわしが責任持って行うから、任せておけ。」
と言って騒動のケリを付けてユイナ達を送り出したのだった。
シン宮廷魔導士は、ライル達とアヴィ一家を伴って執務室に入ると、大きな1枚板のテーブルを挟んで3人掛けのソファが向かい合わせに置かれている応接セットに皆を導き、ライル達3人とアヴィ一家3人にそれぞれソファを勧めた。そして、部屋付きの従者にアヴィが気に入りそうなお菓子を持ってこさせて、自ら紅茶を淹れて皆に用意し、自分用の椅子を持ってくると、人払いをして風の魔法で外に音が漏れないように結界を張った。そして
「さてある程度予想はついているのですが、今回はどういったお話でしょうか?」
と言ってライル達に話を促した。
そうしてライル達が状況の説明を終えると(説明の間にアヴィがお菓子をほおばりまくってお母さんに「こらっ!」と頭を軽くはたかれるという一幕もあったが)
「なるほど。アヴィさんに才能がある事は間違い無いようですね。それで、アヴィさんは魔術師団やカイルとミチルのことをよく知りたいと。それでは魔術師団とは双方向通信の魔道具があるので、ひとまず魔道具でカイルとミチルと通話してみますか。」
とシンがアヴィに聞いた。アヴィはお母さんにはたかれた頭をさすって「う〜〜っ」とうなっていたが
「…んぐっ、ひゃい、お願いします。」
と口に残っていた中身を何とか飲み込み、返事をしていた。
それから、シンが魔道具を応接セットに持ってきて起動すると、
「シン宮廷魔導士、定例の時間ではないぞ、どうした?火急の用事か!?」
と、魔術士団総帥となったフェントール王子が、少し強張った顔で聞いてくる様子が映し出された。
「いえ、そういう訳ではないのですが、ライル達が来ておりまして、カイルとミチルを交えてお話したいことがありまして…今ご都合や周りの状況は問題ないですか?」
とシンが王子に問題ない事を確認した後、少し体をずらして魔道具の正面を開けた。そこに、
「お久しぶりです。」
「キラと上手くやってるかにゃ?」
「お元気そうで何よりです。」
とライル、ユイナ、フラウが姿を現して挨拶をした。
「あぁ、お久しぶりです。皆さんもお元気そうで。」
ライル達の姿を見て一転して笑顔になったフェントール王子に、
「実はこの子の事で相談がありまして…」
とアヴィを精霊使いの素質がある子として紹介しつつ、カイルとミチルを交えてお話したい事を伝えた。王子は魔術士団から事前に情報を得ていたのか驚きは小さかったが、少し羨ましそうな表情でアヴィを見たあと、
「うむ。分かった。では早急に呼んでくる。準備が整ったらこちらから繋ぎ直すので、待っていてくれ!」
と言って、一旦通話を終了して駆けて行った。
アヴィは王子の登場に固まっていたが、通信が切れる直前の王子の表情を見て、
「何か私を羨ましそうに見てた?」
と、不思議そうに呟いた。
「あーそれは、王子は理由があって、精霊との繋がりを持ちたいと思っているからだにゃ。」
とユイナが若干苦笑気味な表情で説明していると、通信を知らせる信号が点滅した。
通信が繋がると、
「あっ…」
「こんにちは!この子が!?」
「お!可愛い子じゃないか。」
とミチルとカイルが、王子を押しのけるように魔道具に近づき見る姿が、ドアップで映っていた。
「ライルも、ユイナさんもフラウさんもこんにちは。ん、元気そうね。」
しばらくして落ち着いたカイルとミチルが、挨拶を交わして後ろに下がると、王子と一緒にキラが居るのが見えた。
「あ、キラ、久しぶり〜。」
キラとも挨拶してると、アヴィが
「あの方って…精霊?」
と聞いてきた。
「そうだよ。キラっていう光の精霊。」
「王子はキラと一緒に居たくて、精霊との契約ができるように修行してるんだよ〜。」
と王子のこともバラされていた。
「へ〜。凄い綺麗。」
アヴィが憧れるような目で見ると、子供が好きなキラも微笑んで自己紹介をして、アヴィと挨拶を交わしたのだった。
シズクやミリ、ミル、ミレの3姉妹も出てきて再会を喜んだ後、ライルがまずアヴィのことを説明した。
それを受けてカイルとミチルは、
「アヴィちゃんとご家族が良ければ、指導やフォローは任せといて。」
と対応することを約束し、王子も魔術士団がサポートすることを伝えていた。アヴィの家族はあまりの高待遇に恐縮しつつ、明るく優しい雰囲気に安心して、感謝していた。
その話が一段落した後にライルが、ミラカナチの娘3姉妹と一緒に北の山に行き、イフリートのヴァルレオスに会いに行く事、それにカイルとミチルも付いてきて欲しい事を説明した。
「あぁそれはもちろんオッケーだ。ヴァルレオスさんには私達も会ってお詫びと感謝を言いたいと思っていたので、こちらから同行をお願いしたいくらいだし。」
とカイルとミチルが喜んで一緒に行くと返事すると、王子も
「キラも行くであろう?なら私も行くぞ。国として感謝の意を示す必要もあるし。」
と言ってきた。それを聞いていたアヴィが
「イフリート…私も付いて行ったら駄目?」
と聞いてきたのだった。それを聞いていたシンは、
「しかし、王子の安全確保もそうですが、アヴィちゃんはまだ6歳、簡単に行ける場所ではないですよ。北の山の山道は険しく、噴火口は熱さも厳しいし、魔物も強いので危ないです。」
と懸念を伝えると、ミチルが
「そうだね。最悪死んでしまう可能性があるよ…。これから先待ってるだろう、楽しいこと、嬉しいことを経験せずに、その若さで……。
ただ、それでも構わないと言える覚悟があるなら、さらに両親が許可してくれるなら、私達もできるだけのことはするわ。イフリートに会える機会は2度とないかもしれないからね。」
と答えた。アヴィはシンとミチルの言葉の前半を聞いて段々と俯いていったが、ミチルの言葉の後半を聞いてはっとして顔を上げていた。
「正直厳しいと思うけど、以前と変わってなければ強い魔物に会わない抜け道を知ってるから何とかなるかもしれない。…心配だから王子にはガルクが、アヴィちゃんには、シン、貴方が付いてあげれば危険は減るんじゃない?これからの事を考えると、貴方もヴァルレオスさんに会っておいて損はないでしょう?」
とミチルに言われ、シンは考え込みながらアヴィに行きたいか確認した。アヴィは目に強い意思を込めて行ってみたいと答え、アヴィの両親は色んなことがあり過ぎて感覚が麻痺してるのか、アヴィの意思を尊重するので宜しくお願いしますと答えたのだった。
シンは返事を聞いてふぅ〜と少しため息をつきつつ、意思を固め、
「分かりました。ただ話が大きくなりましたので、グントール国王とカッセル宰相にも話を通しておく必要があります。ライルとユイナさんとフラウさん、アヴィさん一家は一緒に来て下さい。…まぁ王子が行くと言った時点で王に伝える必要があったのですが…。」
と言って、急ぎ王と宰相に面会のアポイントを取るべく部屋の外に出て、従者に手続きをお願いした。それを聞いたアヴィ一家は(えっ王様!?)と固まり、一拍置いて
「「「え〜〜〜!!!」」」
と今日一番の叫びを上げたのだった。
アヴィ一家がガチガチに固まる中、精霊使いの素質を持つ子が見つかったことと、イフリートのヴァルレオスと繋がりが深まりそうな話に、グントール国王とカッセル宰相は上機嫌だった。ライル達と朗らかに会話をした後、アヴィには
「何かあったらわしを頼ると良い。そのまま健やかに育ってくれ。」
と言い、両親には
「良くこの様な素晴らしい子を産み育ててくれた。褒めて遣わす。」
と言って、一家をねぎらっていた。(まぁアヴィ一家は更にガチガチになっていたが。笑)
さらに国王は、今回のことは国の行く末を左右する可能性があるので、手厚いサポートを約束してくれた。秘密を守るため人の派遣は難しいが、アイテムなどを潤沢に用意してくれることになり、北の山に向けて準備が整っていくのだった。
お読み頂きありがとうございます。
最近更新が遅くてすいません。




