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王城と将軍

 王都に到着したライル達は、アヴィ一家と一緒に王城の城門に来て、シン宮廷魔導士への取り次ぎをお願いした。

 王城の城門に門番として立っていた騎士は、冒険者と平民の家族という構成に、当初門前払いしようとしていたが、ライル達の名前を聞いて、顔をしかめた後、しぶしぶ取り次ぎの手続きをしていた。(ちっ、偶然魔族が現れた場所に居合わせただけのくせに...)そう、魔族に関する話は詳細が公表されていないため、現場に居合わせていない騎士の中には、元Eランクの冒険者や見習い騎士に大したことが出来たとも思えず、今回の褒賞に納得がいっていない者もいた。ただこの騎士のように態度に表すものは問題外であったが。この騎士は、

「お前たち冒険者は曲がりなりにも騎士爵位があるからな、手が空いたら取り次ぎを行うから、ここで待っていろ。平民は入れる訳にはいかんから、帰れ。」

と居丈高に言ってきた。

「いや、この子のことを相談するために取り次ぎをお願いしているのだから、それは困ります。」

「ではその平民たちが何か起こしてからでは遅いので、後ろ手に縛れば入城を許可してやる。」

このあまりの物言いに、ユイナがカチンときて、

「ちょっと待つにゃ。いつもそんな事してるのかにゃ?」

と問い詰めると、

「そもそもお前たちのようなどこの馬の骨かも分からん奴を入れるのも問題なんだ!その者たちが連れている者など、入れて貰えるだけ有難いと思え!」

と怒鳴ってきた。

 

 険悪な空気となる中、城門の詰所にいた騎士も何事かと出てきていた。するとそこに城の方から立派な鎧を着た威圧感のある者が、2人の位の高そうな騎士を引き連れて近づいてきた。

「何を騒いでおる?」

 重厚な声で問いかけてきた立派な鎧の人物は、叩き上げで武闘派で知られるドゥガート将軍であった。ドゥガート将軍は身一つで登り詰めたその実力や、必要に応じて王にも対立意見を言う姿勢から、現場の騎士達から絶大な信頼を得ていた。その覇気を感じアヴィ一家が青くなる中、騎士が(王子にでも気に入られて良い気になってる奴らを将軍がガツンと思い知らせてくれるに違いない)と考え、

「はっ、この者共が身の程をわきまえず宮廷魔導士に取り次げ,平民一家を入れろと言ってきたので、厳しく対応していた所であります。」

と言ってユイナ達を指さした。

そこで騎士が指さした方向を見たドゥガート将軍が、ユイナ達の姿を認識して

「なっ」

と言って絶句すると、

「ほら将軍もあまりのことに絶句されておる。諦めて帰るか、平民を後ろ手で縛るかするんだな!」

とユイナ達の方に振り返って再度高圧的に言ってきた。

 その言葉を聞いた将軍が、瞬く間に門番の騎士の後頭部を鷲掴わしづかみにすると、その勢いのまま顔から地面に叩きつけた。

「ばかもの!!身の程をわきまえておらんのは貴様だ!この方達の尽力のおかげで魔族を倒せ、今平穏な日々を送れておるのだ!伏してお詫び申し上げろ!」

と騎士を一喝して押さえつけ、謝罪の形を取らせるのだった。



「申し訳ない、部下の不手際で気を悪くされたのなら、私にできることであればやらせて頂こう。」

そう言って頭を下げるドゥガート将軍に、

「いえ、全然大丈夫ですので頭をお上げ下さい。」

「ドゥガート将軍にそこまでして頂く訳にはいかないにゃ。」

とユイナ達は恐縮して答えていた。ドゥガート将軍は、魔族の絡んだ戦いの援軍の指揮官として準備し、その後事後処理の指揮を行ったので、ユイナ達とは顔見知りであった。そして、身分や権力より能力を重視し、豪放な性格の将軍とユイナ達は気が合ったのだった。

「むぅ。かたじけない。お前たち早く取り次ぎの手続きを行うのだ。」

そう言って将軍は詰所にいた騎士に指示をして、

「では、用意が整うまで、こちらで待って頂けるか?」

とユイナ達を詰所の応接室に連れて行こうとした。すると、将軍付きの騎士が将軍に

「戦士の身のこなしから確かにできると思いますが...あの方達は将軍がそこまで気にかける程の者なのですか。」

と将軍だけに聞こえる声で尋ねてきた。それを聞いたドゥガート将軍は周りを見渡すと、

「ふむ。そうか、お主たちは知らんのだな。…ならば、良い機会だ。ユイナよ、わしと手合せ願えぬか?」

そう言って嬉しそうに笑うのだった。


「えっ、将軍と手合せにゃ!?」

「うむ。最近、たぎるような戦いの場がなくて退屈しておってな。是非貴殿と一度戦いたいと思っておったんだ。頼めぬか?」

ユイナは(あ~この人、戦闘狂だにゃ。まぁでも強い人との闘いは得るものもありそうだにゃ。)と考え、

「私だと全然将軍の相手務まらないと思うけど、面会に支障がないぐらいであれば、大丈夫にゃ。」

と次の予定があるのでお手柔らかにと牽制しつつ受けたのだった。


「確かに時間があまりないな。では早速付いてまいれ!」

将軍はそう言うやいなや、猛スピードで走りだした。

「「「えっ...」」」

(そういう事ではないんだけど!と)しばしあっけにとられた後、慌てて追いかけるユイナ達と、将軍付きおよび手の空いている騎士達。(アヴィはフラウが背負って追いかけた。叩きつけられた門番は将軍付きの1人が足を持って、同じスピードで荷物の様に引きずっていた)

将軍は城の中庭にある訓練場に到着すると、丁度訓練していた騎士団の指導官と一言二言しゃべった後、

「訓練止め!今からわしが討魔を成し遂げたユイナ殿と模擬戦を行う!場所を空けよ!」

と大音声で述べていた。


 50人ほど居た騎士達は少しざわついたが、指導官が

「円形!」

と号令を掛けると即座に中央を空け、中央を向いて取り囲むように整列した後、盾を前に突き出した。こうして即席の威圧感のある円形決闘場が出来上がると、将軍が中央に進み出て、

「ではユイナ殿、楽しもうぞ。」

と言って、刃引きはされているが、ユイナが隠れる程の大きさの大剣を振り回して、肩に担いだのだった。


それを見てジト目になるユイナ。

「...ちょっと待つにゃ。そんな物で殴られたら、いくら刃引きされてても死んじゃうにゃ。」

「はっはっはっ。当たらなければどうという事はないであろう?」

「それはそちらが言うセリフじゃないにゃ!」

「大丈夫だ。今まで何回か使ったが、死んだ者はおらん。」

「む~...。しょうがない、短剣を2本借りるにゃ。」

そう言って、刃引きされた短剣を何本か振って感触を確かめ、2本を選び取るユイナ。


 その間に騒ぎを聞きつけた貴族や耳聡い者、非番だった騎士などが、中庭に面したベランダに集まり、ギャラリーを形成していた。そして、(あれが紅の~)(ドゥガート将軍があの大剣持ち出すの何年ぶりだ?~)(本気?~)(おいおい、死んでしまうのでは~)(一撃で~)(わざと?~)(逃げ出さないだけでも~)等々、ざわついていた。


 ユイナが中央に進みドゥガート将軍の前に立つと、将軍が騎士団の指導官をしていた人を呼んだ。指導官が2人の間まで進み出てくると、将軍が

「すまんが、立会人を頼む。まぁ滅多なことはないと思うが、危ないと思ったら止めてくれ。終わりはどちらかが参ったと言うか、こいつが止めるか、お互いに満足した時で良いかな?」

と、指導官に立会を頼み、ユイナにルールを確認した。

「うん。それで良いにゃ。」

「では僭越せんえつながら立会人を務めさせて頂く。お互い騎士道精神に則り、戦うように。」

そう言うと指導官は少し離れていった。

将軍とユイナも少し離れた後お互いに礼をすると、それぞれの武器を構えた。


「はじめ!」

指導官が叫ぶと、将軍は瞬時に間合いを詰め、大剣を振り下ろした。

ブウォ!!

大剣を振り下ろした音と風圧がうなる中、ユイナは左斜め前方に飛び込むように避けながら将軍の側面まで移動し、右手の剣で将軍の頭に斬りつけた。

 将軍がこれを首を傾けてかわすと、体をユイナの方に回転させつつ、振り下ろしたままの大剣をユイナを追いかけるように横薙ぎに振るった。

 ユイナはそのまま将軍の横を通り抜けるように移動すると、体を反転させながら、胴を薙ごうとする一撃を見切ってぎりぎりで躱した。そしてそのまま身体の勢いを殺さずに回転しながら踏み込んで肉薄すると、3連撃を見舞った。

 将軍は1撃目をバックステップで躱すと、2撃目3撃目を大剣で受け止めた。そして動きを止めたユイナに対し前蹴りを放った。

 その速度も破壊力も桁外れの前蹴りを、ユイナは体を反らしながら大きく飛びのいて躱し、後方宙返りをして着地すると、油断なく武器を構えるのだった。


 瞬時に目まぐるしく攻守を入れ替えながら行われた戦闘に、居合わせた騎士や観衆はあっけに取られていた。特にユイナを軽く見ていた者たちは、信じられない思いでユイナの戦いを見ていた。

 指導官は、いきなり強力な一撃を放つ将軍に(やっちまった!)とかなり焦ったが、避けたユイナに安堵していた。しかし、(あれを躱して反撃できる者が、団員に何人いるだろうか?)とユイナの実力に驚く一方で、さらに激しさを増していきそうな戦いに、これを止めに入る場面を想像して、冷や汗が止まらなくなるのだった。


 飛びのいて最初の位置と同じくらい離れたユイナに対し、

「ガッハッハ。さすがにやりおる。これ位じゃ捉えられんわな。ではもう一段ギアを上げるか。」

と将軍は楽しそうに威圧感を高めた。

「ちょっと将軍!?これ以上は事故の可能性が高くなるにゃ。」

とユイナも苦笑いの後に、真紅の目を輝かせて、腰を低く落とした構えに移行していった。


 そしてツバを飲み込む音が聞こえる程に緊張感が高まっていく中、静寂を切り裂くように今度はユイナが先に突貫した。

 間合いに入る寸前、フェイントを入れて横に飛んだユイナが回り込むように突っ込むと、そのあまりの速さに、周りで見ている者の中にはユイナを見失う者もいた。そのスピードに乗ったまま、ユイナが将軍の周りを舞うようにヒット・アンド・アウェイを繰り返して斬撃を行うと、将軍は亀のように防御に徹するのだった。

 しかし、防御に徹した将軍からは、ただ耐えているのではなく、見るものを威圧するような闘気が膨れ上がっていくのが感じ取れた。そして、10数回目のユイナの攻撃の剣筋にわざと踏み込んで、短剣の根本の部分を鎧の肩当てにくらうように身をさらしながら大剣を振り上げ、短剣の衝撃に耐えながら大剣を振り下ろした。

 これを転がるようにギリギリで躱すユイナ。その際、刃引きされているにも関わらず、ユイナの真紅の髪が数本切り飛ばされていた。その後転がるユイナを追撃して将軍が蹴りを出すが、ユイナは跳ね起きるように距離を取って、また高速の突撃を開始するのだった。


 ここからは、手数とスピードで圧倒するユイナと、削られながらもあえてダメージの少ない位置に身を晒してユイナの動きを緩め、一撃必殺の攻撃を当てようとする将軍の戦闘が、幾度となく繰り広げられた。しかし、その過激な戦いの中で、2人は楽しそうに笑っているのだった。


 何十回も繰り返し、将軍の鎧は頭と急所の部分以外はボロボロになっていたが、ユイナの動きにもキレがなくなってきていた。

 そして遂に将軍の蹴りを躱そうとして、後ろに飛んだユイナを、将軍のつま先がかすり、ユイナは錐揉みするように吹き飛んだのだった。


 将軍が吹き飛んだユイナを追いかけようとし、周りに並んだ騎士の構える盾にぶつかって止まったユイナが、即座に立ち上がろうとすると、指導官が

「それまで!」

と間に入って戦いを止めた。

「「えっ?」」

と言う2人に対し、

「それ以上は、大怪我の可能性があるので止めてください。お願いします。」

と指導官が頼み込み、模擬戦はようやく終了したのだった。


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