北の山への出発準備
夕食会が終わった後、ライルは部屋で嵐にさらされた気分だった。
原因は、ミリ、ミル、ミレの水神竜の娘たちであった。3姉妹は小さくなってライル達の鎧の隙間などに隠れ、川からずーっと付いてきていたのだが、いつの間に飲んだのか、お酒でご機嫌な状態で、
「何かあった時に竜の下半身に人間の幻影をまとってごまかすために、下半身を見せてもらってくる!」
と、ユイナとフラウの部屋に、シズクも巻き込んで突撃して行った。
その後、思わず聞き耳を立ててるライルに、隣の部屋から、
「しっぽってこうやって生えてるのか、きゃー!すごい!」
「あ、にゃっ、しっぽは繊細だから、そんなにしちゃ、あゃ、だめにゃ〜」
とか、
「足の付け根ってこうなってるのか〜ふむふむ。」
「ふぇぇ〜、あん、そこ開いちゃ、だめー」
とか聞こえてきたのだった。
更にしばらくしてから、3姉妹が勢いよく戻ってきて、上半身裸で、下半身に水の魔法で人間の下半身の幻影をまとって、
「ほら、すごいでしょ!」
「私の方が完璧だな♪」
「この躍動感を見よ!」
と見せつけて来たのだった。ライルは、
「うわ※△て✕?□◇!、と、とりあえず幻影は服着た状態にしてね!おやすみ!」
と、変な声をあげたあと、ベッドに逃げて目を閉じたのだが、
「そう言えば男の体ってどうなってるんだろ?」
「ふふ、興味あるね」
と言う声が聞こえ(こいつらに酒飲ますとヤバイ!)と思いながら、観念しつつ、頭から布団をかぶったのだった。
一夜明け(3姉妹が3人にやり過ぎたことを謝ってきたので、勝手にお酒を飲まないことを約束して許した)、3姉妹も付いてきていることから、ライル達は早速ヴァルレオスに会いに行くことにした。経路としては、東に向かって王都まで行き、そこから北へ向かって、魔術師団の拠点を経由してライルの両親のカイルとミチルを誘い、ヴァルレオスの居る北の山に向かうことにした。
それほど急ぐ旅ではないので、可能なら王都ではシン宮廷魔導士に、魔術師団の拠点ではフェントール王子やキラ、ガルク団長に(余裕があればシメノ侯爵やフラウの兄のフルズにも)面会しようという話になった。
王都経由で行くので、ついでに何か請け負える依頼がないか、冒険者ギルドの受付嬢のアスラに相談に行くと、
「そうですね...王都に行くのであれば、定期便の乗合馬車の警護というのがあるのですが、専属の者がいますし、追加募集の報酬は安いので、Cランクの方が行うような仕事でもないですね。というか、お客として馬車に乗って行かれないのですか?早いですし、楽ですよ。」
と教えてくれた。
それを聞いて顔を見合わせたライル達が、
「それは...馴染みが無さ過ぎて、考えてもいなかったです。」
「歩いて行くことしか考えていなかったにゃ。」
と答えるのを聞いて、アスラは苦笑しながら、
「あとは、乗合馬車に乗らないような位の高い人や、商品を運ぶ商人などの同行者、あるいは王都まで運ぶ荷物などを募って、護衛や輸送をするというのがあるのですが、『紅月の舞』の皆さんが募集をかけるのは止めた方が良いかもしれないですね。」
と答えた。
「それはなぜ?」
「まず、今は注目されている状態ですので、つながりを持とうとしたり、何か画策しようとする人を呼び寄せてしまって、面倒な状態になってしまう可能性があります。
あとは、騎士爵位をお持ちですので、普通の商人などが護衛として使うのはやりにくいと思います。」
「そう言えば、そうだったにゃ。」
「私たちの意識が、私たちの状態に追いついてないですね...」
アスラは、そんな3人の様子を温かい笑顔で見ながら、
「なので、移動で何かするよりも、北の山に行かれるのなら、そこで珍しい魔物の素材や、鉱石を手に入れる方に注力された方が良いと思います。」
と提案して、魔物や鉱石の種類やポイントなどを教えてくれた。
「そうですね。ありがとうございます。」
「さすが、アスラにゃ〜。あ、折角だから、乗合馬車利用してみようにゃ。」
「アスラさん、助かりました。馬車、良いですね。」
そうして、有意義な情報を入手した後
「では、アスラさん、またお土産買ってきますね。」
「ありがとにゃ。またにゃ〜。」
「ありがとうございました〜。」
「はい、行ってらっしゃーい!」
とアスラと手を振り合って、ギルドを後にしたのだった。
ギルドを出た後、乗合馬車の案内所に行って、出発予定を確認すると、都合よく明日出発の便で3人乗ることができるとのことだったので、明日の便の予約を行った。
その後ライル達は、旅に必要な食料やポーション、買えていなかったテントなどの準備のため、セトさんにお勧めのお店を聞いたりしながら、商品を見て回った。
食料は今までの安さ重視と違って、少々高くても美味しそうなのを選ぶ余裕があるので、ユイナはしっぽをブンブン振って、
「にゃ〜!これも美味しそうにゃ!」
とテンションMAXで選んでいき、ライルとフラウもそんなユイナを微笑ましく見ながら、楽しく買っていった。
テントの購入も、折角なんで安さより快適性を重視し、軽量の良い物を1人1個ずつ買うことにして、店員にお勧めを聞いた。すると、
「こちらの最新型のものが、軽くて、丈夫で、それぞれを繋げることもできるので、使い勝手が良いと評判ですね。」
と紹介してくれた。
「あ、軽い。繋げてみてもいいですか?」
「どうぞどうぞ。」
「あ、これなら2つ繋げたら、3人分のスペース確保できるにゃ。」
「ふぇぇ〜、すごい。便利ですね。これなら2つで良いんじゃないですか?」
「うん。どうせ、1人は見張りに立つし、必要に応じて3人にできるから、それが良いにゃ。ライルどう思うにゃ?」
「(ヤバイ、気になって寝れなくなる…)あ、でも1人1個ずつだとより広く使えるよ。」
「うーん。でもやっぱり荷物は少ない方が良いし、2つで充分かにゃ〜。」
「そうですね。私も2つが良いかと。」
「うん、これ2つで決まりにゃ!」
と、ライルの安眠に少々不安が出たりもしたが、明日の出発に備えて、3人で楽しくしっかりと準備を整えたのだった。
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