魂の捜索
[こちらフラウ、王子が無事に身体に戻りました。]
[やったにゃ!]
[やりましたね!]
[[[イェーイ!!]]]
[でかした!]
「やるではないか。」
[素晴らしい!カイルとミチルの水晶玉はどうだ?]
[そちらは今から探しますので、お待ちください。]
フラウが皆に念話で報告した後、王子の方を見ると、まだ抱きついたままだった。王子からは
『キラのおかげで正気を保っていられたんだ…そして、また人を信じることができるようになったんだ…』といったことが漏れ聞こえていた。キラはそんな王子を慈愛に満ちた目で眺め、頭を撫でていた。
「えー、こほん。感動の場面で申し訳ないですが、そろそろ行きましょうか。」
フラウが促して改めて部屋を見渡すと、部屋の奥にさらに扉が見えた。
王子が少し赤面しながら
「あれが、ゲンダラールが魔術錠で管理している部屋です。」
と奥の扉を指差した。
キラは(魔術錠か…)と呟きながら思案していたが、ハッと顔を上げて、
「王子様!その操られていた体には、ゲンダラールの魔力がまだ多少残っています。それを使って開錠を試してみてはいかがでしょうか。」
と提案した。そして、念話で相談すると、シズク,水神流ミラカナチ,イフリートのヴァルレオスといった面々が、『難しいが可能性はある』と言ったので、試すことにした。
まずその場で一番魔力の扱いに長けているキラが、王子の体に残る魔力を、王子の手の平に集めるように操作した。そして、トラップが発動しても王子に被害が出ないように、フラウが王子と扉の間に身体を入れて、更にフラウの外側にカマチが『エアーシールド』の魔法をかけた状態で、王子にドアノブを回してもらった。
「開いたっ!!」
開かずの扉が開き、恐る恐る中を見ると、床に大きな魔法陣が描かれていた。
「これは転移の魔法陣ですね。魔力の感じから、少し前に使ったところのようです。」
魔法陣を調べたキラが、注意しながら、先行して部屋に入っていった。そして部屋の中が安全であることを確かめると、戻ってきて、
「中に入っても大丈夫です。魔法陣にだけは触れないように注意して下さい。」
と伝えながら、まだ動きがぎこちない王子を支えて部屋に入った。
皆で部屋の中に入って見渡すと、壁際の一角に、置いてあったものを運び出したかの様な、何もないぽっかりと空いたスペースがあった。
「ここにあった物を運びだしたのでしょうか?転移魔法陣でかな?かなり大きなものをたった今運んだような感じですね。ここの壁、少し冷たいですよ。」
フラウが部屋の様子を調べながら、念話でも伝えていると、
[おそらくそのスペースには、カイルとミチルの身体が置かれていたのであろう。そして、その転移魔法陣は拠点の地下とつながっていると思われる。ワシが囚われていた拠点の地下にも転移魔法陣があり、そこからどこかへ行ったゲンダラールが、カイルとミチルの身体を運んで戻ってきたのでな。状況から考えるとほぼ間違いない。]
とイフリートのヴァルレオスが伝えてきた。
そうして部屋の中を探っていると、カマチが
「これが探している水晶玉じゃないか?」
と手に抱えて飛んできた。
キラが受け取って調べると、確かに人間の魂が2つ閉じ込められているのが感じられた。また、2つの魂が支え合っているようにも感じ取れた。
「多分これで間違いないですね。2人で支え合っていたからこそ、今まで消えずにいられたのでしょう。」
とりあえず目的を果たした面々は、部屋の捜索を切り上げ、ユイナ達のところへ戻ることにした。
[恐らくカイルさんとミチルさんと思われる魂が入った水晶玉を見つけました。今からそちらに向かうので、シズクさん、後で確認してください。]
[でかした。待っておるぞ。]
[父さん、母さん……皆さん、ありがとう!」
[これで後はゲンダラールだけであるな。ワシが引導を渡してくれるわ!]
そうした中、王子は久しぶりの自分の体に感動しつつ、キラとフラウの補助を受けながら体を動かして動作を確認し、徐々に感覚を取り戻していっていた。
「筋力はかなり落ちていますが、思ったより普通に動けて良かった…フラウさんに抱っこされて移動とかだとかなり恥ずかしいし。…ゲンダラールが頻繁に動かしていたのでしょうか?あ、ちょっと待って下さい。」
そう言って、王子は自分の身体が寝ていた部屋の物入れを探り、動きやすい服装に変え、護身用の短剣を取り出した。
そして、メイドの1人の拘束を解いて、
「私用の軽めの革鎧を持ってこい」
と命じて装備を整えると(メイドは王子と周りの面々に目を白黒させていたが、状況を把握すると、しっかりと対応してくれた)、リスクを避けるため転移魔法陣は使わずに、ユイナ達のところを目指して移動を開始したのだった。
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