戦いを終えて2
後日王城では、グントール国王とカッセル宰相が魔族討伐の関係者を集めて、今後のことや褒賞等についての話し合いが行われた。
まず始めにグントール国王から今回の活躍に対するねぎらいの言葉がかけられ、魔族討伐の立役者である、フェントール王子、ライル、ユイナ、フラウ、シン教授、ガルクに対して、新設した討魔勲章が与えられることが発表された。
勲章についてはカッセル宰相から説明があり、勲章の授与に付随して報奨金が与えられること、報奨金の額は勲章の報奨金として法に定められている最高額である30白金貨(=3000金貨≒3000万円)が与えられること、勲章は天使の様な女性が槍を掲げている姿をモチーフとして製作中であること、勲章ができ次第授与式が行われることが伝えられた。
そして、フェントール王子は正式に魔術師団の総帥に任命され、団長ガルクの上に立つことになった。
また、シメノ伯爵はシメノ侯爵に陞爵されることになった。
さらにライル、ユイナ、フラウに対しては、
「そなた達3人には、各々が希望する褒美を与えたいと思う。フェントールだけでなく、国家の危機も救った英雄であるのに、世間に公表する内容が抑えたものになってしまって申し訳ない気持ちもある。勲章の報奨金も高くないしな。遠慮せず希望を述べるが良い。」
と国王が仰った。
ライルは、
「僕は先日して頂いた両親の復活で十分です。」
と恐縮しながら答えたが、
「いや、その対応は当然のことであって、逆にこちらが慰謝料を払わねばならないような話である。それだけで終わらせては余の気が済まないので、何でも良いので希望を言ってくれないか。」
と国王に再度請われた。
「それならば、攻撃用の魔道具を頂けないでしょうか。」
「お主がか?強大な魔法を使っていたではないか。」
「あれは精霊の力でして。精霊は普段は、あまり言う事聞いてくれないので。魔法は暴走することが多くて、安定しないのです。」
「なんと、そんな事があるのか。ならばガルクよ、良いものはないか?」
「そうですね。魔術師団の最新式のもので良ければお渡しできますが...暴走するというのであれば、クリスタルを使った運用になりますね。ユイナさんが使っている武器もクリスタルを用いるので、それであればクリスタルが使いやすくなる何かがあれば良いのですが...」
「陛下、それでしたら、クリスタルに急速充電ができる魔道具が宝物庫にあったと思います。後で確認してみましょう。」
「であるか。ではライルよ、まずは魔術師団の魔道具と程度の良いクリスタルを与えよう。そして急速充電の魔道具を後でカッセルと宝物庫で確認してみてくれ。確認した結果、他の物が良ければそれでも良いぞ。」
「ありがとうございます。」
「では、次にユイナは何が良い?」
「私は特に困っていることはないのですが...」
「そういえばユイナよ、お主は『紅』を名乗っていると聞いたが。」
と言ってニヤリと笑う国王。
「にゃー!陛下、お止めください。黒歴史...!」
「ははっ。自称なら確かにそうかもしれんが...称号として与えても良いぞ。」
それを聞いてケモ耳がピンと立って、尻尾がソワソワと動くユイナ。
「えっ...国公認になるってこと?それなら...恥ずかしくない?ライルとフラウも一緒に...」
「ないない。」
「ムリムリ。」
「そんなこと言わずに、助けると思って一緒に〜。お願いするにゃ〜。」
「そもそもユイナみたいに特長ないから適したのないし。」
「精霊使いは?」
「公表しないから駄目だって。」
「じゃあ魔力多いから…魔力の泉とかどうにゃ?」
「え〜。」
「でも暴走するから…暴魔の泉とか魔狂乱とか…」
「マッテマッテ。」
激しい展開に焦るライル。
「フラウは…金髪で守り硬いから、金剛とかどうにゃ?」
「ふぇぇ。名前負けしてますよ。」
こっちに矛先がきたと冷や汗を流すフラウ。
「丸くなるから円環とか、金環とか、月環とか。でもドジだから...」
「やめて~。」
「はははっ。授与式までに決めてくれれば良いぞ。とりあえずユイナには『紅』の称号を与えるとして、他に欲しいものはないか?」
「武器はシン教授から良いものを頂いていますし...」
「それなら防具はどうだ?今使っているのはかなり傷んでいるようであるし。今の革鎧と同じような感じが良いかな?」
「はい。そうして頂けるとありがたいです。」
「それでしたら陛下、レッドドラゴンの鱗を素材とした女性用の部分鎧があったと思います。女性用で今のユイナさんの様に少し露出度が高い装備なので、騎士や将軍で使う者が居なかったのですが、軽量で性能は非常に優れたものでした。もし良ければ、ユイナさんに合うかどうかを後で確認してみましょう。」
「ならば、ユイナも後で城の宝物庫で見てみると良い。適したのが無ければ素材を選んで発注しても良いしな。」
「ありがとうございます。」
「最後にフラウであるが、フラウは元々シメノ侯爵の騎士見習いであったな。望むのであれば国の騎士爵位を与えるがどうだ?」
「...はい。それはありがたいお話なのですが...」
フラウは(冒険者としてライルやユイナと一緒に行動したいけど、故郷の皆に安定した暮らしをさせてあげるためには騎士爵位を得た方が良いし...)と思い悩んでいた。するとその様子を見ていたシメノ侯爵が、
「フラウよ。君のお兄さんのフルズは魔術師団に戻らずに、私の所で騎士をすることになったのだが、そのフルズから『故郷の事は兄に任せて、フラウは思うままにやれば良い』との伝言を受けている。迷っているようなら声をかけてくれと。さすが妹のことは良く分かっているようだな。私もフラウがやりたいようにすれば良いと思うよ。」
と声をかけてくれた。
「兄がその様なことを...シメノ侯爵様、ありがとうございます。吹っ切れました。私はユイナさんとライルさんと冒険者をやりたいと思います。ユイナさん、ライルさん、私も一緒にやらせて頂いても良いでしょうか?」
「もちろんにゃ。」
「大歓迎です。」
「皆さん、ありがとうございます。陛下、折角のお話ですが、申し訳ございません。私は冒険者になろうと思います。」
「良い。臣下にならないのは残念であるがな。そうすると褒美は何が良いかな?」
「その前に陛下、よろしいですか?」
「うん?なんじゃカッセル?」
「はい、今回のことで、3人には色々と近づいて来る者が現れると思います。そうした場合に平民であると、立場上逃れられない状況に追い込まれたり、罠にはめられたりすることもあると思います。秘密保持の観点からも3人には名目上の騎士爵位、シン教授、ガルクには通常の騎士爵位を授けてはいかがでしょうか。」
「なるほど。その通りであるな。優秀な人材に国と繋がっていてもらう意味でも有意義である。ならば3人の爵位であるが、行動を縛る義務はなく、年給は通常の騎士と同等にしようか。」
「陛下、ありがたいお話ですが、義務もなくそれでは貰い過ぎではないでしょうか?」
「良い。騎士爵位の年給は大したことないのでな。もし気になるようであれば、何かあった時に駆けつける気持ちでいてくれれば良い。」
「分かりました。その時にはすぐに馳せ参じて力をお貸し致します。」
「うむ。では戻って、フラウの報酬であるが、装備はどうだ?」
「はい、冒険者としてやっていくので、ありがたいです。」
「何か希望はあるかの?」
「遊撃のユイナさんと魔術師のライルさんとのパーティーなので、今までと同じ騎士のような役割だと思うのですが…徒歩での移動を考えると軽い方が良いでしょうか。」
「陛下、私からも一言よろしいでしょうか?」
「うむ。シン教授、構わんぞ。」
「では失礼して。フラウさんも、ユイナさんやライルが持っている様なクリスタルが使える剣や盾が良ければ、私が作りましょうか?」
「それはありがたいです。」
「ライルの盾も魔術師団の魔道具を取り付けた物に改良しようか。」
「はい!手が塞がりそうだったので助かります。」
「ふむ。ではフラウもカッセルに付いて行って鎧を見繕うと良い。」
「では、おおよその褒美は決まったな。後は…ライルの両親であるが、精霊使いは国として大事にしていくので、話し合って必要な援助を執り行うことを、余の名において誓おう。」
「ありがとうございます。」
「他には、何かあるか、カッセル。」
「そうですね…冒険者の3人のランクは…全員Eランクですか。今回の活躍をギルドに掛け合ってみます。公表内容が抑えてありますが、Cランクぐらいにはできるかと。」
「ふむ。良いぞ。ではカッセル、宝物庫に3人を連れて行き、ギルドの件も合わせて良きに計らえ。パーティー名は…まだか。では、称号名を伝える時にパーティー名も伝えてくれ。」
と言ってグントール国王は、思い出して冷や汗をかくライル達に笑いかけた。
「あと、シン教授、折り入って話があるのだが…」
と、シン教授は、ゲンダラールが亡くなったことで空いた宮廷魔術師のポストを、グントール国王から打診されていた。シン教授は「私は政治的なことは良く判りませんので。」と固辞していたが、おそらく逃げ切れないと思うライル達だった。
お読み頂きありがとうございます。
ユイナにだけ称号を与えるつもりが、ユイナが暴走して周りを巻き込んだので、悩んで時間がかかってしまいました。すいません。しかも決まってない(笑)
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次回も後日譚チックになりそうです。
今後もよろしくお願いします。




