王都への馬車旅1
翌朝、ライル達がセシルさんとマルクくん、マーサちゃんに
「じゃあしばらく行ってきます。」
と声をかけると、
「気をつけて行ってくるんだよ。」
「絶対また来てくれよな!」
「あの、応援してます!無事に帰ってくるの待ってます!」
とドアの外まで出て、送り出してくれたので、マルクくんとマーサちゃんと拳と拳をトンッと打ち合わせたり、軽く抱きしめたりしてから、
「「「行ってきまーす!(行ってくるにゃー!)」」」
と、『白い狐亭』を出発した。
そうしてライル達は、街の門の近くにある乗合馬車の待合スペースに着くと、係の者に予約した名前を告げて料金を払った。待合スペースには、既に3台の馬車が御者に引かれて停まっており、何組かの客が乗り込んでいるようだった。
門番をしていた衛兵のセトさんと挨拶を交わした後、ライル達が乗合馬車に寄っていくと、幌を開けた1つの馬車から子供の声で、
「お姉さんたち、冒険者?うわぁ~!こっち来て~!」
と呼びかけられた。その馬車を見てみると、すみませんと苦笑しながら頭を下げている若い夫婦と、目をキラキラさせてこちらを見ている5,6歳くらいの女の子がいた。
ここで良いよね?と3人で頷き合ってから馬車に乗り込むと、女の子がいきなりこちらに飛びついてこようとした。しかし、
「こら、だめ!」
と、母親に服を引っ張られ、顔からベチンッと着地する形で止められていた。
「むぅ~~~。」
それでもめげずにこちらに近づこうとジタバタと動いていたので、
「あ、武器とか触ろうとしないなら大丈夫ですよ~。」
とフラウが言うと、
「え、いいんですか?すいません、ありがとうございます。この子、冒険者の活躍するお話が大好きでして。」
「迷惑になったらすぐに言って下さい。回収しますので。ほらアヴィ、挨拶をして礼儀正しくね。そうしないと嫌われちゃうよ。」
と夫婦が答えて、女の子を立たせて送り出した。女の子はニコッと笑うと、
「わたしは、アヴィっていいます。よろしくおねがいします。ねっ、ここ座ってもいい?冒険のお話聞かせて!」
と、ユイナとフラウの間に入り込んで、幸せそうに話をせがんでいた。
「私はユイナっていうにゃ。よろしくにゃ。じゃあ何の話をしようかにゃ~。」
と話ながら、それぞれ自己紹介もしていった。それによるとアヴィの家族も王都グランまで行く予定とのことだった。
そうして、もうそろそろ出発かな~と待っていると、馬車が動き出した瞬間、
「うわ~その馬車待ってくれもー!」
とライル達の乗る馬車に1人駆け込んできた。そして、
「とぉ!どあ~~!!」
と転がるようにというか、飛び乗ろうとしてジャンプした時に馬車の縁に足を引っ掛けて、本当に勢いよく転がって入ってきたその人物を、出口に一番近かったフラウが、回転してきた相手の顔の部分を盾でガシッと押さえて止めていた。ぶしゅ~とずり落ちた人物に皆が注目していると、しばらくして立ち直ったその人が、
「これは、お騒がせしたも。あっしはポルゴっていうて、食材を求めて旅してる、世界一……になる予定の料理人なんだも。よろしくお願いするも。」
と言って、丸っとした体を正して頭を下げた。
その後出発した馬車の中で話を聞くと、ポルゴはタヌキ獣人で、美味しい食材と美味しい料理を求めて修行の旅をしている最中で、今はこの国の王都を目指しているとのことだった。
「さっきのフラウお姉さんすごかったぁ~。」
とアヴィが興奮する中、ユイナ達に加えポルゴも旅や冒険の話をしていると、楽しく時間は過ぎていった。そして、天候も良く順調に馬車が進んだこともあって、昼過ぎに隣街に辿り着くまでは、本当にあっという間に感じられた。
今日はもう一つ先の街まで行くので、この街で降りる人と乗る人の入れ換えと、お手洗い、馬の給水のために休憩時間が与えられると、ポルゴが馬車の外で何か料理を作り始めていた。
「料理?お昼も食べてるのかにゃ?」
「当然だも。あっしはお昼はもちろん、少しでも時間やお金に余裕があれば食べるようにしてるんだも。これも修行の一貫なんだも。ところで、何か珍しい食材持ってないかも?」
「え〜と確か、この前狩ったアリゲーターの肉が残ってるにゃ。」
「アリゲーター!是非売ってくれも!」
それを聞いたユイナが、ライルとフラウと相談して、出来上がった料理を分けて貰えるなら譲ることにした。
「ありがたいも!あまり手持ちがないから、無料で珍しい食材を使わせて貰えるその申し出は助かるも!」
アリゲーターの肉を掲げながら、小躍りしながらお礼を言うポルゴ。
「こっちも、アリゲーターの肉は、鶏肉系の硬い感じで、高く買い取っても貰えにゃかったから、美味しくしてもらえるなら助かるにゃ。」
「じゃあ是非あっしの料理を食べて、感想を聞かせて欲しいも。でも、そういう感じだとすると…」
そう言ってポルゴは、少し削った肉を炙って味見すると、
「今は漬け込みとかの下処理をしといて、次の街に着いてからじっくりと調理したんだけど、それでも良いかも?」
「僕たちは元々お昼食べる習慣がないから、全然構わないですよ。」
「じゃあ今は軽く他のを食べて、晩に備えるも〜!」
そうして休憩時間の終わる頃に、ライル達と一緒にポルゴが下処理をした肉を持って乗合馬車に乗り込むと、アヴィが興味津々でのぞき込んできた。
「それはなーに?」
「これはライルさん達が狩ったアリゲーターの肉だも。譲ってもらったから、次の街に着いた時に、料理して一緒に食べるんだも。」
「えー、良いな〜!アヴィも食べたい!」
「こら、アヴィ!無茶言ってはいけません!すいません、うちの子が。」
「いえいえ、じゃあ私の分をアヴィちゃんにあげましょうか。私はライルかユイナにひと口貰えば充分なので。」
「いえ、そんな訳にはいきません!ほらアヴィもフラウさん達を困らせないの。」
「…は〜い。」
その時、
「いいな!私達も食べたい!」
「この先の川沿いでワンチャンないか?」
と言う小さな声が、ライルの付近から聞こえたような気がした。アヴィの家族とポルゴが空耳かなと不思議そうな顔をする中、ライル、ユイナ、フラウの3人はイヤな予感から、冷や汗が止まらないのだった。
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