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王都への馬車旅3

 次の日の朝、護衛の人達と挨拶を交わした後で馬車に乗り込むと、既にアヴィ一家とポルゴが乗っていた。

「昨日は私たちにまで振る舞って頂き、ありがとうございました。」

アヴィのお父さんが改めて感謝を伝えてきたので、

「いえいえそんなそんな、ついでなので。礼なら美味しい料理を作ってくれたポルゴさんに。」

と挨拶を交わしていると、アヴィがライルの袖を引っ張って、

「ねぇねぇ、お兄さんたちに色んな気配が寄ってきてるように感じるんだけど、気のせい?」

と尋ねてきた。

(((......ん?)))

ライル達が何を言われたかを認識した後、

「「「...え?」」」

びっくりして絶句していると、

「こら、アヴィ!またおかしな事言って!...すいません、気を悪くしないで下さい。実はこの子時々変なこと言うので、王都の教会で司祭様に見て貰おうと思って、王都に向かっているんです。」

とアヴィのお母さんが謝って、弁明してきた。

「だって...昨日は偶然かと思ったけど、今日もいるから...」

アヴィが信じてもらえず悲しそうにそう言って、お母さんに怒られだすと、シズクがライルにだけ聞こえる声で、

(ミリ達を使って確認してみろ)

と言ってきた。


 そこでライルはユイナとフラウに素早く目配せすると、精霊のことを言っているのか確かめるために、

(ミリ、ミル、ミレ、一旦現界を解除して、分かり易い場所に移動してもらえる?)

とお願いした。

(((了解~)))

ミリ達はライルとの契約を一旦解除すると、精神体となってライルの革鎧の隙間から出てきた。そして、ミリ,ミル,ミレがそれぞれ、ライル,ユイナ,フラウの頭の上に乗る形を取った。

 準備が整うと、ライルが

「アヴィちゃん、気配どこに感じる?」

と聞くと、アヴィは泣きそうな顔のまま、ライル,ユイナ,フラウの頭の上を指差した。

そこで、ライルが

「ミル」

と言うと、ミルがユイナの頭の上から、アヴィの頭の上に移動した。アヴィがそれを目で追うような感じで、自分の頭の上に来たら「ひゃっ!」と言って首をすくめたことから、精霊の気配を感じているのは確実だった。


「アヴィちゃんのお母さん、アヴィちゃんは嘘を言っている訳ではなく、本当に普通の人には見えないものが見えてるようです。」

ライルが言うと、アヴィちゃんのお父さんとお母さんは「えっ...」と言って信じたいけど信じられないような困惑の表情を浮かべていた。

「うーん。見えないと信じられないですよね...…良いのかな?」

「どちらにしても王都の教会で聞いたら、そのうち情報が回って知ることになるにゃ。」

「そうですね。下手に時間がかかって騒ぎが大きくなるよりも、今のうちに分かった方が皆にとって良いと思います。」

「そうだよね…よし、じゃあ、お父さんお母さんにも見えるようにしたいと思います。……あの、今では非常に珍しいことなので、混乱を避けるため、他言無用でお願いします。ポルゴさんは見ます?見ても問題ないと思いますけど、しゃべったりすると何かに巻き込まれるかもしれないですよ?」

「うん、見るも。あっしは色んな経験が全て料理のためになると思ってるも。それにあっしの口は堅いも!」

それを聞いてその場の全員が(食材とかで直ぐに釣られそうだけど……)と思い、微妙な空気となったが、

ライルは(……まぁ、滅多なことはないだろうし)と思い直し、

「では、いきますね。僕はライル、水の精霊ミリ,ミル,ミレ、力を貸して。」

と言うと、ライルとフラウとアヴィの頭の上に、3姉妹がちょこんと現れたのだった。


「「えっ!」」

上半身が美しい女性で下半身が龍の3姉妹の姿を見て、絶句するアヴィのお父さんとお母さん。さらに、

「やっほー。」「ふむふむ。」「うけるっ!」

と3姉妹がしゃべる様子を見て、完全にフリーズしていた。

 アヴィは、「ひゃっ!」

と首をすくめた後、恐る恐る手を頭の上に持っていき、ミルを捕まえ、顔の前に持ってくると

「ふはは、くすぐったいぞ。」

と言うミルをちょんちょんと触りつつ、目をキラキラさせて見ていた。

 ポルゴは興味津々で、ミリとミレに触れようとしたが、かわされ続け、完全に遊ばれていた。


 しばらくして、フリーズ状態から回復したアヴィのお父さんが、

「これは一体…?」

と聞いてきたので、

「この子達はアヴィちゃんが何となく感じていた、水の精霊です。今は小さくなってもらってますが、水魔法の能力は凄いです。」

とライルが3姉妹を紹介すると、うずうずしていたシズクがライルの影から飛び出してきた。そして、

「ふっふっふっ、われはシズクと言って凄く「今は何の能力もない泉の妖精だにゃ」...くおらっ!」

と過度な自己紹介をしようとしたシズクだったが、ユイナに被せるように端的に説明されて、阻止されたのだった。


「まぁまぁ、本体じゃない今の状態では力がないのはホントだし。でアヴィちゃんはどんな感じなんですか?」

フォローなのか微妙な言葉のあと、アヴィちゃんのことを確認するライルの問いを受け、

「ぐぬぬ……まぁ良い。アヴィよ、お主には才能がある。もしお主が成人した時に、ライルのように精霊と触れ合いたいと願うならば、我がその才能を開花させよう。」

とシズクはアヴィに語り掛けていた。

「ホントに!?」

「あぁ。もちろん両親や周りを困らせずに、素直で良い子に育ってるのが条件だがな。それまでのことはライル達の話を聞いて両親と相談して決めると良い。」


シズクから話をふられたライルは、しばし考えた後、

「そうだね~…。まだ小さいので、お父さんお母さんと暮らして、困ったことがあったり、詳しく知りたくなったら…えっと、僕は冒険者で居ないことが多いから、カイルとミチルという、僕の両親を頼るといいかな?

 今は王都の北にある魔術士団の拠点にいるんだけど、僕達が今から会いにいくので、アヴィちゃんのことは伝えておくよ。あ、その前に王都でシン教授…じゃなくて、シン宮廷魔導士にも伝えておくよ。」

とアヴィちゃんに伝えていた。

その言葉に大ごとの雰囲気を感じたアヴィの両親はかなり焦った様子で、

「うちの子がそんな大それたことは...それにあなた達は一体?」

と問いかけてきた。

「あ、シン宮廷魔導士は信頼できる人だし、国の方も多分援助はしても、困るような事はしないと思います。

 あと、僕達はCランクパーティーの『紅月こうげつまい』と言います。ちょっと縁があって、宮廷魔導士や魔術師団などに知り合いができたんです。」

「え、それって、この前魔族とのことで話題になった、あの『紅月の舞』!?ホントに!?えー!握手して下さい!!

 だからあんなに強いんだ!えっそれに精霊も関係してるってことですか!?」

冒険者の話が大好きなアヴィは、物語の英雄が自分に関わってきたような気持ちで、テンションがMAXになってはしゃいでいた。


 しばらくして、会話ができるくらいに落ち着いたアヴィは、

「あの、少しでも多く知りたいので、ライルさんのお父さんお母さんにも会ってみたいです。一緒にいったらダメ?」

と聞いてきた。

「駄目じゃないけど、僕達と両親はそのまま北の山の噴火口まで行く予定だから、アヴィちゃん達は直ぐに別れて折り返すことになるよ。それでも良い?

 …えっと、王城には魔術師団との連絡用の魔道具があるだろうから、まずはシン宮廷魔導士に相談してみよっか。アヴィさんのご両親もそれで良いですか?」

「「はい…。」」

アヴィの両親は話が大き過ぎて、理解が追いついてない様子であった。


「しかし、アヴィちゃんと偶然一緒の乗合馬車になって良かったにゃ。奇跡的にゃ。」

ユイナがこの出会いに改めて驚きを感じていると、アヴィのお父さんが、

「そうですね。私達もデントナの街で村長の用事が終わるのを待っていたのですが、前日になって急遽、村長が用事が長引きそうだから先に行ってくれと乗合馬車を手配してくれたので…この偶然を神に感謝したいですね。」

と同意していた。

 ユイナ達は笑顔のままその言葉に(……魔術師団か誰かが一緒になるように暗躍してる気がするにゃ…。)と少し意図的なものを感じたが、それにより最小限の影響範囲で上手く確認できているので、結果的に良かったのかなと感じていた。


「ところで、北の山に行くのかも?それなら珍しい食材があったら取ってきて欲しいも。」

それまで話に加わらず様子を見ていたポルゴが、北の山と聞いて食い付いてきた。

「いいけど、帰りがいつになるかも分からないし、そんなに量も運べないにゃ。帰る間に腐るかもしれないし。そもそもポルゴがどこにいるかも分からないにゃ。」

「そっか、うーん…それならギルドに珍しい食材買い取りの依頼をかけとくも。それなら連絡はつくし、待ってる間、他の冒険者の食材も手に入るも。」

「なるほど、そういうことなら分かりました。でも期待しないで待っていてくださいね。」

「また美味しいの食べたいから気にかけておくけど、山登りにあまり余分な荷物は持てないし、火山の熱で魔物の肉は腐りそうだにゃ〜。」

フラウとユイナが依頼を了承しつつ、期待はあまりできそうにないことを伝えていた。

「そう言えば聞いた話では、闇の魔法の魔道具で、違う空間に時間の進行なく収納できる便利な袋があるらしいも。伝説級らしいけど。知らないかも?」

「それは知らないですね。…闇の魔法も違空間も僕の中では印象が悪いのですが……問題が生じないのであれば便利そうですね。気にかけておきます。

 ところで北の山の珍しい食材って何があるのですか?」

 こうして、何となく今後の方針を決めた後は、料理の話や、精霊の話などで盛り上がって、乗合馬車に揺られながら王都に向かうのだった。


お読み頂きありがとうございます。

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